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「商人間の留置権の目的物は、債務者の所有する物または有価証券で、物は動産に限られる・・・と大学で教わりました。最近、最高裁が、“不動産も対象となる”と判断したそうですが本当ですか?」
商法521条と不動産について、初めての最高裁判決です。
民事留置権(民法295条)は他人の物の占有権は物に関して生じた債権を有するときは弁済を受けるまで者を留置することができる、土地およびその定着物は不動産以外の物は全て動産(同法86条)と明記し、民事留置権の目的物が不動産を含むことを明示しています。
商事留置権(商法521条)は商人間取引の特則ですが、商法には物を定義する条文がないため、明治23年の旧商法以来議論がありました。
起源は中世イタリアの商習慣に由来し、ドイツ旧商法や原稿ドイツ商法典は明文で商事留置権の対象を動産と有価証券と限定しています。旧商法(明治23年)はドイツ法の系譜でした。現行商法521条は明治32年の商法(明治44年改正)に由来し、不動産を除外しているものとは解されません。しかし下級審裁判判例は不動産を含まないとする除外説と、不動産を含むとする包含説に分かれています。
除外説の立場をとる東京高裁の平成8年5月28日判決が説く「登記の順位により定まるのを原則とする不動産取引に関する法制度の中に、不動産に目的物の牽連性さえも要件としない商人間の留置権を認めることは取引の安全を著しく害する」との危惧や、先行する抵当権が後行の商人間留置権に事実上優先される問題等から、包含説の立場からも独立の占有を否定したり抵当権には対抗できない等、事実場の否定例が多くありました。
本件の概要は下記の通りです。
平成18年12月、生コンクリート製造会社Aが一般貨物自動車運送事業会社Bに土地を賃貸して引き渡し後、同契約が平成26年5月、Aからの解除により終了しました。Bは賃貸借契約の終了前からAとの間の運送委託契約によって生じた弁済期にある運送委託料債権を有しています。
AがBに所有権に基づく本件土地の明渡しを提訴し、Bは運送委託料債権を被担保債権とする商法521条の留置権の成立を主張して反論。原審は留置権の成立を認め、Aが上告。「不動産は521条の物に当たらないのに本件土地に留置権の成立を認めた原審の判断は誤りがある」と主張しました。最高裁一小は「民法は物を不動産および動産と定め、留置権の目的物を物と定めた。商法521条は留置権の目的物を物または有価証券と定め不動産を除外していない。不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情から、不動産は商人間の留置権の目的物として定める物に当たると解するのが相当である」と初めて判示しました。(最高裁一小 平成29年12月14日判決 最高裁ホームページ、判例時報2368号)。
今後の商事留置権の指針となる重要は判決です。
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