大雨がもたらす水害や地滑り、地震などの自然災害は、家屋そのものはもちろん、住んでいる人々の生活や命も脅かす。不動産業者として日頃から防災情報に幅広い関心を持っておこう。
令和になった今、改めて平成を振り返ると、「自然災害の多い時代だった」といわれることが多い。
死亡者が100人を超える被害が生じた地震は、平成5(1993)年の北海道南西沖地震、平成7(1995)年の阪神・淡路大震災、平成23(2011)年の東日本大震災、平成28(2016)年の熊本地震があった。
また、死亡者が出た豪雨災害を見るとさらに数が増える。死者・行方不明者が出た豪雨災害は、平成元年~31年に13回を数える。直近では死者224名、行方不明者8名を出した平成30(2018)年の西日本豪雨が記憶に新しい。豪雨災害は山間部においては地滑りを引き起こし、町中の住宅地でも家屋浸水などの水害をもたらす。
地球温暖化が進む現在、自然災害の狂暴化が懸念されている。かつては日本に近づくと海水温度が低いため勢力が弱まった台風も、温暖化の影響で勢力を弱めずに日本を直撃しやすくなっているという説もあり、水害のリスクは今後も高まる恐れがある。
2018年7月の西日本豪雨においても、家屋損害は、全壊が6,767棟、半壊が1万1,243棟、一部破損が3,991棟、床上浸水が7,173棟、床下浸水が2万1,296棟(平成31年1月9日現在)という甚大なものだった(図表1)。
都道府県名 | 全壊 | 半壊 | 一部破損 | 床上浸水 | 床下浸水 |
---|---|---|---|---|---|
岡山県 | 4,828 | 3,302 | 1,131 | 1,666 | 5,446 |
広島県 | 1,150 | 3,602 | 2,119 | 3,158 | 5,799 |
愛媛県 | 625 | 3,108 | 207 | 187 | 2,492 |
他府県 | 164 | 1,231 | 534 | 2,162 | 7,559 |
合計 | 6,767棟 | 11,243棟 | 3,991棟 | 7,173棟 | 21,296棟 |
出所:内閣府「令和元年版 防災白書」
災害から命を守るためには、身のまわりにどんな災害が起きる危険性があるのか、どこへ避難すればよいのかといったことについて、事前に調べておくことが重要だ。
現状、宅地建物取引業法に基づいて定められている重要事項説明の項目には、造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域などがある。一方、「浸水想定区域」についての説明義務はないが、不動産の購入希望者、あるいは賃貸マンションやアパートへの入居希望者に対して事前に、各市町村が用意しているハザードマップを配布するよう周知徹底する努力が行われている。
また、国土交通省では、防災に役立つさまざまなリスク情報や全国の市町村が作成したハザードマップ(被害予測地図)を、より便利により簡単に活用できるようにするため、「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/index.html)を公開している。
調べたい場所の住所を入力すると、大雨が降ったときに危険な「浸水のおそれがある場所」「土砂災害の危険がある場所」「通行止めになるおそれがある道路」「活断層の位置」「がけ崩れのおそれがある場所」「大規模な盛土造成地」などに該当するかどうかが地図上でわかるようになってる。ハザードマップの使い方を解説したPDFファイルもポータルサイトに用意されている。
また、不動産流通研究所が発刊している「住宅・不動産会社が知っておくべきハザードマップ活用基礎知識」にもハザードマップの利用方法が詳しく解説されているので、一読してみるといいだろう。
災害はいつくるかわからない。それだけに日頃からの情報収集、実際に災害が生じた場合の対応策を考えておくことが肝心だが、その際にカギとなるのが各自治体との連携だ。
住民の避難先は各自治体によって指定されている。消費者に対してハザードマップについて知らせるのと同時に、災害が生じた場合の避難先をきちんと伝えることができるよう、関連する情報を自治体から入手しておくことも不動産業者にとって大事なことだ。
また震災や水害によって、現在の住居に住めなくなった場合の対応として「みなし仮設制度」があるので、このサービスを提供するノウハウについても知っておきたい。
これは空き室となっている物件を仮設住宅として提供する制度で、住居の家賃、敷金、礼金、仲介手数料が国庫負担で提供されるものだ。震災時にこの制度を活用したい不動産業者は、その旨を自治体に伝えるのと同時に、物件オーナーにみなし仮設制度を説明し、空き室を仮設住宅として利用できるようにコンセンサスを取っておく必要がある。
震災などの災害時に、みなし仮設制度で物件を紹介できる不動産業者であることをふだんから地元住民に対して知らせておくことも、消費者からの信頼を得るのに役立つだろう。
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