Nスタイルホームは創業14周年を迎えました。
売主Y1は、宅建事業者Y2に分譲マンション(本件マンション)の1室(本物件)の売却依頼をしました。
Y1はY2の求めに応じ、令和元年9月、本件マンションの管理会社より理事会資料・議事録を入手し、手交しました。
令和元年12月、Y2は管理会社に対し、本件マンションの管理費および修繕積立金(管理費等)の変更予定を確認し、管理会社より、同月20日付けの「管理に係る重要事項調査報告書」(調査報告書)を入手しました。調査報告書には、「管理費等の変更予定等」について、管理費、修繕積立金のいずれについても、「予定無」と記載されていました。
買主X1·X2(Xら)は同月下旬、Y2およびXらの宅建事業者Y3が重要事項の説明を行った際、管理費等について、金額に変更予定はない旨の説明を受けました。同日、XらとY1は、本物件の売買契約を締結しました。
令和2年2月、Xらは、残代金の支払いを完了し、本物件の引渡しを受けました。
一方、本件マンションの管理組合は、令和元年10月、管理費等の値上げに関するアンケートを実施し、翌月開催の理事会で、その集計結果を検証の上、今後の対応について協議を行っていました。
令和2年1月、管理組合の理事会が開催され、管理費等の値上げ案が議決され、これが臨時総会に上程されることになりました。
同年3月、管理組合は臨時総会を開催して理事会提案通り管理費等の値上げ案を決議し、同年5月分より、本物件の管理費は従前の月額1万9,230円から2万8,490円、修繕積立金は同じく7,520円 から1万5,760円に改定されました。
同年4月、Xらは、管理費等の値上げが確実であったにもかかわらず、管理費等の増額の予定はないと伏せたまま説明しなかったとして、Y1、Y2、Y3(Yら)に対し、管理費等増額分の10年分相当の210万円余の支払いを求める通知書を送付しました。しかし、Yらがその支払いを拒否したため、損害賠償を求めて提訴しました。
裁判所は、次のように判示し、Xらの請求を棄却しました。
管理組合において、令和元年10月、管理費等の値上げのアンケートが実施されており、実際、令和2年3月、管理費等を増額する臨時総会の決議がされていることに照らせば、本件売買契約を締結した令和元年12月当時、本件マンションでは管理費等の増額が検討されていたといえる。
しかしながら、Y1は、本物件に入居したことがなかったため、アンケートが実施されていることを認識していなかった。このような場合、Y1は、管理会社に問い合わせるなどして確認する方法が考えられるが、すでにY2が、令和元年12月、管理会社に対し、管理費等の変更予定を確認し、調査報告書を得ており、Y1もY2の担当者から、管理費等の変更予定はない旨聞いていたことからすると、Y1が、自ら改めて管理会社に問い合わせる義務があったとまでは認められない上、仮に問い合わせたところで、管理会社の回答は同様であったと解されるから、Y1が、管理費等の変更予定を把握することは困難であったといえる。よって、Y1に、本件売買契約に付随する信義則上の説明義務違反があったとは認められない。
Y2は、令和元年12月、管理会社に対し、管理費等の変更予定を確認し、調査報告書を得るなど、一定の調査をしたことが認められる。そして、調査報告書には、「管理費等の変更予定等(本書、発行日現在)」について、管理費、修繕積立金のいずれについても、「予定無」と記載されていたことからすれば、Y2•Y3が、Xらに対し、管理費等の変更予定がない旨説明したことは、必要な調査を行った上での、当時の情報に基づく合理的な説明であったといえる。
管理会社の変更予定なしとの報告に従って説明したY2•Y3に、この点についての責任を問うのは酷というべきであるし、調査報告書の記載を疑って、さらに調査すべきだったといえる事情もない。よって、Y2•Y3に、宅地建物取引業法上の説明義務違反があるとは認められない(東京地裁令和4年9月28日判決)。
本件は、中古マンションの1室を購入し、引渡しを受けた翌月に、タイミング悪く管理組合の臨時総会にて管理費等の増額が決議されたが、管理会社から報告書を得るなど一定の調査をしたことが認められ、変更予定を把握することは困難であったなどとして、売主および宅建事業者の説明義務違反が否定された事例です。
管理費や修繕積立金については、後々のトラブル回避の観点より、管理会社から報告書を得るなどの調査に加え、売買契約直前や決済前にも改定が疑われる事情がないか、きちんと確認しておく方が望ましいと思われます。
売主業者Y1は、Aから区分所有建物(3階建て1階部分の住宅1戸)を宅建事業者Y2の媒介により1,080万円で取得。Y2は以前より建物全体の管理業務を無償で行っていた。
Y1が内装工事を実施後、Y2は本件建物を、価格3,480万円でレインズに登録。これを見た宅建事業者Y3が、Y3のネットサイトに掲載したところ買主Xが応募し、XはY3の案内により物件を内覧した。Xは、Y3から、大規模修繕工事の予定があること、管理会社はY2で、管理方式は1階の店舗に入居するY2の常駐管理となる予定との説明を受けた。平成29年10月、Xは、Y1、Y2、Y3(Yら)に重要事項説明を受け、売買契約を締結。Y2が作成した説明書には、修繕積立金は規約に定めがあリ、既積立額は269万円余で、滞納額が25万円余あること、管理委託先等については、管理形態が全部委託であることが記載されていた。
平成30年2月、管理組合の総会とされる会合に出席したXは、管理がY2の関係会社に委託予定で、修繕積立金は現存せず、本件建物に漏水事故を起こした2階居住者への損害賠償請求権293万円があり、その請求訴訟を提起する旨が会合に付議されていることを知った。Xは、Yらに対する不信感を強め、弁護土に本件調査を委任。管理組合の会計帳簿等を請求したところ、Y1は「管理費積立金がないことが判明した」などと回答。同年8月に2階居住者への損害賠償請求訴訟を提起したが、翌月に居住者から入金があったとして訴訟を取り下げた。Xは、Yらに対し、修繕積立金などの虚偽説明による共同不法行為等に基づき売買代金相当額等4,200万円余を求める訴訟を提起した。
裁判所は、A·Y1間の売買契約書には管理規約が存在しないと明記されており、これは区分所有建物では異例で、宅建事業者から買主に説明すべき事項に当たる。Y1 ·Y2は、Xへの説明に誤りがあることを認識していたのは明らかで、共同不法行為責任を負う。Y3は、誤った重要事項説明を行ったが、説明は全てY2からの教示によるものであり、調査義務違反があったとまでは認められないとして、Xの請求を一部認容した。
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