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内装工事済みの築25年の木造建物に生じた柱等の腐食が、隠れた瑕疵と判断された事例

今回のケース

平成26年11月、宅建事業者であるYは、築25年の本件建物(アパート・木造スレート葺2階建て)およびその借地権を、前所有者から、代金6,200万円(借地権5,700万円、建物500万円)で購入しました。その後、土地の所有権を取得し、本件建物の内装工事(756万円)を実施。全室内装工事済みとして広告をして、本件土地建物を売り出しました。

平成27年6月、Yは、個人である買主Xとの間で、代金1億2,000万円(土地4,800万円、建物7,200万円)とする売買契約を締結し、同年9月に引き渡しました。

ところが、本件建物の1階貸室に床の沈みや壁のへこみが生じ、柱、筋交い等の腐食が発見されたことから、平成29年6月、XはYに対して「本件建物には雨漏りを引き起こす構造上の瑕疵が存在する」として、1,191万円の損害賠償の請求をしました。

同年9月には、Xが依頼した建築士の調査により、本件建物の外壁(サイディング)の内側に防水シート等の防水工事が施工された形跡がないこと、本件建物の内壁の内側では、木造の柱等の構造体が腐食し、部材の欠落が生じていたことが判明しました。

しかし、Yとの交渉が進まないことから、令和元年Xは、本件建物の隠れた瑕疵による損害賠償として、修繕工事費用931万円余、不具合が生じた貸室入居者の転居費用等78万円余、弁護士費用101万円余など、計1,116万円余を求める本件提訴を提起しました。

これに対してYは、「本件売買は、本件建物に構造上問題がないことを前提としたものではない。本件建物は経年劣化があることを前提に安く評価した上で売買代金を設定している。また、本件建物の外壁には建築基準法施行令49条1項は適用されず、防水紙を貼るなどの措置は不要であるから、Xが主張する不具合等は、本件建物の瑕疵には当たらない」などと主張しました。

解説

裁判所は次のように判示し、Xの請求を一部認容しました。

(1)隠れた瑕疵があったかについて

建築基準法施行令49条1項は、「木造の外壁のうち、鉄鋼モルタル塗りその他軸組が腐りやすい構造である部分の下地には、防水紙その他これに類するものを使用しなければならない」と定めている。また、平成元年当時、木造の外壁に使用するサイディング材の製造販売事業者の標準的な施工法として、防火サイディング材を使用する場合には、下地材として防水紙を貼ることが標準的工法であったと推認される。

しかし、本件建物には、防水紙から貼られた形跡はなく、同等の防水工事がされたこともうかがわれないため、新築時点から通常有すべき品質・性能を有していなかったものというほかない。

そのため、防水工事がされていないことにより、本件建物の外壁部分に水が浸入して、外壁内部の湿度が上昇し、木造の構造部分が通常の経年劣化の範囲を超え腐食することは容易に推認でき、本件建物の柱等の構造体の腐食の原因となるべき瑕疵は、本件売買契約時点に存在していた以上、その腐食は発生時期に関係なく、本件売買契約上の瑕疵と認めるのが相当である。

Yは、「本件売買は、本件建物に構造上問題がないことを前提としたものではない」等と主張するが、前記判断を覆すに足りる証拠はない。

(2)Yの損害賠償の範囲について

瑕疵担保責任は無過失責任であることに鑑みると、その賠償の範囲は、買主が負担した代金から売買契約締結当時における瑕疵ある目的物の客観的取引価格を控除した残額に限られるものと解される。

Xは、修繕工事費用、建築士による調査費用および弁護士費用等を損害として主張するが、修繕工事費は、建物の価値が売買契約締結当時より増加する場合や、本件建物の客観的価値を超えて過度な修繕を行う場合があり得ることに照らすと、そのまま認めることはできない。また、建築士の調査費用および弁護士費用は、損害賠償義務の範囲に含まれない。

XがYから購入した本件建物の価格には借地権相当額が含まれているものと推認され、その額はYが本件建物およびその借地権を購入した際の借地権価格5700万円と同額と推認される。よって、本件建物の単体の価格は、Xが購入した本件建物の価格7200万円から借地権価格相当分5700万円を控除した1500万円と認めるのが相当である。

他方、本件建物は瑕疵により無価値であったというほかなく、本件売買契約締結時における瑕疵ある本件建物の客観的取引価格は、Yが支出した内装工事費用の756万円と同額と認めるのが相当である。

以上に照らすと、損害額は、本件建物単体の額1500万円から瑕疵がある状態での本件建物の客観的取引価格756万円を控除した744万円と認めるのが相当である(東京地裁 令和3年8月31日判決)。

総評

本件既存住宅売買の契約内容は、「経年相応の既存住宅として、通常有すべき品質・性能を有している不動産」の取引です。よって、引渡し後に生じた経年劣化による建物の不具合等は、買主の経年による修繕リスクが発現したものなので、瑕疵(契約不適合)に該当しませんが、引渡し前にすでに存していた建物の施工不良等により生じた経年劣化を超える損傷は、既存住宅として通常有すべき品質・性能を有していなかったことにより生じた損傷ですから、売主が担保責任を負うものとなります。

既存住宅の買取再販においては、取引後に建物等に瑕疵が発見されトラブルになるケースがよく見られますが、その多くは、宅建事業者が通常行う、確認済証・検査済証の交付の確認、建物・設備の外観・稼働調査等(場合によってはインスペクション)をしていれば、回避が可能なものであることから、売主事業者においては、まず、当該調査を慎重に行っておく必要があります。

しかし、本件のような、外観調査では把握できない、建物の壁面内部や基礎部分等の隠れた瑕疵が存していた場合、当該調査等によってその瑕疵を把握することは困難ですので、売主事業者においては、そのような隠れた瑕疵が後日発見されるという避けられないリスクがあり得ることを、あらかじめ認識しておく必要があります。

そしてその対応として、

  1. ① 既存住宅売買瑕疵保険を利用する
  2. ② 同保険を利用しない(利用できない)場合には、あらかじめ当該リスクが発生した場合の対応を考慮しておく(当該リスクがあることを前提に物件購入価格を決定する、瑕疵が発生した場合の資金準備をしておく等)

などにより、万一当該リスクが発生した場合に対処できるようにしておく必要があると思われます。

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