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リフォーム転売したマンションの地下室に、引渡し後まもなく発生した漏水について、売主事業者に瑕疵担保責任を認めた事例

今回のケース

平成29年4月1日、宅建事業者Y1は、分譲マンションの一室である本件建物(1階・居室:約68m2、地下室1階・地下室:約12m2、築20年)について、所有者Aより購入する売買契約を、仲介事業者Y2の仲介により締結しました(Aの告知書には「地下室に漏水有→修繕済」と記載)。

同年5月13日、買主Xは、Y2の仲介により、Y1がAより購入した本件建物をリフォームして引き渡す条件で、売買金額4,980万円とする売買契約を締結しました(Y1の告知書には「地下室に漏水有→修繕済」と記載)。

同年5月29日、Y1はAより本件建物の引渡しを受け、Xと打合せた内容にてリフォーム工事を行い、同年6月30日に本件建物をXに引き渡しました。同年7月末、地下室で漏水を発見したXは、その旨をY2とマンション管理会社に連絡。同年9月、管理会社が漏水調査をしましたが、原因究明には至りませんでした。

同年10月に、台風による本件建物および他のマンション1階住戸の地下室に浸水が発生したため、平成30年4月に、管理組合による各地下室の復旧工事が行われました(令和元年10月には、地下ピット湧水対策工事が完了しましたが、本件建物地下室の漏水は止まりませんでした)。平成30年9月、XはY1に対し、漏水の瑕疵を理由に契約解除の通知書を送付しました。

令和元年6月、XはY1に対し、漏水の瑕疵を理由として、主位的に契約の解除を、予備的に1,280万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。また、令和3年7月、Y2に対し、媒介契約上の説明義務違反を理由として1,280万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。

解説

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を一部認容しました。

(1) 隠れた瑕疵の存否

本件建物の地下室には、床と壁の境目から水が染み出して水たまりができたり、水滴が生じたりする状況が認められ、その原因は、本件マンションの地下ピットの湧水槽にたまった水が本件建物の地下室ないしその隙間に浸透し、同地下室内に染み出したものと強く推認される。

本件建物の地下室内にて水が染み出して水たまりができるような状況は、本件建物以外のマンション各室では生じていないことに鑑みると、本件建物が新築から約20年間経過した中古物件であるとしても、マンションが最低限有すべき品質・性能であると認めることはできず、「瑕疵」に当たると認められる。

(2) 契約解除の可否

本件建物については、その地下室が、漏水やカビの発生等により使用できないとしても、1階の居住スペースは使用することができること、地下室の漏水が修繕不可能とまでは認めることができないことに鑑みると、本件売買契約の締結目的を達することができないことまでは認められないことから、Xは瑕疵担保責任に基づき解除権を行使することはできないと認められる。

(3) 瑕疵によりXが被った損害額

X提出の不動産価格査定書による算定価格について、補正および瑕疵の存在による下落、その他諸事情を考慮すると、瑕疵が存在することによる本件建物の価格は、3510万円程度と認めるのが相当であり、本件売買金額との差額1470万円程度が、瑕疵存在することによりXが被った損害額であると認められる。

従って、Y1は瑕疵担保責任により、Xが主張する1280万円およびその遅延損害金を支払う義務があるものと認められる。

(4) Y2の開設義務違反の有無

Y2は、本件建物の地下室の漏水に関して、Aに聴取を行い「本件建物の地下室にだいぶ前に漏水があったが、その際修繕したので、その後現在まで漏水はしていない」旨の回答を、また、管理会社より「かなり前に駐車場のピット側から漏水したことがあり、修繕されたらしいがそのときの記録はなく、管理会社が有している記録で確認できる範囲では本件建物での漏水やその修繕の記録はない」旨の回答を得たことが認められ、Y2は、漏水に関して、宅建事業者としての業務上の注意をもって調査を行ったと認めることができる。

しかし、調査結果については、Xに対して、すでに修繕されたと説明するにとどまり、漏水およびその修繕に関する記録がなく、その記録の確認をしていないことは伝えていないことから、調査の結果を正確に報告、説明する義務を履行したと認めることができない。

Y2が説明しなかった情報は、Xが本件売買契約締結の判断に当たって重要な事項であるが、当該情報によって、Xが本件売買契約の締結を取り止めたと断定することはできないことから、XのY2に対する請求については50万円程度を認めるのが相当である(東京地裁 令和5年2月17日判決)。

総評

本件事業は控訴審において、Y1が750万円、Y2が50万円をXに支払うことにより和解をしています。

宅建事業者の買取・リフォーム転売による中古住宅の流通活性化が期待されていますが、最近の裁判例において、転売した住宅に瑕疵が発見され、売主事業者が瑕疵担保責任を負う事案の増加が見られます。

その多くは、売主事業者による販売前の建物調査等が十分に行われていれば、あるいは、適切なリフォーム工事が行われていれば、トラブル回避が可能であったと思われるものですが、中には、外観目視調査では分からない(インスペクションが行われていたとしても把握できなかったと思われる)、壁の内側等の建物の主要構造部に重大な瑕疵が存していたため、売主事業者が多額の担保責任に基づく賠償金を支払うことになった事案も少なからず見られます。

リフォーム転売を行う売主事業者においては、建物の外観調査では判明しない主要構造部に重大な瑕疵が存しているリスクがあることを理解しておく必要があります。そして万一、そのリスクが発現した場合、買主の損害額(=売主事業者の賠償責任額)が多額になる可能性があることから、当該リスクを一定程度回避するものとして、建物検査を行い既存住宅売買瑕疵保険を付保して販売することが推奨されます。

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