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特定空家の解体措置の代執行前に行われた、所有者と第三者との売買契約が通謀虚偽表示により無効とされた事例

空家等対策特別措置法に基づき指定された特定空家について、解体等の代執行が行われ、市よりその費用の納付を命じられた特定空家の所有者が、代執行の開始前に特定空家を第三者に売却しているとして、納付命令の取り消しを求めた事案において、所有者主張の売買契約は通謀虚偽表示によるもので無効であり、代執行及び納付命令に取り消すべき違法はないとしてその請求を棄却した事例。

1.事案の概要

令和元年9月、Y(市・被告)はX(原告)に対し、X所有の本件建物が、空家等対策の推進に関する特別措置法の特定空家等に該当するとして、その全部の解体等の措置を執るよう指導し、同年10月1日、同措置を執るよう勧告し、令和2年3月2日、執行期限を同年6月10日として同措置を執るよう命じた。

また、YはXに対し、令和2年3月2日付で、措置命令による義務の履行に関し、行政代執行法基づき文書で戒告を行い、同年9月18日付で、代執行令書をもって、同意義に関し代執行を行うことを通知した。

Xは、令和2年9月11日付で、XがAに本件土地建物を代金285万円で売却する内容の売買契約書を取り交わし、同年10月21日に、同年9月30日付売買を原因とするAへの所有権移転登記の申請が受付けられた。

令和2年10月22日、Yは本件建物の解体等の代執行を開始し、同日代執行を終えた。

YはXに対し、令和3年3月22日付で、代執行に要した費用4724万円余の納付を命じる本件納付命令を発出した。

しかしXはYに対して、同日付で、本件土地建物を第三者に売却したためXには納付義務がない旨を通知し、同年8月、本件納付命令の取消しを求める本件訴訟を提起して「代執行開始時点の本件土地建物の所有者はXでなくAであり、Aに対して事前の通知等を行っていないYの代執行は違法な行政代執行であるから、その違法性が本件納付命令にも承継される。行政代執行法5条にいう義務者とは、命じられた義務の履行を果たし得る者と解すべきで、所有者でないXはこれに当たらず、本件納付命令は、代執行に要した費用を負担義務のない者に納付を命じるものであるから違法である。」等と主張した。

これに対してYは、「XとAとの売買契約は通謀虚偽表示により無効であるから、本件納付命令は適法である。」等と主張した。

2.判決の要旨

裁判所は、下記の通り判示して、Xの請求を棄却した。

(1)本件売買契約に係る通謀虚偽表示の有無

本件売買の効果意思に関連するXの認識等について検討すると、Xは、Yによる本件建物の解体等の代執行が差し迫った状況にあることを十分認識していた令和2年9月30日に、Aとの間で本件売買契約を取り交わし、同年10月21日より前の時期に郵送で所有権移転登記の申請をしたというのであって、一連の事実経過を踏まえれば、Xの本件売買契約及びこれに基づく所有権移転登記手続は、代執行やこれに伴う費用の負担から免れることを意図したものとみざるを得ない。

また、Xは、動産物件やPCB廃棄物の引取りを求められても対応せず、本件納付命令を受けるに至ってから、Yに本件売買契約を告げていること、本件土地建物の根抵当権の抹消登記をすることなく本件売買契約を締結し、Aが関わることなく、あるいは司法書士に依頼することなく、売主であるX自らが登記申請を行うなど、不自然な点が多々見受けられるところ、これらは、Xが、単に代執行やこれに伴う費用負担から免れる手段として登記の移転を意図し、当時差し迫っていた代執行に先立って早期に登記移転を実現するための行動であるとみることができる。

以上を踏まえると、Xは、代執行やこれに伴う費用の負担から免れる手段として登記を移転することを意図して、本件売買契約を締結したと認められる。

次に、Aの認識等についてみると、調査嘱託の結果によれば、Aにおいて、本件土地建物の状況を全く把握することなく本件売買を行い、Xに頼まれたために名義を貸したにすぎないとの認識を有していたと認められる。このことは、Aが本件売買契約後、不動産取得税を納付しないまま、本件土地を利用することがないばかりか、本件土地建物を購入したことをYに伝えることもしていないことからも裏付けられるところである。

以上によれば、Xは、代執行やこれに伴う費用の負担から免れる手段として登記を移転することを意図して本件売買契約を締結し、他方において、Aにおいても、本件土地建物の状況を知らずに、これを利用する具体的な計画を検討することもなく、本件売買契約を締結し、契約締結後も本件土地建物を何ら利用せず、代執行に係る対応も、不動産取得税の納税もせず、Xに頼まれたために名義を貸したにすぎないとの認識を有していたところ、本件売買契約に係る代金が支払われたと認めるに足りないことも考えて併せると、本件売買契約については、Aについて本件土地建物の所有権を真に取得する効果意思がなく、Xも自らこれに対応する効果意思がないことを承知しながら、代執行費用の納付を免れるために売買の意思があるように仮装することを合意した旨の通謀虚偽表示であると推認することができ、これを覆すに足りる証拠はない。

(2)本件納付命令に係る違法の有無について
上記によれば、本件売買契約は通謀虚偽表示であって無効であり、本件の代執行及び本件納付命令は、いずれも本件建物の所有者であるXに対してされたこととなるから、本件納付命令には取り消すべき違法はない。

3.まとめ

管理不全の状態で放置され、倒壊や建物の一部が飛散する恐れのある空家が存在し続けることは近隣住民の安全を脅かすものであり、保安上著しく危機と判断された特定空家の所有者は、その責任として速やかに除去等を行う必要があるが、代執行が行われた場合に、本件のような仮装の売買をもって代執行に伴う費用の納付義務を免れることにはならないことの参考としてご紹介するものである。

本件事案において、本件売買契約が通謀虚偽表示に該当するかの争点に関し、本件裁判所は、取引に関する売主・買主それぞれの認識、買主の取引目的・取引後の使用状況、売買取引手続きの状況等をそれぞれ検討して判断しており、実務の参考になると思われる。

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