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「近隣の古い住宅地の一画を不動産会社が購入したようです。住民説明会があり、崖地の石積擁壁を改造し、階段の新設工事を行う、と聞きました。
工事事業者が崖地の工事に着手するとすぐ隣地所有者は崖下の二項道路の崖地寄り部分にフェンスとブロック塀を設置しました。
工事は中断しています。どうなっていますか?」
不動産会社Xは平成27年9月、本件土地(第一種中高層住居専用地域)を購入しました。建物は収去済みで、西側道路2mの通路状部分で2mの接道です。Xは本件土地と北側の本件私道(2項道路)が接道すればマンション建設が可能になることを予め調査しており、高さ6mの崖地の石積擁壁を改造し、幅3mの開口部を設け2項道路に通じる怪談の新設工事を行うと住民説明会を開きました。
その後、Xが北側擁壁の改造と階段新設の工事に着手するとすぐ、隣地所有者Yは崖の土砂が落下してY地に流入することを防ぐため等として、本件私道の本件土地寄り部分に長さ11.75m、高さ1.57mの黒色フェンスとその内側に高さ1.79mのブロック塀を設置しました。XはYに対し、東京地裁に本件土地所有権および人格権(通行権)に基づく工作物撤去等の仮処分命令を申立てましたが、地裁は平成28年3月4日に申し立てを却下。Xが東京高裁に即時抗告を申し立て、同年5月17日高裁は抗告を棄却しました。Xは最高裁に許可抗告の申立ておよび特別抗告を申立てたところ、最高裁は許可抗告を許可しない決定および同年9月7日の特別抗告棄却の決定でした。
Xは仮処分の本案訴訟として東京地裁に本件土地所有権および人格権(通行権)に基づく工作物撤去および工作物設置の不法行為に基づく損害賠償請求を提訴し、地裁は平成29年2月8日、請求をいづれも棄却。Xが控訴しましたが、高裁は同年7月13日に控訴を棄却。そこでXは特別区Zに対し行政事件訴訟法第37条の2の義務付けの訴えを提起しました(Yが補助参加)。
Xは「ZはYに対し工作物除去の是正命令を発せよ。Yが履行しないときはZは行政代執行法に従い工作物を撤去せよ」と請求しました。地裁は代執行を求める部分を却下しその余の請求を棄却。「2項道路に指定された道路に出入りし通行することが認められるのは指定の反射的利益に過ぎず、これに沿う土地の所有者であることから当然に権利として通行が認められるわけではない」「本件土地は本件私道に沿ってはいるが私道との間に崖地が存在し所有者らが本件私道を利用した実績もうかがわれず、本件私道は本件土地との関係で接道機能を果たす通路とは認められず本件土地は本件私道に接する敷地であるとの要件に欠ける」と判定しました。(東京地裁 平成29年10月20日判決 判例秘書L07230389)
人格権としての通行権(民法上の自由権)は理論的には定着していますが、実際に判例で妨害排除等に援用されるのは少数です。
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