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賃貸のお困りQ&A

築50年超のアパートの占有者の立退きについて、貸主の正当事由が認められた事例

今回のケース

Xの父は平成12年8月、Yに対し、本件建物(昭和43年7月建築、2階建て木造アパート)の一室を、賃貸期間同日から平成14年8月までとの約定で賃貸(賃料月額4万3,000円、共益費2,000円)していました。賃貸借契約は、2年ごとに4回更新され、平成20年7月に最後の賃貸借契約を締結し、それまでの契約書にはなかった特約条項として「契約更新は今回限りとし、更新期間満了とともに賃貸借契約は終了する」と定めました。Yは、契約書記載の期間満了日である平成22年8月より後も本件建物に居住し続けたため、本件賃貸借契約は、期間の定めのないものとなりました。Yは、賃貸人から賃料と共益費の受取りを拒絶されたため、平成22年9月以降、同年8月分以降の賃料と共益費を供託し続けていました。

その後、平成31年3月に、Xが本件建物の所有権を相続しました。

●本件建物について

・Xは、平成29年10月、建築設計事務所に対し、本件建物とその隣の建物を取り壊して駐車場にした場合の設計図の作成を依頼し、8台の自動車を駐車した場合のレイアウト図を受領。本件建物と隣接する建物を解体する場合、Xは、これを支払うに十分な流動資産を保有する。

・Xは、令和2年8月、建築会社に建築計画の作成を依頼し、鉄筋コンクリート造5階建て12戸と計画を提案された。

・Xは、令和3年5月、一級建築士事務所に対し、本件建物の耐震診断を依頼したところ、1階部分は倒壊する可能性が高い、2階部分も倒壊する可能性があると診断された。主な原因は耐力要素の不足であり、これを改善するためには、既存の壁を耐力壁仕様にすると同時に、耐力壁周りの接合補強を行ったり、屋根の浅瓦を金属板葺きに変更し、建物重量を軽減する方法を検討する必要がある旨の報告を受けた。Xは、本件建物の2階の共用廊下の床が落ちないように、下から支柱で支えるなどの応急的な措置を行った。

本件建物の入居状況について

・平成18年の時点においては満室だったが、平成31年3月以降はYのみが入居している状況だった。

Xは、令和2年8月、Yに対し本件賃貸借契約の解約を申し入れましたが、Yは本件建物の占有を続けたことから、令和3年3月、建物老朽化、建物利用状況(賃借人がYのみであるという状況が継続しており、収益性が著しく悪化していること)、予備的に立退料として、賃料と共益費の合計額の6カ月分に当たる27万円または裁判所が相当と認める金額と立退料の支払いを申し出ることによって、本件訴えを提起して、Yに対し、本件建物の明渡しを求めました。

解説

裁判所は次のように判示し、Xの要求を認めました。

(1) 収益性が著しく悪化しており、明渡しを求める必要性が高い

本件建物は、建築から50年以上が経過し、倒壊することも懸念される建物であることが認められる。また、本件建物に入居している賃借人がYのみであるという状況が継続しており、収益性が著しく悪化していることも併せて検討すると、現時点では、Xが主張する低層マンションの建築の見通しは不透明であるものの、本件建物と隣接する建物を解体して駐車場にすることによって、上記の問題点を解決することは十分な合理性があり、Xはその計画を実行することができる資力を有していることも認められる。従ってXにおいては、明渡しを求める必要性が相当程度高いと認められる。

他方、Yは長期にわたり、本件建物を住居として使用しており、70歳を超える高齢であることも併せて考えると、引き続き本件建物において居住を継続する必要性が高い。ただし、Yは、契約更新は今回限りとする旨の合意を含む平成20年7月付の賃貸借契約書に署名押印しているところ、同契約書における賃貸期間の終期から10年以上も本件建物の使用を継続しているのであるから、引き続き本件建物において居住を継続する必要性は、相対的に低下していると認められる。

(2) 引越し等の不利益は、立退料の支払いで補完できる

以上のとおり、Xにおいて、本件建物の明渡しを求める必要性は相当程度高い。他方、Yにおいて本件建物の使用を継続する必要性が相応に存する。従って、Xの解約の申入れに直ちに正当の事由があるとまでは認め難いものの、本件建物の明渡しによって引越し等を余儀なくされるというYの不利益は、Xがその不利益を一程度補うに足りる立退料を支払うことによって補完することが可能であり、これにより、Xの解約の申入れに正当の事由が認められる。そして、立退料金額は、上記の認定および本件の一切の事情を勘案すると、本件建物の1カ月分賃料および共益費の合計額6カ月分(27万円)が相当である(東京地裁 令和3年12月14日判決)。

総評

本件は、耐震性に問題がある建物について、立退料として家賃6カ月分で立退きが認められた事案です。

借地借家法28条では、貸主による解約の申入れは、貸主および借主が建物使用を必要とする事情の他、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、貸主が建物の明渡しの条件としてまたは建物の明渡しと引き換えに建物の借主に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができないと定められています。また、貸主の立退料等の提供は補完的事由とされ、それ以外の上記正当事由がなければ、立退料のみを提供しても、貸主は立退きをさせることができませんので、これらを踏まえ協議してください。

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