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建物価値を超える補修費用が掛かる雨漏りを故意に告知しなかった売主に対する買主の損害賠償請求が認められた事例

今回のケース

売買契約の経緯

  • 買主Xは、投資用の戸建住宅を探していたところ、売主YからZが賃借している本件物件を紹介された。
  • Xは、媒介事業者Aを通じて、Y側媒介事業者Bに雨漏りなどがないか、Yへの確認を依頼した。すると、Bからは「雨漏り、シロアリ、水害、躯体の傾きはないようです。内装はよくできていますが、あくまでもDIYでの修復ですのでご承知おきください」と、Aに回答があった。

令和元年9月、Xは、Yとの間で本件物件の売買契約を締結しました。本件契約の契約書、および本件契約に先立ち行われた重要事項説明書には、いずれも、①契約違反による契約解除に関すること、②本物件は築42年が経過し、建物および付属設備等は耐用年数を過ぎて、屋根、躯体、建物構造部分、水道管、排水管、ガス管、電気配線等について相当の自然損耗、経年劣化が確認され、いつ壊れてもおかしくない状態であること、③本物件は中古のため、現状有姿での引渡しとなり、瑕疵担保責任および付帯設備保証は免責とすること、④売主は対象不動産の隠れたる瑕疵について一切の責任を負わないものとすること、などの記載がありました。また、同日付の物件状況確認書の「雨漏り」の項目には、「現在まで雨漏りを発見していない」の欄にチェックが付されていました。

しかし、Xは購入後間もなく、Zから雨漏りなどの原因で退去することを知らされました。さらにその内容をYが承知していたことも判明。修繕費用は約72万円掛かる見込みで、本件物件の建物部分の価額(約70万円)を超えることが分かりました。XはYが主位的に、不法行為(詐欺)を行ったとして損害賠償507万円余を、予備的に、債務不履行による契約の解除、錯誤による契約の無効などを主張し、損害賠償441万円余を求めて提訴しました。

解説

裁判所は、次のように判示し、Xの請求を一部認めました。

(1)欺罔行為について

Xは本件契約後、直ちにZにあいさつをしたが、「1階和室のカーテンが濡れており、壁にも染みがある上、部屋もかび臭いので住める状態ではない。近く退去する」と告げられた。驚いたXは同日中に、Yに契約解除の意向を伝えたが、Yからは即日「解約には応じない」旨の回答を得た。Zは、平成31年4月に入居し、6月ごろには前記の状態となり、管理会社を通じて苦情の連絡をした。管理会社はYにその状況を伝え、修繕予定であったが、日数がかかるなどの理由から調整がついていなかった。

また、Yは、本件物件を購入し、内部を検分した時までに、雨染みがあることを確認し、玄関部分の補修などは事業者に依頼。その他の部分については、工事関係の資格は有していないが、日曜大工に自分で種々の修理を行った。

これらの事実から、Yは、本件契約の前に、1階和室に本件物件の価値を大きく減ずる規模の雨漏りが生じており、Zがこれを理由として退去する意向であることを知っていたことになる。しかし、この事実を告げず、「現在まで雨漏りを発見していない」とする物件状況確認書をXに交付。かつ、事前のXからの雨漏りの有無に係る問合せに対し、その存在を否定する返答をしていた。Yは、相当大規模な雨漏りという、投資用物件としての本件物件の資産価値を決定的に左右する点について、故意にXに対して虚偽の事実を告知したものといわざるを得ず、これは欺罔行為に当たる。Yは、Zからは「カーテンが湿気ている旨の説明を受けただけ」と主張するが、Zが建物の不満を理由に退去していることなどからして採用できない。

従って、Yが、本件物件の資産価値についてXに対する欺罔行為を行い、それによる錯誤に陥らせた上で本件契約を締結させ、代金を交付させたことで損害を被ったことを理由としては、Xは、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償請求権を有するものというべきである。

(2)損害額について

Xが支払った、本件物件代金、司法書士代、媒介手数料のほか、弁護士費用の合計404万円余は、Yの欺罔行為と相当因果関係のあるXの損害というべきである。

(3)契約解除について

以上によれば、Xの主位的請求は認定されることから、予備的請求について判断する必要はないことになる。念のため、その帰すうについても判断をしておく。

本件物件には1階和室の雨漏りという「隠れた瑕疵」が存在したといえる。Xがこの瑕疵を補修するためには、本件物件中の建築部分の価値を超える費用を要し、かつ、これによっても雨漏りが完全に補修されるとは限らない。すると、Xは、雨漏りによって本件契約の目的(投資用不動産物件の取得)を達することができず、民法第566条1項の前段の規定およびこれを本件契約において具体化したものと解される第13条の規定により、本件契約を解除することができるというべきである。

(4)結論

従って、請求のうち404万円余は理由があるので認容し、その他は理由がないので棄却する(東京地裁 令和4年2月17日判決)。

総評

不動産取引では、売主は買主に対し、取引する物件状況について、事実を告知する義務があります。また、媒介事業者は、売主による告知書等への記載が適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに、売主に対し、故意に告知しなかった場合には、民事上の責任が問われる可能性がある旨を伝える必要があると思われます、なお、本事例では、媒介事業者の責任は問われていませんが、紛争内容によっては、調査・説明不足を理由に媒介事業者の責任が問われることもあることから、自らの調査・説明義務の重要性についても再認識する必要があると思われます。

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