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改正民法施行後の賃貸借契約の法定更新において、極度額の合意がない連帯保証契約は無効であるという保証人の主張が棄却された事例

ケース

平成28年10月、賃貸人Xは、賃借人Y1と住宅賃貸借契約を締結し、また、Y1の父親Y2と連帯保証契約を締結しました。なお、賃貸借契約書には「Y2の連帯保証債務について、賃貸借契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする。」との約定がありました。

その後、Y1が、令和1年10月から12月分の賃料のうち25万円の不払いに陥ったためY2が支払い、さらに、令和2年6月分までの賃料不払い34万円についても、Y2が支払いました。

その後も、Y1は、令和2年11月分までの賃料36万円を滞納したため、管理会社が、Y2に同額の支払いを催告しましたが、Yから支払いはありませんでした。

なお、令和2年10月15日に、Y1から、本件建物の管理会社に、同年11月15日に退去する旨の連絡があり、Xは、本件賃貸借契約書に記載されている、1カ月前までに解約の申入れを行く約定に基づく解約通知として受け入れましたが、Y1は、すでに居住していないものと思われるものの、本件建物内に動産類を残置しており、令和2年11月15日までに本件建物から退去して本件建物を明け渡すべき義務を履行しませんでした。なお、令和2年11月13日には、賃貸借契約は法定更新されました。

管理会社が、Y1との連絡を試みても、一切の連絡をとることができず、また、同年11月19日に、Y2と連絡をとりましたが、これ以上の支払いはできない旨の回答がありました。

Xは、Y1の解約申入れにより本契約は合意解除された、また、Y1との間の信頼関係は破壊されているとして、Y1に対し、建物の明渡しを、Y2に対し滞納賃料の支払いを求め提訴しました。

これに対し、Y1は解約申入れ後、管理会社から指示された手続きを行っていないので解約の効果が発生していない、Y2は本契約の法定更新において極度額が定められなかったことにより、法定更新後の連帯保証契約は無効と主張しました。

解説

裁判所は次のように判示して、Xの請求を認容しました。

  1. 賃貸借契約の解約申入れの有無

    Y1が、令和2年10月15日、管理会社に対し、同年11月15日に退室する旨を連絡したこと、また、本件賃貸借契約13条1項では、Y1はXに対し1カ月前までに解約の申入れを行うことにより、本件賃貸借契約を解除することができる旨定めていること、管理会社の担当者が、Y1に対し解約明渡しの手順について説明したこと等の事実が認められ、これらの事実を踏まえると、Y1は、同年10月15日、Xに対し、本件賃貸借契約の解約の申入れをしたものというべきである。

  2. 賃貸契約の解除について

    Y1は、管理会社の担当者から指示された手続きをその後に行っていないことを根拠として、解約の効果が発生していないと主張するが、同不作為は解約申入れの効果を妨げるものではないから、Y1の主張は、採用することができず、従って、本件賃貸借契約は、令和2年11月15日の経過をもって解除されたものと認められる。

  3. 改正民法が適用されるかどうか

    Y2は、本件連帯保証契約について、改正民法が適用されるとの前提で、改正以降に発生したY1の債務について責任を負わないと主張するが、本件連帯保証契約は、改正民法の施行日(令和2年4月1日)より前に締結されたものであり、その後、本件賃貸借契約の更新に合わせて保証契約が更新されることもなかったから、改正民法の適用はない(平成29年法律44号附則21条1項)。また、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情は認められないし、本件賃貸借契約の19条1項が、連帯保証債務について「本契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする。」と定めていることから、Y2において、各更新(平成30年11月4日付の合意更新および令和2年11月13日の法定更新)後の本件賃貸借契約から生ずるY1の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、Y2の主張は、採用することができない(東京地裁 令和3年4月23日判決)。

総評

令和2年4月1日の民法改正により、極度額の定めのない個人根保証契約は、民法第465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)の規定により無効となりましたが、民法改正前に締結した連帯保証契約においては、同保証契約が、賃貸借契約の更新等に併せ更新されなければ、改正民法の適用はなく、連帯保証人は、民法改正後の賃貸借契約更新以降に発生する賃借人の債務も保証することになります。

本件は、まさしくこの内容を反映した判決となっていますが、判決の根拠として、賃貸借契約更新に合わせて保証契約の更新がなかったことと共に、賃貸借契約書の記載に、連帯保証債務について「本契約が合意更新あるいは法定更新された場合も同様とする。」と定められていることが挙げられています。

このような文書を賃貸借契約書に入れておくことは、極度額を定めることとなった民法改正後の連帯保証契約においても、賃貸借契約の更新が法定で更新された場合でも、連帯保証人は、賃借人の債務を保証する必要があることが一義的に定義されていることから、トラブル防止のために有効と考えられます。

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