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売買契約に隠れた瑕疵があり売主に賠償請求をする場合、何をどこまで請求できるのか教えてください
実務では判例が教科書です。最近の判例で学習しましょう。
昭和9年12月、機械製造販売の株式会社Yは、H空港至近の10万m2余の土地(本件土地)を購入。海底土砂で埋め立て、昭和13年頃から多数の工場(屋根にスレート材使用)や事務所を建設しました。昭和20年4月の空襲で建物が破壊され、戦後に再建(スレート材使用)。昭和35年以降は逐次建物の解体工事を進めました。
平成19年9月、Yは本件土地の売却を決め入札手続きを公表。同年10月、貨物を運送する事業を営む買主Xが入札書(使用目的は物流ターミナルおよび公園の建設)を提出しました。同年12月25日、XY間に本件土地と建物(当時南東部にYが建設中、地上12階地下1階、延べ面積2万9000m2余)を代金848億円(土地785億円、建物63億円)で売買する契約が成立。再建建物を撤去後の平成22年12月、XはK建設と物流ターミナル等建設請負契約を締結しました。
平成23年1月6日、K社の社員が本件土地北西側境界付近と東側堤防横付近の地表に数cm~数十cmのスレート片の散在を発見。Kは本件土地の東西南北4カ所からスレート片サンプルを採取し、指定調査機関に石綿含有状況調査を依頼したところ、同月10日、クリソタイル(石綿)を重量比で4.5~5.3%含有との報告書が提出されました。
全土の表層部分の混入調査では70%の区画で混入を確認。土壌中の混入も確認され、Kは新築工事を中断しました。同年4月12日、XはY宛て通知書で本件スレート材は法の規制値を超える石綿含有産業廃棄物であり、その混入は土地の瑕疵に当たると通告。YはKに代金46億2525万円で同片混入土壌を法規どおり撤去して処分する作業を発注。搬出済みの残土からも同片の混入が判明しその他数量の修正で撤去処分代金は63億3171万円に増額されました。
平成24年4月、XはYを提訴し、同片の混入により契約条項の瑕疵除去義務不履行または瑕疵担保責任の損害賠償として同片混入の土壌の撤去と処分費用、工事遅延11ヵ月の追加費用、賃貸借2件の逸失利益と弁護士費用合計85億509万円余を請求しました。
東京地裁は「本件土地は同片の散乱混入で物流ターミナルと公園建設の目的に沿う性状を有しているとは言えず瑕疵がある」と認め、撤去作業のうち原設計値の掘削深度より深く掘削した部分は因果関係がと除外し56億1812万余の支払いを認容。東京高裁は地下水槽を撤去し埋め戻した土壌の撤去費用を加えて59億5278万円余を認容。平成22年6月1日最高裁3小判決を引用し、瑕疵を当事者間の合意に照らすときは当時の取引観念を考慮して判断すべきであると付言しました。上告棄却、受理申立ては不受理でした(東京地裁 平成28年4月28日判決、東京高裁 平成30年6月28日判決、判例時報2405号)。
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