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賃貸のお困りQ&A

契約書面がない建物使用貸借において貸主および借主間に使用貸借期間の合意があったとして建物明渡請求が認められた事例

今回のケース

Xは、平成28年4月ころ、孫のY1とその夫Y2からの求めに応じ、Xが居住していた所有建物を貸すことを承諾し、平成29年3月ないし4月ころ、Yら(Y1·Y2のXの孫夫婦)に対し、本件建物を無償で貸し渡しました。なお、建物使用貸借の契約書はありませんでした。

Xは、本件使用貸借契約の際、Y2が大学院の課程を修了して勤務医に戻るまでとすることで合意していたとして、令和3年1月ころから、建物の明渡しをY1に求めました。

これに対し、Yらは、本件建物の明渡しについて明確な回答をせず居住を続けていたため、同年4月に本件建物において、X、Y1およびA(Xの長女、Y1の母親)で話合いを行いましたが、Aは「Xは、Y1に対し承諾をした上で本件建物に住まわせているのだから、法律的に出ていくことを求めることはできない」と述べたり、Y1とともに、Xに対して、4年間という使用貸借期間は作り話で嘘であることを認めるよう述べ、Xの発言はC(Xの次女)によって作り出されたものであるとし、話合いは合意に至らなかったため、Xは、令和4年1月27日、本件訴訟を提起しました。

判決

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を認容しました。

(1) 本件使用貸借契約が終了したかについて

X本人尋問の結果によれば、XとYらとの間では、本件使用貸借契約について、その期間をY2が大学院を修了するころまでとする旨を合意したことが認められる。そして、Y2は、令和3年3月、大学院を修了したことが認められるため、本件使用貸借契約は、期間満了によって終了したと認められる。これに対し、Yらは、本件使用貸借契約には期限は定められていなかった旨を主張し、Y1は、Xに対してずっと住みたいと伝えていた、4年間を期限とするという話や、Y2が大学院を修了したら出ていくという話はなかったなどと、これに沿う部分がある。

しかし、Xは、Y1から本件建物を貸してほしいと依頼された平成28年4月当時、すでに90歳近い年齢で、本件建物は、XおよびB(Xの亡夫)が夫婦の終の棲家として購入したものであって、Xは、平成15年ころにBが体調を崩したことをきっかけとしてBの入院先に近いA方に引っ越した後も、定期的に本件建物を訪れていただけでなく、平成27年9月以降は、本件建物で一人暮らしを始めており、孫であるY1の頼みであったとしても、特段の理由なく、本件建物をY1に無償で貸し付ける一方で、自分はA方に居住し、本件建物を離れて余生を過ごすという選択をしたというのは考えがたい(Xは、A方に引っ越した後も、本件建物に一部自己の荷物を残し、住民票の登録地を本件建物のままとし、本件建物の固定資産税、火災保険金および固定電話料金の支払いを継続しており、これらのことも、A方での生活は一時的なものであったことを推認させる事情である)。そして、Y1は、平成28年4月当時、夫であるY2が常勤の勤務医から大学院生になるため茨城県から東京都方面へ引っ越すこととなり、かつ、第2子を妊娠していた状況にあったので、家賃の負担を軽減するため、祖母であるXに対して本件建物に無償で居住させてほしいと依頼する動機があると言える。

さらに、Xは、Y2が大学院を修了する少し前のタイミングから、本件建物に住むY1を訪ねたり、手紙で、本件建物の明渡しを求める行動に出ており、手紙や、AおよびY1との会話の中でも、Ylから、Y2が大学院を修了するまでの間、4年か4年半か、本件建物を貸してほしいと頼まれた旨を述べている。以上を総合すると、Xが、現に居住する本件建物を出て、A方に居住するという負担を負ってまで、本件建物をYらに無償で貸し渡したのは、Y2が大学院を修了するころまでとする条件が付されていたからであると推認することができ、本件使用貸借契約には期限は定められていなかったとのY1の主張は採用することができず、その他に本認定を左右するに足りる証拠はない。

(2) Xによる本件建物の明渡請求が権利の濫用に当たるかについて

Yらは、本件主張はXの意思ではない等の主張をするが、本件訴訟がXの意思に基づくものであることはX本人尋問の結果から明らかであるほか、本件使用貸借契約が、期間満了によって終了した以上、XはYらに対して本件建物の明渡しを求めることができるのは当然であって、Xが独居することが危険かどうか、Ylの子どもらに負担が生じるかどうかは、本件使用貸借契約の終了に碁づく建物明渡請求権の発生の障害となる事情にはなり得ず失当であって、Yらの主張は、採用の余地がない(東京地裁 令和5年2月15日判決)。

第一審の判決を不服として、Yらは控訴したが、令和5年9月初旬にYらは本物件を退去することで和解が成立した。

解説

本件は、通常の賃貸借契約ではなく、賃料の支払いがない、いわゆる「使用貸借契約」に関する事案であり、親族間の事案で、契約書面がなく、明渡時期の解釈について紛争となりましたが、認定事実により、建物明渡請求が認められています。

使用貸借の取引に関わるケースはそれほど多くないと思われますが、他の取引との関係で、お客さまからご相談を受けるケースもあるかと思います。

使用貸借契約については、賃貸借契約に比べ容易に解約できると誤解している宅建事業者の方もいらっしゃるかもしれませんが、原則としては通常の賃貸借契約のように一定のハードルがありますので、お客さまへのアドバイスや、使用貸借の契約書を依頼された場合の注意喚起として紹介するものです。

使用貸借契約における解約要件については、民法第597条において明記されていますので、一度確認しておくことをおすすめします。

参考法令

●民法

  • 第593条
    (使用貸借)
    使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

  • 第597条
    (期間溝了等による使用貸借の終了)
    当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
    2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
    3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

  • 第598条
    (使用貸借の解除)
    貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
    2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
    3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

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