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知人は家庭裁判所に相続放棄を申述して却下され、高等裁判所に抗告してようやく受理されました。却下か受理かを決める基準は何ですか?
熟慮期間の起算点をどこで捉えるかの問題です。実例で検証しましょう。
BCDの母親の妹でこれまで70年間まったく交流のなかったAについて、平成31年2月下旬、X市長からBCD宛てに、Aが平成29年に死亡したが亡夫名義の不動産があり固定資産税関係書類の受取りについての相続人代表者の選任を要請する文書が届きました。DがX市に照会して物件の所在地は判明しましたが、価値等は不明です。高齢のBら(86~74歳)は面倒な事態を避けるため相続の放棄を決めましたが、放棄は代表者の申述で足りるものと誤解し、令和1年5月18日頃、Dの代筆で申述人Cの相続放棄申述書(申立印紙三人分添付)を前橋家裁O支部に郵送しました。
同年6月上旬頃、X市役所からの照会にDが代表者Cで放棄の申述を済ませたと答えたところ、放棄は各人が行う必要があること、平成30年度の固定資産税2万9000円が未納であり、今後の資産税は代表者に支払義務が生じる等を説明され、改めて6月19日にDが、7月16日にBが、それぞれ同支部に相続放棄を申述しました。
同支部は同年9月10日付けでBに、10月3日付けでDに、「申述人の相続放棄の申述を棄却する」と審判しました。「熟慮期間は相続人が相続開始の原因事実および自己が相続人である事を知った時から起算すべきであり3カ月以内に放棄をしなかったのが相続財産は存在しないと信じたためであり、そう信じるにつき相当な理由がある場合には財産の全部または一部の存在を認識しまたは認識すべき時から起算するが(最高2小 昭和59年4月27日判決)、本件は2月下旬にX市長から資産税書類受領代表者の選任要請文書を受領したから同書により相続財産の存在を認識していたと認められ、熟慮期間はその頃から起算するのが相当である」「代表者が放棄すれば足りると誤解したとしても熟慮期間の起算点を後にする理由にはならない」と熟慮期間経過による却下を判示しました。
BDが即時抗告。東京高裁は、「原審判をいずれも取り消す。抗告人らの相続放棄の各申述をいずれも受理する」(令和1年11月25日決定)をし、「Cが代表者として放棄したと誤解したことは抗告人が高齢であり法律の専門家でもないことからすると強い非難に値するとまでは言えない。本件は固定資産税滞納額を具体的に説明された6月上旬頃から熟慮期間が進行を開始すると解するのが相当である。」「相続放棄は受理されても放棄の実体要件の具備を確定させるものではないが、却下の場合は申述を欠き相続放棄したことが主張できなくなることに鑑みれば家庭裁判所は却下すべきことが明らかな場合を除き相続放棄の申述を受理するのが相当である」と付言しました(東京高裁 令和1年1月11日決定 判例時報2450・2451合併号)。
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