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市民百数十人が火葬場用地買収の件で市長と売主に損害賠償を請求し、一部勝訴した事案があったと聞きました。どのような内容か教えてください
N市の火葬場は大正5年に開設。老朽化し炉数も少ないため、市は昭和45年頃から用地探しを開始しました。複数の候補地が検討されましたが、周辺住民の反対等で実現しませんでした。
本件土地は平成20年頃より前市長が候補地として検討し、翌年7月就任の現市長Aが引き継ぎ。平成27年7月30日、市と地権者Bらは覚書を作成し、鑑定評価等に基づく適切な価格で購入すべく最大限の努力を約定(Bらは父親が昭和61年8月競落の価格1943円/m2を上回る価格を主張しました)。平成28年12月、環境影響評価で当地の産廃物想定埋設量が9000m2、撤去費用は1億円程度と判明。同年12月9日、副市長が委員会で用地費の予算を「枠で3億円」と答弁(評価額4500円/m2と見込み)しました。
翌年5月23日に新斎苑の土地計画決定(面積4.9ha)。9月、市が不動産鑑定会社WとDに追加土地を含む土地につき、産廃物の存在を価格形成要因から除外した鑑定評価を依頼。10月末、両社が鑑定評価書を提出したところ、Wは482円/m2、Dは445円/m2となり、当初想定額を大きく下回る結果となりました。
同年11月7日、市はB1に予定地に追加買収地を加えて総額2700万円(463円/m2。鑑定額平均)で購入を申し出ましたが、B1は「予算は3億円あるはずである」と拒否しました。市は産廃処理費(1億4265万円余)を負担し、かつ競落価格の現在評価額1億2800万円を呈示しましたがB1は拒否。市は(鑑定では必要性や緊急性から高額の可能性があると否定された)公共事業の用地買収のIダム事例をあえて鑑定の参考とする基礎事例に含めて算定し、同11月19日、追加買収地を含む本件土地を1億6722万2252円で売買する合意が成立。平成30年2月15日売買契約が成立し、3月23日開催と議会の同意で発効し所有権移転登記がなされ、4月10日には代金が完済されました。
一方3月2日、市民109人が市監査委員に住民監査請求を提出。請求内容は市に対する本件事業の一切の行為禁止の勧告。4月26日、同委員は請求を棄却しました。5月24日、市民ら(原告)がN地裁に市の執行機関として市長(被告)を提訴し、売買契約は市長の裁量権逸脱の違法性があり、不法行為の損害賠償として代金相当額(1億6772万余円)と利息をN(市長)が、B1B2と連帯して支払うよう請求せよと主張しました。
地裁は「産廃物の存在を価格形成要因から除外した限度額の3倍以上である代金額は余りにも高額に過ぎる」「土地収用法該当事業であるから収用まで見越した計画を検討し交渉すべきであった」「計画のない用地を追加購入し産廃処理費まで負担し鑑定が拒否したIダムをあえて基礎事例としたのはBらの要望価格に近付けるたまであった」と不法行為の成立を認定し、原告請求額の賠償請求を認容しました。Bらについては価格にこだわることは非難されるべきものではないと不法行為の成立を否定し賠償請求を棄却。契約無効の主張について市長の裁量権を著しく逸脱し濫用したとまでは認め難いと否定し、産廃処理費支出差止請求を棄却しました(奈良地裁 令和2年7月21日判決 判例時報2488・2499合併号)。
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