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町内会の掲示板に落書きし、器物損壊罪で起訴された被告人の地裁判決は、「本件は管轄違い。」

【ご相談】

町内会の掲示板に落書きした被告人の裁判で、聞きなれない判決が出ました。その意味を教えてください。

◎著しく汚損して財物の効用を減損させる場合も損壊

事件の状況を説明します。
公訴事実は、「被告人は×年×月×日午前4時5分頃、×市の路上において町内会所有の掲示板に黒色油性ペンで落書きして汚損し(損害見積6万3720円)、もって他人の物を損壊した」(刑法261条器物損壊罪)というものでした。掲示板は縦約70cm、横約90cmであり、幅約3cmの黄色の枠の内側に緑色の難燃性シートが貼られた板(掲示部分)がはめ込まれ、幅約7.5cm、高さ約71.5cmの脚部2本で支える仕様です。
落書きは掲示部分の上方から約5cm、右方から1.5cmの位置に黒色油性ペンで上方から順に「8/6」「プラスガード」「バクハツ」と、行を変えて書かれ、大きさは上端から下端まで約15cmに及んでいました。

当時、地元神社の例大祭の打上げが8月6日にレストラン「プラスガード」で行われると決まり、被告人は関係者のインターネット上の記載からそれを知り、書いたもので、犯行現場付近で現行犯逮捕されました。

町内の塗装業者が連絡を受けて落書きを消すことになり、洗浄用シンナーを携行容器に入れて持参し、午後5時過ぎ頃シンナーを雑巾に染み込ませ落書きを擦り、数分で消し終えました。

点は以下の通りです。

  1. 「掲示板は他人の物に当たるか?」
    町内会は権利能力なき社団であり、その所有物は「他人の物」に当たる。
  2. 「落書きは損壊に当たるか?」
    損壊とは財物の効用を害する一切の行為で、物理的な損壊を伴わなくとも著しく汚損して財物の効用を減損させる場合も損壊に当たる。しかし、本件落書きは一時間後に消されたことに照らして物理的損害とはいえない。また、洗浄用シンナーは誰でも量販店で安価に入手できるから原状回復に相当の困難を生じさせるものとは認められない。
    損害見積額6万円余は取替えの費用であるが取替えの必要性は明らかでなく、本件落書きは掲示板の効用を減損させたと認められないから掲示板を汚損したとは認められない。
    結局裁判所の認定した事実は、「本件落書きは掲示板の美観を損なうものであり軽犯罪法1条33号の標示物を汚すに該当する」でした。

公訴事実については証明がなく、認定事実は軽犯罪法1条33号に該当し拘留または科料に当たる罪で簡易裁判所の専属管轄に属し地方裁判所の管轄に属さないから、掲示訴訟法329条本文により管轄違いを言渡した訳です。学説では、「地方裁判所に起訴された器物損壊罪と、簡易裁判所の専属管轄に属する軽犯罪法違反の罪のように大小包摂関係の場合は縮小された事実(軽犯罪法)が黙示的・予備的に主張されていると判断し、その事実を認定して管轄違いの言渡しをすべきである」というのが有力説です。

今回の判決はこの学説に沿う判断と解され、少なくとも無罪とは異なります(横浜地裁 平成30年6月26日判決 判例秘書 L07351203)。

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