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分譲マンションの階下住人の迷惑行為に対する損害賠償請求が一部認容された事例

分譲マンションの購入者が、階下住人の度重なる粗暴な攻撃行動やその他の迷惑行為により、マンションの売却・転居を余儀なくされたとして、階下住人に対して求めた不法行為に基づく損害賠償請求が一部認められた事例(東京地裁 平成29年12月1日判決 一部認容 ウエストロー・ジャパン)

1.事案の概要

原告Xは、平成18年3月、本件新築分譲マンションを購入して入居した。被告Yは、同年2月、Xの階下の居室を購入して入居した。

Yは、平成25年から、本件マンション内で、周辺の部屋のドアを蹴って回る、毎日夜中に大音量でダンスミュージックをかけ、本件マンションのコンシェルジュにヤモリを投げつける、すれ違った住民に対して誰彼構わず罵声を浴びせる等の異常行動を少ないときでも月に1度、多い時には週に複数回といった頻度で繰り返すようになった。

管理会社は、マンション管理組合理事長の指示により、Yに関して住民からの申出があった都度、「Y氏迷惑行為等一覧」と題する表にまとめて記録していた。

Yは、階下に住むXに対して、深夜に玄関ドアを蹴り付けたり、マンションの玄関ドアに飲みかけの飲料を投げつけ、内容物をXマンションの玄関ドア及び壁面に飛び散らせたりしたほか、学校から帰宅したXの長男とエレベーター前で出会うや、「お前の家うるせえから、誰か変なやついるかもしれない。警察呼んだからな。」などと不安を煽って怖がらせた上、到着した警察官に、X宅に不審者が潜んでいるかもしれないので室内を調べて欲しいと告げて、室内を点検させたりした。その結果、Xの長男は、いつYと鉢合わせになるかもしれないと怯え、一人でエレベーターに乗れなくなったり、室内でも摺り足で歩くまでに追い詰められた。

Xは、平成28年2月、別のマンションを購入契約し、翌年4月、転居した。これに伴い、Xは、同年7月までの3か月間、媒介業者と専属選任媒介契約を締結し、本件マンションの売却活動を開始した。なお、Xは、本件マンションを売却するに際して、買受け希望者に説明すべき重要事項としてYのことを隠すことなく説明するよう媒介業者に依頼した。

Xは、これまでのYの迷惑行為の被害にあった者らに対し、共同で訴訟を提起する提案を行ったが、Yからの仕返しの嫌がらせを恐れ、原告となることへの同意は得られなかったため、平成28年6月、X単独でYの不法行為に対する以下の請求内容の本件訴訟を提起した。

[Xの請求内容]

慰謝料500万円、引越代金等60万円余、マンション価格毀損2125万円(時価25%が毀損したと主張)のうち1000万円、第1回媒介契約期間(平成28年7月までの3か月間)経過後、同年9月末までにXが支払った住宅ローン返済金ならびに管理費31万円余、弁護士費用・報酬247万円余。

2.判決の要旨

裁判所は次のように判示して、Xの請求を一部認容した。

Yの不法行為

Yの各行為は、社会的相当性を逸脱し、Xの住居の平穏を害する行為であり、Xに対する不法行為を構成することは明らかである。

Xの損害

① 慰謝料
財産的損害に関する部分以外について生じる慰謝料として200万円を相当と認める。
② 転居費用
引越代金や売買契約書貼付の印紙代等の全額60万円余について本件各不法行為と因果関係のある損害と認める。
③ マンションの価格毀損

本件マンションの売却に際して、Yの迷惑行為があること、訴訟係属中であることを告げると、買受け希望者に軒並み断られ、マンションの販売価格を200万引き下げても口頭弁論終締時までに買受け希望者が現れていないことは、Y及びYの迷惑行為の存在が大きく影響しているものと認められる。そして、Yの迷惑行為等の要素がなかった場合の本来の価格からの減少はどの程度か等の点が証拠により認められる場合には、具体的に損害が発生したものとして、かつこれを本件各不法行為と相当因果関係あるものとして、Yに賠償を命じる余地が多分にあり得る。

しかし、本件においては、本件マンションの価値毀損という損害について、抽象的な損害もしくは、具体的な損害として現時点で発生しているとは認められないというほかない。

一方、第1回媒介契約が期間満了した平成28年7月から同年9月末日までの住宅ローン返済金と同期間中の管理費の31万余については、Y及びYの迷惑行為の存在という事情がなければ、上記媒介期間内に売却できた蓋然性が認められるから、本件各不法行為と相当因果関係ある損害と認められる。

④ 弁護士費用
Xは、本件訴訟を提起し遂行するにあたって、弁護士を選任せざるを得なかったものであり、既に支払った費用97万円余は本件各不法行為と相当因果関係ある損害と認められる。また、弁護士に対する報酬について、17万円余をもって損害と認める。
⑤ まとめ
以上により現時点でXに認められる損害額は407万円余となる。

3. まとめ

本判決は、受忍限度を超える迷惑行為を行う階下住人の存在により、マンションを売却して新たに別のマンションを購入の上、転居せざる得なくなった場合において、当該迷惑行為者に対する一定の損害賠償請求を認めたものであり、近隣の迷惑行為への対応に関して、一つの参考事例となるものである。

迷惑行為などの近隣トラブルをめぐる裁判例としては他に、例えば、マンション居住者の迷惑行為が共同の利益に反するとして、マンション管理組合がマンションの所有者に対して提起した区分所有法59条1項に基づく競売申立請求が認められた事例(東京地判平成17・9・13 RETIO66-46)や、隣人とのトラブルについて売主及び媒介業者には買主に対する説明義務があるとされた事例(大阪高判平16・12・2 RETIO61-82)がある。

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