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賃貸のお困りQ&A

売主の説明義務違反

仲介会社Aからの相談内容

売主様には当社が仲介会社としてつき、買主様には大手の不動産仲介会社がついて売買契約を締結し、引き渡しを完了しました。
引き渡しをしてから約3年後、買主様より「管理組合の総会で、マンションに施行段階のミスがあって構造上の問題があると2年前に知りました。調査は3年半前に行っていたそうです。管理組合の総会で「建設会社が建て直しをする、損害も補償する」という話だったので、その結果を待っていたのですが、結局その建設会社が倒産してしまったのです。ついては、売買契約を解除したいのですが」という連絡がありました。
売買当時の資料を調べると、管理会社からの重要事項調査報告書には、そのような記載がありませんでした。また、担当に契約や引き渡し当時の状況を確認したところ、「そういえば、かなりの量の引き渡し書類を契約日に受け取りましたが、中身を見ずに買主様にそのまま渡していました」という話がありました。
売主様と面談したとこと「当時そのようなことを聞いたことはあった気もしますが、そういうことは別れた主人に任せていたので、私は知りません」「買主様には申し訳ないですが、家を売った代金は、今住んでいる家を買う資金として使ってしまいました。今は月10万円の年金生活でお金がありません。契約を解除したり、賠償をするというのは勘弁してもらえませんか」とのことでした。

売買物件概要

  • 中古区分マンション(2LDK・築10年)
  • 売買価格:2300万円 仲介手数料:75万円

瑕疵担保責任の条項

売主は引き渡しから3ヶ月以内に買主より通知された本物件建物の専有部分における雨漏り、シロアリのほか、給排水設備の故障の瑕疵についてのみ責任を負う。

経緯

01年2月14日
売主様側仲介会社(当社)の仲介担当者が管理会社から重要事項調査報告書を取り寄せ、受け取りました。
01年2月22日
売買契約が成立
01年3月31日
決済
02年2月20日
買主様が管理組合総会で施行ミスを知る
04年4月5日
買主様より当社に解除したいとの連絡が入りました
04年4月28日
当社が売主様と面談しました。売主様は当初「別れた主人に任せていたので私は知らない」とおっしゃっていましたが、最終的には「そういう話があった気がする」「買主の方には本当に申し訳ないことをしました。ですがお金がないので今回の件は勘弁してください」という議事録を作成。
04年5月25日
買主様側仲介会社より連絡が入る。買主様は納得しておらず、弁護士を立てて、売主様と双方仲介会社、必要によっては管理会社を訴えるとのご主張でした。

当事者の主張

●買主様の主張
  • 売主に対し瑕疵担保責任として契約の解除または損害賠償を求める。
  • 売主の説明義務違反として損害賠償を求める。
●売主様の主張
  • マンションの構造についての瑕疵は免責されている。
  • 構造上の問題について自分は知らなかった。
  • 瑕疵担保責任の通知期間である3ヶ月は過ぎている。
  • 責任を取ろうにも手元にお金はない。

解説

Q1 今回、買主様は瑕疵担保責任を追及できるんですか

担当弁護士 結論からいうと今回はだめですね。

X 売主様が瑕疵を知っていたら、瑕疵担保免責は無効になるって言ったじゃないですか

担当弁護士 そうですね。確かに本契約の瑕疵担保条項は、建物の構造上の瑕疵について免責としています。売主は当初知らないと言っていますが、この事実からすれば、裁判所では売主は瑕疵の存在を知っていた、と認定されるでしょうね。そのため、瑕疵担保責任を免責することになっている本契約の瑕疵担保条項は無効になり、民法が適用されることになります。しかし、民法上、買主は瑕疵を知ってから1年以内に通知をしなければなりませんが、今回は建物構造上の問題を知ってから約2年2ヶ月後に通知していますので、瑕疵担保責任を追及することはできません。

X そうしたら、買主様は泣き寝入りってことですか

担当弁護士 いいえ、このケースではまだ売主の説明責任義務違反が検討できます

Q2 売主様の説明義務違反とはどんなことでしょうか

担当弁護士 売主の説明義務違反というのは、今回のケースのように売主が売買対象物の問題を知っていて、買主に説明するべきなのにこれを説明していない場合に負う不法行為責任です(最高裁平成23年4月22日判決)。売主の説明義務違反については契約に基づく政務不履行責任なのか、不法行為責任なのかが長年裁判例上争われていましたが、最高裁で結論が出ました。

X 債務不履行責任と、不法行為責任って何が違うんでしょうか

担当弁護士 債務不履行責任というのは、契約をしている当事者間において契約に違反した場合に負う責任です。一方、不法行為責任は交通事故の加害者と被害者のように、契約をしていない場合であっても、誤って(または意図的に)相手に損害を与えた場合に負う責任です。

X 裁判所は、売主様の説明義務違反は不法行為責任だと判断したんですよね。でも、売主様と買主様は売買契約を締結しているんじゃないんでしょうか。

担当弁護士 鋭いですね。でも物件の問題点を売主が説明するときって、まだ売買契約を締結する前ですよね。だから契約がまだない以上、契約違反ではない、と最高裁は判断したのです。

X なるほど。

担当弁護士 不法行為の場合は、加害者及び損害を知ったときから3年間で消滅時効になりますから、今回の場合でも買主は売主に損害賠償請求をすることはできるということになります。

●本件では

担当弁護士 本件では、実際裁判で争われれば、マンションの構造上の問題を知りながら説明をしなかったとして売主に説明義務違反があったと裁判所では判断されるでしょう。これに対して、売主の方は「お金がなく賠償は難しい」と主張していますが、不動産を所有しているので、これを仮差し押さえし、判決を得て強制競売して賠償を得る、という方法が考えられます。

予防
① 責任追及手段の確保
今回の場合は、建設会社が補償してくれることに安心して瑕疵担保責任を放置していたパターンですが、誰かが補償してくれると思って本来請求できる相手を放置していると、消滅時効などで請求ができなくなる場合があります。また、クレームの交渉を延々とやっていて、消滅時効になってしまったという場合もあります。
② 瑕疵担保責任の通知期間
今回のケースとは関係ありませんが、瑕疵担保責任の通知期間は、引き渡しから3ヶ月など短期間となっている場合が多く、問題の解消に向けて動いていると、いつの間にか期限ぎりぎりになってしまうこともあります。買主様側の仲介会社の立場である場合、問題の解消とは別に、売主様に通知をするかどうかを早めに買主様と相談し、早めの対応を忘れないようにしてください。
③ 引き渡し書類の確認
今回、担当者は引き渡し書類を全く確認していません。このケースと類似の紛争では、引き渡し書類の中に、構造上の問題についての報告が記載されている管理組合総会議事録が入っていた、ということがありました。この場合、売主様側仲介会社は調査義務違反を負う可能性があります。引き渡し書類が膨大だと中身を確認することも大変でしょうが、こうしたこともあることに注意してください。

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