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平成21年12月、買主Xは、本件土地・建物を事業者Yの媒介により、売主より代金9,000万円で購入し、平成25年頃、本件土地上にガレージを建築しました。
平成27年10月、本件土地の近隣住民Aらが、本件土地の一部に設定された地役権に基づき、ガレージの撤去等を求める訴訟を提起し、Xに対しガレージを撤去することを命じる判決が確定しました。
すると、Xは、Yに対し、重要事項説明において、本件係争地が既存道であること、地役権が設定されていたこと、建築制限があることを説明しなかったと主張して、本件係争地に建築したガレージの解体・撤去、再築等に要する費用等2,014万円余の損害賠償をYに求める訴訟を提起しました。
それに対し、Yは重要事項説明の際、①本件係争地が既存道であり建築ができないこと、②近隣住民により作成された道路使用の「同意書」を添付したこと、③本件係争地に地役権は登記されていないため、地役権の説明はしていないが、宅建事業者として、建築基準法に照らして土地にいかなる規制・利用制限が課せられているかを明確に説明したと主張しました。
裁判所は次のように判示し、Xの要求を棄却しました。
Xは、Yが、本件係争地が既存道であること、本件係争地に地役権が設定されていること、本件係争地では建築基準法が制限されることを説明しなかったと主張するが、本件において、Yは、Xに対し、本件係争地が私道として提供されており、私道では建築等の利用ができないなどと説明したことが認められる。
他方、Yは、Xに本件係争地に地役権が設定されているとの説明はしていないが、本件係争地に設定された地役権は登記されておらず、同地役権に関して合意した文章である同意書にも、地役権という文言は記載されていない。そして、本件私道の隣接所有者が本件私道に対して有する権利の法的性質まで明確にならなくても、本件係争地が私道に供されていることを買主であるXが認識できれば、Xが不測の損害を被るおそれは相当に軽減されるといえる。
そうすると、宅地建物取引事業者であるYが、本件私道の隣地所有者が本件係争地を含む本件私道に対して有する権利の法的性質について調査、判断した上、それが地役権であるとの説明義務を負っていたと認めることはできない。
従って、Yは、Xに対し、本件係争地に地役権が設定されているとの説明をしなかったとしても、そのことをもってYが説明義務に違反したと認めることはできない。
また、重要事項説明書には、敷地等と道路との関係に関する本件概略図が記載されており、その本件概略図には、道路との接道部分について、本件同意書に添付された測量図と同様の形状で描かれており、本件概略図に記載された土地の形状と、公図の記録内容が異なることは、一見して明らかであり、本件係争地部分が道路として使用されていることを示す本件同意書が添付されていることなどを考慮すれば、重要事項を説明する者としては、本件概略図や本件同意書に沿って、本件私道の範囲や本件私道との接道位置の説明をしたと考えるのが合理的である。
従って、Yは、本件概略図や本件同意書の記載に沿って、本件私道の範囲や本件私道の接道位置について説明したと認められることから、地番を示すなどして明示的な説明がされなかったとしても、本件私道の負担に関する事項について説明されていたといえ、Yが説明義務に違反したと評価することはできない。
以上によれば、Yが説明義務に違反したと認めることはできないことから、Xの請求は、理由がない(東京地裁 令和3年6月18日判決)。
本事案は、媒介事業者が買主に対し、土地の一部に設定された地役権について、地役権という文言は使用していないものの、重要事項説明の際、私道において建築制限があること、土地の概略図における土地の形状、近隣住民の同意書などが添付されていることから、媒介事業者は説明したと認められたものです。
不動産の取引において私道が関係する場合、取引後に私道に関する紛争が多いことから、媒介事業者は、宅地建物取引業法第35条1項3号の「私道に関する負担」(参考法令参照)について、宅建事業者として可能な限り、私道通行に関する合意書などの調査を行い、土地の概略図等を利用して分かりやすく説明を行うことがトラブル防止の観点から重要になります。
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