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賃貸のお困りQ&A

賃借・転賃中の物件が抵当権実行で競落。サブリース事業者は引越しを拒める?

今回のご相談

当社は、令和3年3月1日にオーナーから居住用マンション1棟を賃借し、当該マンションを転貸するサブリース事業を行っています。

当社が賃借する前から当該マンションには抵当権が設定されていたのですが、オーナーの資金繰りが悪化したため抵当権が実行され、マンションが競売に出されることになりました。

マンションが競落された場合、当社は、サブリース事業を続けることができるのでしょうか?

回答

サブリース事業者は、競売による買受けから6カ月を経過した後は、買受人にマンションを引き渡さなければなりません。そのため、事業者は、買受人と交渉し、改めて買受人との間で賃貸借契約が締結できない限り、サブリース事業を続けることはできなくなります。

解説

1.賃借権と抵当権の関係

サブリースでは、事業者は、オーナーとの間で賃貸借契約を締結し、オーナーから賃借した物件を第三者に転貸します。サブリース事業者がオーナーとの間で締結する賃貸借契約も、建物賃貸借契約である以上、借地借家法が適用されます(最高裁 平成15年10月21日判決など)。

しかし、オーナーが所有する物件に抵当権が設定されており、その後、抵当権が実行され、競売となった場合、賃借人であるサブリース事業者は、賃借権を買受人に主張することができるのかが問題になります。

この点は、賃貸借契約の締結および物件の引渡しと、抵当権設定登記の前後関係によって優劣が決まります。すなわち、サブリース事業者とオーナーとの賃貸借契約の締結・物件の引渡しが、抵当権設定登記より前であれば、サブリース事業者は、買受人に賃借権を主張することができます。反対に、オーナーとの賃貸借契約・物件の引渡しが、抵当権設定登記より後であれば、サブリース事業者は、買受人に賃借権を主張することができません。その結果、サブリース事業者は、買受人から明渡しを求められれば、これを拒むことはできません。

また、サブリース事業者と転借人(居住者)との転貸借契約は、サブリース事業者とオーナーとの賃貸借契約が有効に存続することを基礎としているので、サブリース事業者が買受人に賃借権を主張することができない場合、転借人(居住者)も、買受人から明渡しを求められれば、これを拒むことができなくなります。

2.建物引渡猶予の制度

ところで、現実的には、賃借人が引渡しを受ける前に物件には抵当権が設定されているのが一般的です。そのため、設定された抵当権により、事実上、賃貸ができないというのでは、建物の利用が著しく阻害されます。また、抵当権に劣後するとはいえ、賃借権に基づく建物の利用は、賃借人の生活や営業の基盤となっているので、直ちに賃借人が物件を明け渡さなければならないとなると、賃借人に及ぼす不利益の程度が余りにも大きくなります。

そこで、民法395条1項は、建物引渡猶予の制度を設けました。これは賃借権が抵当権に劣後する場合でも、競売手続開始前から建物を使用している賃借人は、買受けから6カ月間は、建物の引渡しを猶予されるという制度です。

従って、オーナーとの賃貸借契約・物件の引渡しが抵当権設定登記より後でも、サブリース事業者は、買受から6カ月間は、買受人に対し、物件の引渡しを拒むことができます。

もっとも、建物引渡猶予は「競売手続の開始前から使用または収益する者」に対して適用されますので(民法395条1項1号)、競売手続開始決定を原因とする差押登記後に建物を賃借して占有を開始した賃借人は、建物引渡猶予による保護を受けられません。

また、建物引渡猶予の効果は、賃借人は6カ月間に限って建物の引渡しが猶予させるというものにすぎず、買受人と賃借人が賃貸借契約の関係に立つというわけではありません。

そのため、買受人は、賃貸人にはならず、敷金関係は新所有者である買受人には引き継がれません。

従って、サブリース事業者がオーナーに敷金を預け入れていた場合、買受人に対して敷金の返還を請求することはできません。もちろん、サブリース事業者は、オーナーに対しては、敷金の返還請求をすることができますが、物件が競売にかかっている場合、オーナーには支払能力がないことがほとんどでしょうから、事実上、サブリース事業者は敷金の返還を受けられないことになります。

なお、サブリース事業者が引渡猶予を受けるためには、建物を使用したことの対価を買受人に支払う必要があります。

3.短期賃貸借保護の制度

とことで、賃借人が買受人からの明渡し請求を拒むための制度として、平成15年民法改正(平成16年4月1日施行)前までは、短期(建物の場合は3年間)の賃貸借は、抵当権設定登記に劣後していても、賃貸借の残存期間内は、賃借人は、買受人に賃借権を主張することができるという制度がありました。

この短期賃貸借保護の制度は、平成15年民法改正により廃止されましたが、平成16年3月31日以前に締結、部兼の引渡しがなされ、その後、更新されてきた賃貸借契約には、短期賃貸借保護の制度が適用されます。

従って、サブリース事業者がオーナーとの間で平成16年3月31日以前に賃貸借期間3年以内で賃貸借契約を締結し、物件の引渡しもなされ、その後、更新されてきた場合、オーナーとの賃貸借契約・物件の引渡しが、抵当権設定登記より後であっても、サブリース事業者は、賃貸借の残存期間内は、買受人に対し、物件の明渡しを拒むことができます。

そして、サブリース事業者に短期賃貸借保護の制度が適用される場合、買受人は、賃貸人たる地位をオーナーから引き継ぐので、サブリース事業者は、買受人に対し、敷金の返還を請求することができます。

なお、競売手続開始決定を原因とする差押登記後に期間満了により更新がなされ、その後、物件が競落された場合、賃借人は、短期賃貸借の保護は受けられず、敷金関係も買受人に承継されませんので、注意が必要です。

4.まとめ

本件では、サブリース事業者が賃借する前からマンションには抵当権が設定されていたので、サブリース事業者は、買受人に賃借権を主張することができません。また、サブリース事業者が賃貸借契約を締結したのは、令和3年3月1日ですから、短期賃貸借保護の制度の適用もありません。

そのため、サブリース事業者は、競売による買受けから6カ月を経過した後は、買受人にマンションを引き渡さなければなりません。従って、事業者は、あらためて買受人との間で賃貸借契約が締結できない限り、サブリース事業を続けることはできません。

もっとも、マンション一棟を競落する買受人は、マンションを収益物件として競落することが多いでしょうから、サブリース事業者としては、早急に買受人と連絡をとり、賃貸借契約を継続してもらうよう交渉したり、または、せめて転貸借契約を引き継いでもらうよう粘り強く交渉することが肝要でしょう。

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