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郵便葉書に『マンションは次女にやりたいと思っている』等と所有権者が自筆し郵送したケースが、裁判では自筆証明遺言として無効という判定だったと聞きました。何が問題なのでしょうか?
遺言書の解釈は「遺言書作成当時の事情は遺言者の置かれていた状況等の一切を考慮し遺言者の真意を探求する必要がある」(最二小 昭和58年3月18日判決)という確立された判例があります。本件も経過を辿って考えましょう。
昭和26年X月、X(昭和3年生)はYと婚姻し長女Aと次女Bをもうけました。Yは株式会社を設立して事業に励み、昭和48年頃、会社が信用金庫から融資を受け宅地1にマンションを建設しました。登記名義について、YはXと相談し、会社の名義にすると経営悪化の際に会社債権者から差押え等を受けるおそれがあると危惧し、マンションの所有権登記名義をXとしました。
平成14年10月10日、Xは原稿用紙を使用して表題を「遺言状」、本文は「Xの所有する不動産の相続は夫のYにすべてまかせます。長女Aと次女Bには遺留分として8分の1ずつ遺します。東京都大田区《番地等略》平成14年10月10日 X署名 指印」の文章を自作しました(以下14年文書)。
平成24年2月2日、Xは郵便葉書の表面にBの住所、宛名B、年月日、X署名指印、裏面に「こんな事が役立つようでは困るけど 一応念のため。マンションはママのものです 自宅は●●●ですXはマンションはBにやりたいと思っている。自宅はAがもらってはどうですが 念のため Bの事がしんぱいなの ママ」と書いてBに郵送しました(以下24年文書、●●●は人名)。
平成28年x月、Xが死亡し相続が開始されました。相続人はYとAとB。遺産は宅地1と2、および1地上のマンションです(2地上はYとA夫妻共有の住居)。平成29年3月、東京家裁で14年文書につき検認手続、同年5月、24年文書につき同手続を経ました。
平成29年x月、YとA(原告ら)がB(被告)に対し、24年文書の自筆証書遺言無効確認と14年文書の自筆証書遺言有効確認を求める訴訟を東京地裁に提起しました。
原告らは「24年文書はマンションと住居についてXの考えを提案するものに過ぎず、相続させる旨の最終的意思を表示したものではない」と主張しました。東京地裁は「同書はXの財産処分につき確定的な意思が示されているとはいい難い」。「遺言相続等死後処分を示す文言もないから同書を遺言としての効果を生じさせる意思を有していたとは認められない。」と自筆証書遺言としての効力を否定。「14年文書はYに遺産分割手続きを委ねる趣旨である」との被告の主張はABへの遺留分の指示との矛盾を指摘して退け、14年文書は民法968条1項の遺言要件をすべて具備しており有効と認定。B控訴で東京高裁も一審と同様に24年文書はXの確定的最終的な意思の表示がないと無効の判断でした(東京地裁 平成31年2月8日判決、東京高裁 令和1年7月11日判決 判例時報2440号)。
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