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買主X(買主側宅建事業者Bの宅地建物取引士)は、「フラット35利用相談可能」と表示された本物件の売り出し広告を見て、フラット35の利用を前提に考え、令和3年2月8日、売主Yとの間で、売主側宅建事業者AおよびBの媒介により本件売買契約を締結しました。
重要事項説明書には、本件建物は簡易耐震診断によると、耐震性能は低いとの結果が出ており、今後精密な耐震診断や補強工事の予定はない旨が記載されていました。XはAから簡易耐震診断報告書を受領しました。
本件建物について、フラット35適合証明書の発行を行う会社に対してAが行った事前相談では、適合証明書の発行が可能との回答を受けており、フラット35の利用を前提に購入資金計画表が作成されていました。しかし、平面形状が規定外の構造のため、適合証明書を発行できない旨の連絡を、Xは融資利用特約期限後の令和3年3月15日に受けました。
Xは、Yに対し、主位的に本件建物について適合証明書を受けることができず、フラット35の利用ができなかったため、本件売買契約を錯誤取消しまたは契約不適合責任に基づき解除したとして手付金返還を求め、予備的にYが宅建事業者を介して誇大広告したことが不法行為に当たるとして、損害賠償を求める本件訴訟を提起しました。
これに対しYは、Xによる代金支払債務の不履行により本件売買契約を解除したとして違約金を求め反訴しました。
裁判所は、次の通りに判示して、Yの反訴請求を認容し、Xの請求を棄却しました。
Xは、売買契約締結の際、Aから本件建物の耐震性能が低いことについて説明を受けていたものと推認される。また、フラット35の承認が得られない場合も本件売買契約上は想定されていたことによれば、本件建物がフラット35の適合証明書を取得できる構造、性能を備えていることが本件売買契約の内容として合意されていたとは認められない。
よって、本件売買契約の内容に不適合があったと認めることはできないから、Xによる本件売買契約の解除の効力は認められない。
名事実によれば、Xは本件売買契約の締結に際してフラット35利用を前提としていたものの、フラット35の利用ができることが本件売買契約の基礎となる事情になっていたとは認められない。また、フラット35が利用できるか否かは買主による売買代金の調達方法の問題にすぎず、フラット35が利用できることが絶対条件であれば端的にフラット35の利用ができなかった場合には本件売買契約を解除できる旨の規定を設けることも考えられるところ、本件融資利用特約による解除は一定の期間内に限られていることからすれば、フラット35利用の可否に関する錯誤が社会通念に照らして重要なものであるということもできない。
本件売買契約におけるフラット35の利用予定は本件融資利用特約の関係で記載されたものにすぎず、他の資金調達方法を選択することも可能であって、フラット35を利用して売買残代金の調達をすることが当事者間で合意されていたことを意味するものではない。
よって、本件建物がフラット35の利用に適合する構造、性能を備えていないことをもって本件売買契約を錯誤取消しできるとは認められず、Xによる取消しの効力は生じない。
本件広告は宅建事業者が行ったもので、Yが関与した証拠はなく、「フラット35利用相談可能」と記載するのみで、フラット35の利用を確約する内容ではないから、本件広告が誇大広告に当たるということもできない。
Xによる本件売買契約の取消しまたは解除は認められないから、Xが取消しまたは解除の意思表示をした日以降も本件売買契約は有効に存続していたことになる。そして、Xは本件売買契約の残代金を支払わないまま支払日が経過したため、YはXに対して残代金の支払いをするよう催告するとともに、履行がない場合には本件売買契約を解除するとともに違約金の支払いを請求する旨の意思表示をしたことによれば、本件売買契約はXの債務不履行により解除され、XはYに対して本件売買契約に基づく違約金および遅延損害金の支払義務を負っていると認められる。
以上によれば、Yの反訴請求は理由があるからこれを認容することとし、Xの本訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却する(東京地裁 令和4年8月25日判決)。
本事例において、フラット35適合証明書発行の事前相談では、本件建物について発行可能との発行会社の回答を得ていましたが、実際に手続きを行ったところ、発行を受けることができなかった事情があったようです。しかし、一般に、買主の住宅ローン申込みについて、金融機関の事前審査が通っていても、本審査で断られることは珍しくないように、そのような事態は起こり得るもので、ローン特約はその買主のリスク回避のために付されるものといえます。
宅建事業者は、そのような事態が可能性としてあることから、売買契約の際は買主に対して、速やかにローン申込みの手続きを進めること、約定のローン特約解除期日までに融資承認を得られないのであれば契約解除等を行うことを事前によく説明して注意喚起するようにしましょう。
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