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家は取り壊したほうが得か、残した方が得か?空地と空き家の固定資産税を比較する

「空き地にすると、固定資産税が高くなる」と思っている人が多いようですが、すべてのケースで固定資産税が高くなるのでしょうか。
今回は、空き地にした場合の固定資産税について解説しましょう。
※いずれの試算もシミュレーションで、実際には異なる金額になる場合もあります。

固定資産税と都市計画税

空き家問題「固定資産税は土地だけでなく、家にもかかるのだから、さっさと壊して更地にしたほうがいいのではないか」という人がいます。一方で、「家を取り壊して更地にすると固定資産税が6倍にも増えてしまう」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。今回は空き地や空き家にかかる税金についてお話ししましょう。
そもそも土地および建物にかかる税金として、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税は家を所有するとどうしても付いてくる税金としてほとんどの人が知っていると思いますが、都市計画税ってなんなのでしょうか。
都市計画税は、主に「公園・道路・下水道などの都市計画事業や土地区画整理事業に充てられる」ことを目的とし、地域の住人が円滑に暮らせるようにするために「受益者負担」の考え方で使われる税金です(市街化調整区域など一部の地域では都市計画税はかからない場合があります)。
固定資産税の税率は全国一律1.4%と決めつけられていますが、都市計画税は市町村(東京都は区)が0.3%を上限に独自に決めることができます。ただ実際には、東京23区、大阪市、名古屋市、福岡市、札幌市など、大都市を中心に上限の0.3%に設定しているところが多いようです。

◎固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
◎都市計画税=固定資産税評価額×上限0.3%

これらの税金は、所有している土地と建物それぞれにかかります。いま居住している土地・家屋だけでなく、賃貸アパートを持っていれば土地と建物、貸し駐車場を持っていれば土地、また何も使用していない土地にも税金はかかります。
では、納める固定資産税と都市計画税の基となる「固定資産税評価額」はどうやって決められているのでしょう?実は、各市町村(東京都23区は各区)の自治体担当者が一つずつ確認していて、「固定資産評価基準」に基づいて決めています。具体的には、所有する土地の時価の約70%、家屋は新築時で、請負工事額の50~60%が目安ですが、家屋の場合は築年数を重ねると評価額は下がっていきます。

家が建っていれば土地の税金は安くなる

もし、いま福岡市に住んでいて、土地と家の固定資産税評価額がそれぞれ2,000万円(敷地は180m2)と500万円のとき、先ほどの固定資産税と都市計画税(合わせて1.7%の計算式に当てはめると、

土地にかかる税額 = 2,000万円 × 1.7% = 34万円
家にかかる税額 = 500万円 × 1.7% = 8.5万年
合計 42.5万円

「高い!そんなに払ええないよ!?」という声が聞こえてきそうですが、安心してください。居住用の住宅の場合は家が建っていることを条件に「住宅用地の特例」があり、土地の固定資産税評価額を200m2なで(小規模住宅地用)は1/6、それ以上の敷地部分(一般住宅用地)は1/3に低く評価してくれるのです。
また都市計画税の場合は200m2までは1/3、それ以上は2/3の評価額になります(図表1)。
この「住宅用地の特例」を先ほどの例に当てはめると、図表2のように減額されます。つまり家が建っていれば固定資産税と都市計画税は15万円ほどですむということです。

図表1 住宅用地の課税標準の特例

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住戸1戸につき
200m2まで
課税標準
×1/6
課税標準
×1/3
一般住宅用地 住戸1戸につき
200m2を超えた部分
課税標準
×1/3
課税標準
×2/3

図表2 「住宅用地の特例」を適用した場合の税金

土地180m2 … 固定資産税評価額2,000万円
家 … 固定資産税評価額500万円

【土地にかかる固定資産税と都市計画税の金額】
2,000万円 × 1/6 × 1.4% + 2,000万円 × 1/3 × 0.3% = 約6.66万円
【家にかかる固定資産税と都市計画税の金額】
500万円 × 1.4% + 500万円 × 0.3% = 8.5万円

合計 約15.16万円

更地にしたときの税金は?

では、家を取り壊して更地にすると、固定資産税と都市計画税はどのくらいになるのでしょう。
更地にした場合、その土地はもはや住宅用地ではなくなり、「住宅用地の特例」の適用はなくなります。そして、現在の固定資産税の仕組みでは、更地は商業地と同じように「非住宅用地」として評価されることになります。
先ほどの例で計算してみましょう。

【土地にかかる固定資産税と都市計画税の金額】
2,000万円 × 1.4% + 2,000万円 × 0.3% = 約34万円

家にかかる税金はなくなり、家があるときと比較して18.8万円ほど高くなる計算です。
しかも更地にするには家の解体費用がかかりますから、親が亡くなった後、誰も住む予定がなくても、実家をそのままにする人が増えている原因の一つに税金の高さがあると考えられます。
でも、どんな場合でも更地にしたほうが税金は高くなるかといえば、そうでもありません。
空き家にしておくのと解体する(更地にする)のとでは税額にどれほど差が出るのか、2つの事例を比較してみましょう(図表3)。

図表3 家があるときと更地にしたときの税金の違い

例1

土地180m2 … 固定資産税評価額800万円
木造築30年 … 固定資産税評価額250万円

① 家を維持する場合
土地の固定資産税と都市計画税
800万円×1/6×1.4%+800万円×1/3×0.3%=約2.65万円
家の固定資産税と都市計画税
250万円×1.4%+250万円×0.3%=4.25万円
合計 6.9万円
② 更地にした場合
土地の固定資産税と都市計画税
800万円×1.4%+800万円×0.3%=約13.6万円
例2

土地180m2 … 固定資産税評価額1,200万円
SRC築10年 … 固定資産税評価額1,000万円

① 家を維持する場合
土地の固定資産税と都市計画税
1,200万円 × 1/6 × 1.4% + 1,200万円 × 1/3 × 0.3% = 4万円
家の固定資産税と都市計画税
1,000万円 × 1.4% + 1,000万円 × 0.3% = 17万円
合計 21万円
② 更地にした場合
土地の固定資産税と都市計画税
1,200万円 × 1.4% + 1,200万円 × 0.3% = 約20.4万円

ここで注意するポイントは、家を取り壊すと土地が「非住宅用地」となり、固定資産税等は「住宅用地」のときの5倍強になる点です。
例1では、更地にしたほうが税金は高くなっていますが、例2では更地にしたほうが安くなっています。このように、更地にすることで必ずしも固定資産税と都市計画税が高くなるとは限りません。
両方の税金のうち建物の割合が比較的多いと、更地にしたほうが税金は安くなる場合が多いようです。
家を解体するかどうかは、思い出の詰まった家を残しておきたいという気持ちや、相続人の間で意見が分かれているなど、さまざまな事情があるでしょうが、節税の面からもどちらが得かもう一度よく考えていただきたいものです。
なお、土地が200m2を超える場合は、表1のとおり、より複雑な計算になります。また、個々のケースによっては固定資産税・都市計画税の減額措置等を使える場合もあり、税額に違いが生じることもありますので、詳しくはお近くの税理士などにご相談ください。

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