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賃貸のお困りQ&A

不動産の共有者が所在不明になったとき

今回のご相談

当社でお付き合いのあるAさんは、親の相続でBさん、Cさんと共に土地付き建物を取得し、各3分の1の割合で共有しています。

建物は空き家であり、そろそろ外壁の大規模修繕を行いたいと考えているほか、将来的に第三者への売却も検討しています。しかし、Cさんが所在不明になっており、連絡をとることができません。

AさんとBさんだけで大規模修繕や売却を行うことはできるのでしょうか。

回答

共有物の物理的な変化を伴う大規模修繕や共有物の売却をするためには、現行民法上、共有者全員の同意が必要とされています。そのため、Cさんの同意を得られない場合にこれらを行うことはできません。しかし、令和3年法律第24号による改正後の民法(令和5年4月1日施行。以下「改正民法」といいます)のもとであれば、Cさんが所在不明であっても大規模修繕や売却を行うことができる場合があります。

解説

1.所有者不明土地に関する法改正等

昨今、所有者不明土地(不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても所在不明で連絡がつかない土地)の対応が問題となっています。そこで、所有者不明土地・建物の発生を防止するとともに、これらの利活用を促進するため、令和3年4月21日に次の法律の制改定行われました(令和3年法律第24号、同第25号)。

  1. ① 不動産登記法の改正(相続登記の義務化等)
  2. ② 相続土地国庫帰属法の制定(相続した土地の国庫帰属を申請する制度の設置)
  3. ③ 民法の改正(共有物の円滑利用等)

2.改正民法における共有制度

改正民法では、所有者不明土地・建物をはじめ不動産の利活用を促進するため、さまざまな改正が行われました。主に共有物の利用・処分に関する改正事項を取り扱います。

(1) 共有物の「変更」の考え方

共有物を取り扱うにあたっては、共有物への影響が大きい行為ほど多くの共有者の同意を得なければなりません。具体的には、次の3つの区分があります。

① 変更

共有物を物理的に改変する行為(増改築等)、共有物を処分する行為(売却、抵当権設定等)→共有者全員の同意が必要(改正民法251条<現行民法251条>)

② 管理

共有物の変更を伴わない利用、改良等(設備の改良、賃貸借の解除等)→共有者の持分価格の過半数の同意が必要(改正民法252条1項<現行民法252条本文>)

③ 保存行為

共有物の現状を維持する行為(補修、公租公課の支払等)→共有者がそれぞれ単独で行うことができる(改正民法252条5項<現行民法252条ただし書>)

このうち、「変更」について、改正民法では「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」であれば、共有者全員の同意を得る必要がないと定めているため、共有者の持分価格の過半数の同意をもって行うことができます。「その形状又は効用の著しい変更を伴わない」変更の例として、法務省は、砂利道のアスファルト舗装、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事を挙げています。

(2)共有者の一部に所在不明者がいる場合

前述のとおり、共有物の変更または管理を行うためには一定の共有者の同意を得る必要があります。他方で、共有者の一部が所在不明となっており、同意を得られない場合があります。改正民法では、こうした場合に次の制度を新設しています。

① 所在不明共有者の同意に関する裁判手続き

共有者は、裁判所の決定を得ることにより、所在不明共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えること(あるいは、所在不明共有者以外の共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決すること)ができます(改正民法251条2項、252条2項)。

② 所在不明共有者の持分の取得制度

共有者は、裁判所の決定を得ることにより、所在不明共有者の持分に相当する金銭を供託した上で、その持分を取得することができます(改正民法262条の2)。

③ 所在不明共有者の持分の譲渡制度

共有者は、裁判所の決定を得ることにより、所在不明共有者以外の全員が特定の者に持分全部を譲渡することを停止条件として、所在不明共有者の持分をその特定の者に譲渡することができます(民法262条の3)

(3)その他の共有に関する改正事項

ここまでは主に所在不明共有者がいる場合でも円滑に共有物を利活用するための方法をご紹介しましたが、この他にも共有に関してさまざまな改正が行われています。一例を挙げると次のとおりです。

  1. ① 共有物の管理は共有者の持分価格を過半数の同意で行うことができますが、共有物を使用している共有者が特別の影響を受ける場合には、その承諾を得なければなりません(改正民法252条3項)。
  2. ② 共有者は、持分価格の過半数の同意により、共有物の管理を選定することができるようになります(民法252条の2)。

その他、本稿では紹介しきれない改正事項もありますので、法務省のホームページ等から情報収集を行うようにしましょう。

3.ご相談のケースについて

外壁の大規模修繕は、一般に共有物の物理的な変化を伴う行為にあたるため、現行民法上は共有物の「変更」として共有者全員の同意を得なければならないと考えられます。一方、改正民法では、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」に該当すれば、共有者の持分価格の過半数の同意、すなわちAさんとBさんの同意(合計3分の2の同意)で行うことができます。

次に、共有物の売却について、現行民法では共有物の「変更」に等しいため共有者全員の同意を得なければなりません。改正民法でもこの点は変わりませんが、Aさんおよび(又は)BさんがCさんの持分を取得する制度や、AさんおよびBさんが持分全部を(Cさんの持分も併せて)特定の者へ譲渡する制度を利用することによって、第三者への共有物の売却を実現することができるようになります。

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