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賃貸のお困りQ&A

購入したマンションの床下等に野鳥の死骸。健康被害を受けた買主が売主に対し瑕疵担保責任を追及

ケース

平成30年5月2日、個人である買主Xは、法人である売主Yから、Yが社宅としていた15階建てマンションの一室(本件建物)を売買契約による購入しました。

Xは、同契約締結後、本件建物の内見をした際、全身が発疹し、病院にてダニアレルギー症と診断されました。同年6月24日、Xらは本件建物での生活を始めたものの、当初から悪臭を感じたため、リフォーム工事事業者に原因究明を依頼。数回に渡り、本件建物内の確認作業を実施しました。

その結果、床下、天井裏および浴室部分に設置されたユニットバス裏のスペースを含む範囲の空間(本件空間)に大量の野鳥(ムクドリ)の死骸(合計19羽)、そして糞および巣跡等(死骸等)が発見されたため、Xは、死骸等の撤去、清掃および消臭等の作業(死骸等撤去作業)を行いました。なお、これらの野鳥による侵入経路は、本件空間とバルコニーとの間に通されたエアコン配管の穴と推測されました。

XはYに対し、本件空間は本件建物内に立ち入っても見ることのできない箇所であり、本件死骸等は、取引上一般に要求される注意をもってしても容易に発見できなかった「隠れたる瑕疵」に当たるとして、損害額471万円余(改修工事費用、宿泊費、死骸等撤去作業費用、慰謝料)を求める訴訟を提起しました。

これに対し、Yは本件建物に死骸等が存することが瑕疵には当たらない等と主張しました。

解説

裁判所は、次のように判示し、XのYに対する請求の一部を認容しました。

(1) 瑕疵の有無について

一般に、動物の死骸等を放置すれば、腐敗、悪臭、ダニや雑菌等が繁殖し、居住者に健康被害を生じさせる恐れがあると考えられる。本件死骸等は、発生する悪臭や不衛生さにより、本件建物の居住者に健康被害を生じさせる危険性のあるものであり、本件建物に死骸等が存在したことは、居住用の建物として通常備えるべき品質・性能を欠いており、本件建物の瑕疵に当たると認められる。

この点に関し、Yは、死骸等が存在したとしても、一般人は本件建物において十分に健全な生活を送ることができると主張する。

しかしながら、死骸等の量に加え、相当と悪臭を発していたことが認められ、また、Xは、死骸等の影響によりダニアレルギー症を発症したことが推認できることから、Yの主張を採用することはできない。

(2) 損害の有無およびその額について

本件空間からは多数のムクドリの死骸や巣、糞等が発見されており、複数のムクドリが行き来していたと言える。

Yは、改修工事費用について、野鳥の巣跡の清掃と臭いの除去であれば、20万程度の費用で済むと主張するが、本件建物の居宅としての品質を確保するためには、清掃のみならず消毒が必要であり、Yの主張を裏付ける客観的かつ的確な証拠は見当たらないため、採用することはできない。よって、民事調停委員の意見も踏まえ、改修工事費用は143万円と認められる。

なお、この予定工期は20日程度と考えられるが、その間、浴室、洗面室およびその周辺の利用に支障が生じるものの、本件建物全体の利用ができなくなる工事ではないから、同期間中の宿泊費を損害と認めることはできない。

死骸等撤去作業費用は、死骸等による悪臭等を除去するために必要かつ相当な作業であると認められ、その費用は18万円を相当と認められる。

Xは、死骸等の影響によりダニアレルギー症を発症し、通院治療を続けており、これにより多大な精神的苦痛を受けたと認められる。そして、Yの対応も含む本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、Xの慰謝料の額は、30万円が相当と認められる。

以上により、XのYに対する請求は、計191万円(改修工事費用143万円、死骸等撤去作業費用18万円、慰謝料30万円)の限度で理由がある(東京地裁 令和3年9月30日判決)。

総評

本事案は、野鳥の営巣や大量の死骸、糞、悪臭等により生活環境や健康の被害を受けた買主が売主の瑕疵担保責任を追及し、その主張が認められた事例です。

なお、野鳥の侵入は、かつてマンション全体で大規模修繕を実施した際、エアコン配管の穴を塞ぐ蓋の閉め忘れが原因でした。

本件のようなケースは、どのような物件でも起こり得るものでるから、購入者や媒介事業者においては、トラブル回避の観点からも、物件の内覧時における確認にあたり、悪臭の有無等匂いを含めたさまざまな側面から、十分な注意を払うことが必要であると思われます。

また、害獣駆除にあたっては、鳥獣保護法の存在も念頭に置きながら、適切な対処法を実施しなければなりません。そのためにも、まずは行政(市区町村や保健所等)に連絡し、よく相談することが大切です。

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