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賃貸のお困りQ&A

相続時に代償分割の方法で取得した不動産を売却する際に、支払った代償金は税務上取得費として認められるか

今回のご相談

以前、当社とお付合いのあったお客さま(Xさん)から、ご相談がありました。

不動産を所有していた親御さんが亡くなり、他の共同相続人5名(Yさんら)の方とともに、その不動産を相続されたそうです。

Yさんらとの遺産分割協議の結果、Xさんが不動産を単独取得する代わりに、Yさんらに対し、代償金として合計300万円を支払うことになったとのこと。その際、Xさんは手元に資金がなかったため、銀行からの借入金500万円の一部を代償金の支払いに充てたそうです。

その後、Xさんは不動産の一部を代金1,150万円で売却することができたので、譲渡所得の申告をしなければならなくなりました。

不動産の譲渡所得税の申告に当たって、Yさんらに支払った代償金や銀行から借り入れた際の利息を取得費として算入し、税金の申告をしようと考えているそうですが、この方法は認められるのでしょうか。

回答

ご相談のケースでは、代償分割により不動産を相続開始時にさかのぼり、単独で所有したことになりますので、XさんがYさんらに支払った代償金や銀行に支払った際の利息について、譲渡所得の取得費として算入することはできません。

解説

1. 譲渡所得税と取得費について

譲渡所得税は、不動産などの資産を売却した場合に負担する必要がある税金ですが、対象となる譲渡所得の金額は、①土地や建物を売却した金額から②取得費と③譲渡費用(売却する際の不動産仲介手数料や売主負担の印紙税など)を差し引いて計算されることになります(所得税法第33条、第38条)。

ここでの取得費とは、「直接必要な経費」を意味するものと考えられており、土地の場合であれば、土地を買い入れたときの購入代金や購入手数料などがこれに当たります。

もし仮に、Xさんに共同相続人がおらず、一人で相続したという場合であれば、1150万円(①)から、取得費である不動産を購入した時の金額(②)と譲渡費用(③)を差し引いた金額が譲渡所得となります。

本事例では、Xさんが不動産の全部を取得するために、Yさんら他の相続人に代償金として、300万円を支払っていることから、不動産を購入した時の金額のほかに、代償金300万円と代償金を支払うために借り入れた金融機関に対して支払った利息が取得費として、認められるのかということが問題となります。

2. 遺産分割の方法

複数の相続人で不動産の遺産分割をする場合には、現物を分割する「現物分割」、相続人の一人または数人が不動産を取得する代わりに代償金を支払う「代償分割」、不動産を未分割の状態のまま売却して換金後、売却代金を相続人間で分配する「換価分割」の3つの方法が考えられます。

代償分割は、不動産に居住している相続人がいる場合や、事業用資産や農地など、特定の相続人に取得させる必要がある場合によく用いられる方法ですが、不動産しか相続財産がない場合には、相続人間の公平の観点から、不動産を取得する相続人が、不動産を取得しない相続人に対し、多額の代償金を支払わなければならなくなることも考えられます。

代償分割を行う場合には、他の相続人から不動産の持分を売買で取得するのと同様の状況なので、代償金を支払う相続人にとっては、代償金の支払いが取得費に当たるように感じられます。

一方で、相続による資産の移転の場合、譲渡による資産の増加益が具体的に顕在化しないため、相続により資産を取得した者が当該資産を譲渡した場合には、その取得者が取得前から引き続き所有していたものとして、譲渡所得の金額を計算すると定められており(所得税法第60条第1項l号)、被相続人の保有期間中の増加益は財産を相続した相続人に引き継がれます。

また、遺産共有は、共有ではあるものの暫定的観念的なものと考えられており、遺産分割は、相続開始のときに遡って効力(これを「遡及効」といいます)が生じることとなります(民法第909条)。

3. 参考となる裁判例等

相談事例と似たような事例をご紹介します。

遺産分割の結果、代償金の支払いにより単独で不動産を取得した相続人が、代償金および借入金利息を取得費として、譲渡所得税の申告を行ったケースです。税務署長は、代償金および借入金利息の取得費の算入を認めず、更正処分および過少申告加算税賦課を決定しました。

原告は税務署長の更正処分等の取り消しを求めて、訴訟提起しましたが、下級審(地裁および高裁)では認められず、上告審(最高裁)まで争いました。しかし最高裁は、「相続財産は、共同相続人間で遺産分割協議がされるまでの間は全相続人の共有に属するが、いったん遺産分割協議がされると遺産分割の効果は相続開始の時にさかのぼり、その時点で遺産を取得したことになる。従って、相続人の一人が遺産分割協議に従い他の相続人に対し代償としての金銭を交付して遺産全部を自己の所有にした場合は、結局、同人が右遺産を相続開始の時に単独相続したことになるので、共有の遺産につき他の相続人である共有者からその共有持分の譲渡を受けてこれを取得したことになるものではない。そうすると、本件不動産は、上告人が所得税法第60条第1項l号の『相続』によって取得した財産に該当するというべきである。従って、上告人がその後にこれを他に売却したときの譲渡所得の計算に当たっては、相続前から引き続き所有していたものとして取得費を考えることになるから、上告人が代償として他の相続人に交付した金銭およびその交付のため銀行から借入れた借入金の利息相当額を右相続財産の取得費に算入することはできない。」と判示しました(最高裁平成6年9月13日判決、判例時報1513号97頁)。

4. 最後に

以上の通り、不動産を取得する相続人が支払う代償金や代償金を支払うために銀行から借り入れた借入金の利息は、取得費に算入することができません。そのため、不動産を取得する相続人としては、そのことを考慮して、遺産分割に臨むことが重要となります。

対策としては、遺産分割に際し、事前に譲渡所得税の概算額を算出し考慮してもらうことなどが考えられます。しかし、不動産を将来いくらで売却できるのか不明であり、また、そもそも相続人が不動産を売却するとも限らないため、相続人間に不公平が生じないようにすることは、困難なところです。

いずれにしましても、亡くなられた被相続人の方の遺産に不動産が存在し、不動産の取得を希望する複数の相続人がいる場合には、多額の代償金を支払っても将来の取得費にはできないということを十分理解した上で、遺産分割を行う必要があります。

用語解説

●「代償分割」

共同で相続した遺産を分割する方法のひとつで、協議によって遺産を特定の者が取得し、他の相続人に対しては代償金を支払う方法を言う。

相続した不動産などは、物理的に分割することが困難不利益で、共有物にすると管理に支障が生じる恐れがあることなどから、代償分割によって相続されることが多い。

なお、共同相続遺産を分割する主な方法には、代償分割のほか、現物のままでそれぞれの遺産ごとに取得者を決める方法(現物分割)、遺産を売却してその収益を分け合う方法(換価分割)がある。

不動産用語集R.E.wordsより一部抜粋

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