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賃貸のお困りQ&A

留学費等の教育費は、遺産相続で遺産に加算される特別受益に当たるか

【ご相談】

子どもの中で一人だけ大学院や外国留学の教育を受けた者がいます。その教育費は、遺産相続で特別受益として遺産に加算されますか?

扶養の一部であれば特別受益に当たらない

民法903条1項は、被相続人から遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、特別受益として贈与の価値を加えたものを相続財産とみなします。高額な教育費がこの特別受益に該当するか否かについて最近の家事審判から検討しましょう。

A(大正13年生)は昭和24年にBと婚姻し、AB間にX(女、昭和26年生)が誕生しましたが、昭和44年に離婚しました。昭和45年にAはCと再婚。AC間にはY(女、昭和38年生)とZ(男、昭和39年生)が誕生しています。平成26年にAが死亡。相続人はCとX、Y、Zで、法定相続分はCが2分の1、XYZが各6分の1で、遺産は借地権付住宅、預貯金、自社株、高級自動車、高級時計等で、評価額合計は金1億3076万8243円です。

Y申立ての(名古屋家裁)遺産分割家事調停は不調に終わり、同家族での遺産分割家事審判に移行しました。遺産の評価について当事者間に争いがなく、争点はZがYの、YがZの特別受益をそれぞれ幅広く、かつ詳細に指摘し、その当否の審理が中心でした。

Zは、Yが上智大学フラン語学科、同大学院、ソルボンヌ大学、パリ第三大学、パリ政治学院、ロンドン大学等に学び仏、英、米各国へ約10年間に及ぶ留学の費用、結婚式の費用等が特別受益に当たると主張。YはZの予備校生活1年間および一橋大学の4年間の学費、イギリス短期留学の費用、高級時計5個、自動車2台等の贈与、現金の贈与、結婚式の費用等が特別受益に当たると主張しました。

家裁は「A一家は教育水準が高く、能力に応じて高度の教育を受けることが特別なことではなかったこと、もっともYの学歴は通常のものとは言えないが、学者、通訳者、または翻訳者として成長するためには相当程度の時間と費用を要するものであってAがそれを許容していたこと、Yにもある程度の資力があり自発的にかなりの部分をAに返済していること等からすると学費等はYの特別受益に該当するものではなく、仮に該当するとしてもAの明示または黙示による持戻免除(※)の意思表示があったものと認めることができる」と判示し、YZがそれぞれ自認した受益(Yは留学中一時期の国民年金保険料と生命保険料の立替等約407万円、Zは現金贈与の約179万円)の限度で特別受益を認定し、教育費や結婚式の費用その他を否定しました(名古屋家裁 平成31年1月11日審判)。

その後、Zの抗告で高裁は「学費、留学費用等の教育費は被相続人の生前の資産状況や社会的地位に照らし、子である相続人に高等教育を受けさせることが扶養の一部であると認められる場合には特別受益に当たらないと解するのが相当である」として、Zの抗告を棄却しました(名古屋高裁 令和元年5月17日決定 判例時報2445号。)

※持戻免除とは、相続財産に加算してその者の相続分から受益を控除することを免ずること(民法903条3項)。

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