Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
法人・貸主Xと法人・借主Yは、平成30年1月、賃貸マンションの最上階4階部分の1室(本物件、関東地方に所在)の賃貸借契約(本件賃貸借契約)を締結しました。
なおYは、本物件を代表者Bらの居宅として使用し、Bらは、バルコニー(本件バルコニー)南側に大型の鉢植えやプランターを設置して、観葉植物等を育てていました。
平成31年4月、XはYから、本件バルコニーの水はけが悪いとの指摘を受け、その排水設備工事を行い、排水管を全て交換しました。
令和元年9月8日から9日にかけて、台風15号(本件台風)が関東地方を通過して大雨が発生。本件バルコニーにたまった水があふれ、本物件室内への浸水が生じたほか、階下3階居室、2階居室および1回居室の天井、壁および床への浸水(本件事故)が発生しました。
そこでXは、本件バルコニーの清掃を怠ったことにより、本物件および階下の部屋に浸水被害が発生したとして、Yに対し修理費用等合計254万円余の支払い等を求める訴訟を提起しました。
裁判所は、次の通りに判示し、Xの請求を認容しました。
借主は、賃貸借の目的物の保管につき、契約内容に従った善菅注意義務を負っている。本件賃貸借契約においては、その特約条項として、本件バルコニーの排水口が落ち葉等でふさがれた場合には、本件バルコニーに水がたまって階下への水漏れが発生する可能性があり、排水口を定期的に清掃するよう定められていた。すなわち、Yは、本物件に付属する本件バルコニーについて、排水口がゴミによってふさがれて水がたまり、本物件やその階下の居室に漏水事故が生じることのないよう本件バルコニーや排水口の清掃等を行って適切に管理すべき契約上の義務を負っていたと認めるのが相当である。
本件台風による降雨の際に、本件バルコニーで水がたまり、本物件の居室へ浸水するに至ったのは、何らかの理由によって排水管に水が十分に流れ込まず、排水が十分に行われてなかったことによるものであること、Yが本件バルコニーに置いていた鉢植え等から発生するゴミや土が本件バルコニーの排水口をふさいだ可能性が十分にあること、本件事故当日に本件バルコニーにたまった水の水位が下がり始めた午前5時時点の状況からすると、Yにおいて排水口を掃除する等の措置を取ったと考えるのが合理的である。加えて、ゴミ等が排水口をふさいだこと以外に、本件台風による降雨の際に本件バルコニーからの排水が十分に行われなかった原因が、証拠上見当たらないことを総合すると、本物件の室内に浸水するに至ったのは、Yが本件バルコニーの清掃を十分に行わず、本件バルコニー内で発生したゴミ等が排水口をふさいだことによるものであると認めるのが相当である。
従って、Yが、賃貸借契約に基づいて本件バルコニーや排水口の清掃等を行ってこれを適切に管理すべき義務を怠ったことによって、本件バルコニーから本物件の室内に水が浸水して本件事故が発生したものと認めるのが相当である。
本件事故においては、本件バルコニーから本物件の室内への浸水が生じたほか、階下3階居室、2階居室および1階居室内の天井、壁および床への浸水が生じたことが認められる。
階下3階居室、2階居室、および1階居室への浸水は、バルコニーから本物件の室内への浸水に伴い、水が建物内部を伝わることによって発生したものと認めるのが相当である。
Xが、本件事故による浸水のため、本物件の床材の張替え工事、階下3階居室の床材および天井と壁のクロスの張替え工事、2階居室の床タイルおよび天井と壁のクロスの張替え工事、1階居室の床タイルおよび天井のクロスの張替え工事、さらに3階居室の絨毯のクリーニング実施、3階居室の前記工事の工事期間中における入居者の宿泊費を負担したことが認められ、これらの費用合計254万円余は、Yの債務不履行と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(東京地裁 令和5年2月3日判決)。
近年、台風や線状降水帯等の降雨による浸水被害が多く見られるため、浸水被害に関して、借主の責任が認められた一事例として紹介しました。
なお、本判決後、判決を不服としたYが控訴し、Xの加入保険で損害金額が補填されたこと等もあり、YがXに対し27万円を支払う内容等で和解が成立しています。
バルコニーからの浸水については、本件のような事例もあることから、宅建事業者の皆さまが賃貸借の媒介を行う場合、トラブル回避の観点より、借主には排水口を清掃する等の善管注意義務があることを伝え、排水口がふさがれた場合、本件のような浸水事故が発生する可能性もあるため、貸主から浸水履歴や排水管交換等の対応状況を聞いた場合には、その内容を借主にきちんと伝えていただきたいと思います。
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