Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
私が担当のオーナー様が所有している「Xビル」の入居テナントについてご相談です。
Xビルは駅からも遠く、3階が長い間空室となっていたのですが、先日内覧申し込みが入り、翌日申し込みのあったα㈱の社長A氏、財務担当取締役B氏と名刺交換をし、物件を案内しました。
A氏は「駅から少し遠いけれど、賃料も安いしここにしよう」とおっしゃって、3日後には賃貸借契約を締結しました。
ところが、契約から3ヶ月後、警察署から当社宛にXビル3階のテナントの契約書を見せてほしいという捜査関係事項照会書が届きました。警察の説明によるとα㈱はIT企業というのは表向きの姿で、裏では偽造クレジットを製造しており、暴力団の資金源となっているらしい、とのことでした。
Xビルのオーナー様は「面倒なことになった」「きちんと退去させてください」とおっしゃっており、対応についてご相談させていただけますでしょうか。
このように、反社会的勢力がテナントとして入居してしまうと、退去させることは大変困難な場合があります。このような事態にならないようにするためには、審査の段階で、テナントの異常性に気づくことが重要です。
この法人登記簿から不審な点を読みとることはできないでしょうか
商号 | α㈱ |
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本店 |
東京都台東区日本堤○丁目26番35号紅ビル2F
東京都台東区台東○丁目19番20号山川ビル5F |
広告をする方法 | 官報に掲載している |
会社設立の年月日 | 平成26年4月10日 |
目的 |
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発行可能株式総数 | 2000株 |
発行済み株式の総数並びに種類及び数 |
発行済株式の総数 300株
発行済株式の総数 2000株 |
資本金の額 |
金1200万円
金5600万円 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない |
役員に関する事項 |
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登記記録に関する事項 |
平成26年9月15日 所沢市並木○丁目113から本店移転 |
まず、取締役B氏が、法人登記簿上に取締役として記載されていません。法人登記簿上において取締役でもない人物が「取締役(財務責任者)」の名刺を使用していることをα㈱が放置していることに、会社としての異常性が伺われます。名刺と法人登記簿を照合するということはかえって盲点となっているかもしれませんが、Xビルのオーナー様から賠償の請求が来た場合、入居審査上の過失として責任を追及されるおそれがあります。
複数の取締役が辞任している場合には、注意が必要です。「辞任」とは、取締役が任期満了を待たずに自発的に任を離れた場合をいいますが、いわゆる「乗っ取り」があった場合にも複数の取締役が同時に辞任する場合があります。
本事案では、就任時期がそれぞれ違う「Q氏」「S氏」「T氏」が3人揃って平成27年8月10日に同時に辞任しています。そして、同日付で「U氏」「V氏」が、新しく取締役に就任しています。実質的には、別の会社になった可能性が高いと考えられます。
会社が経営に必要な資金を調達する方法としては、銀行からの融資、株式の発行などがあります。増資は、会社が出資を募り、新株を発行する行為です。増資は、会社は清算しない限り資金を返す必要がないため、安定的な資金調達といえます。
なお、増資は現金だけでなく、不動産、動産、債権などの「現物出資」でも行えます。急激な増資は、主要株主が変わった可能性があります。
本事案では、創業者で主要株主と考えられる「Q氏」が辞任し、同じ時期に多額の増資が行われています。複数の役員が同時に辞任しているタイミングであることと合わせると、主要株主が変わり、会社が乗っ取られた可能性があります。
「本店」とは会社の所在場所をいいます。一般には本社事務所が置かれていますが、実際に本社事務所と登記上の本店が一致しない場合があります。普通ではあり得ないくらい本店移転を繰り返している場合には、実体は休眠会社で、詐欺などの犯罪の道具として利用されている可能性もあります。
このような会社は、まず登記上の過去の本店所在地を追跡し、その結果明らかとなった登記上の所在地について、どのような建物に入っているのか、入居テナントの業種は何かなどからその会社の信用性を調査すると、バーチャルオフィスをを発見するなど不審な点が見つかる場合があります。移転前の閉鎖登記簿を確認し、さらに本店移転が行われていた場合には、休眠会社の可能性が高くなると考えられ、注意が必要です。
会社の代表の住所が、日常業務を行うことが不可能なほどの遠隔地にある場合は、誰か他に会社を実質的に経営している者が存在する可能性があります。
現代は飛行機等の交通手段が発達していますので、代表者の住所と、本店所在地が離れていても、直ちに会社の経営が傾いていることを示す指標になるとはいえませんが、本店所在地の近くに住んでいた代表者が遠隔地に転居して住所が変更された場合には、会社の経営が傾き、第三者の資本注入を受けた結果、代表者が経営権を第三者に渡している場合が考えられるのです。
本事案では、影の実験者が、α㈱の事業を引き継ぐために「A氏」をお飾りの代表取締役として就任させ、その後、足立区の自宅を処分させて、登記上の住所だけは宮城県に移しているとも考えられます。
以上の通してみると、α㈱は、平成27年8月10日頃、第三者に「乗っ取られている」可能性が推測されます。また、取締役でないB氏が財務担当取締役の名刺を持って社長とともに行動しているという点からも、α㈱が普通の会社ではないことがわかります。法人登記を見ても、α㈱が「反社会勢力」かどうかまではわかりません。しかし、借主として審査を通してよい法人ではないことは読み取れるのではないかと思います。
岡山市に物件を持たれているオーナー様、お気軽にご連絡ください。
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