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賃貸のお困りQ&A

高齢者を勧誘し相場を偽って自宅のリースバック契約を行わせた事業者に対し売主の損害賠償請求が認められた事例

1.事案の概要

X(原告、当時73歳)は、年金生活者であり、病気のため自宅(マンション1室37㎡、以下X宅)から定期的に通院していた。

令和3年1月、不動産業者Yの従業員が架電営業後に、X宅を訪問した。その際に、Xは、X宅以外に所有していた物件A(木造店舗と土地)について、空家となり隣家等から苦情が出ているので300万円で売却したいのだができない、更地にするには250万円はかかるらしいとYに話をした。

その後、Yの従業員がX宅を再訪した。YはXに現金300万円を示して、このうち225.5万円は解体費用で必要になると告げたところ、Xは、Yが取り壊しするという条件での売却に同意し、その場で75万円を受領した。

同年2月、Yの従業員は、X宅を再訪し、Xに「とても良い話を持ってきた、Xが自宅に居住しながらも月額10万円の支払いを受けられる上、管理費等はYが支払う」との説明をした。

同年5月、Xは、X宅において、自宅の時価相場が500万円であるはずはないと思いながらも、頭がぽうっとしていたこともあり、その場で売買契約書に署名・捺印し、Yから手付金100万円の交付を受けた。

同年6月、Xは500万円という時価相場はおかしく、居住したままで月10万円を受け取れるという話が危険であると感じ、手付金を戻し契約をやめるとYに申し出たが断られた。

その後、Xは、Yから賃料11ヶ月分の110万円を差し引いたと説明され、現金290万円を受領し、400万円の領収書に署名・捺印した。また、同日、賃貸人をY、賃借人をXとして、契約期問令和3年7月1日から令和4年5月31日まで、更新なし、月賃科10万円とする「居住用建物箕貸借契約書(定期)」及び「定期賃貸住宅契約についての説明」と題する書面にそれぞれ署名・捺印した。その際に、Xは定期賃貸借契約の内容や意味を全く理解しておらず、Yに求められるがままに、署名・捺印を繰り返していた。

それぞれの物件の市場価格については、物件Aは、近隣成約事例で600万円程度で、固定資産税評価額496万円。X宅は、査定額で2343万円または2570万円以上、固定資産税評価額2900万円超となっている。

Xは、動機の錯誤及び消牲者契約法4条2項の誤認により、物件Aについて199.5万円(時価500万円 - 解体費225.5万円 - 受領金75万円)、また、X宅について2110万円(時価2500万円 - 手付金100万円 - 受領金290万円)の損害賠慨をYに求め訴訟を提起した。

2.判決の要旨

裁判所は、次のように判示して、Xの請求を一部認容した。

物件A契約の錯誤・誤認による取消し

Xは契約締結前から、更地にするためには250万円程度かかると認識し、希望価格300万円では物件Aを売却できなかったところ、Yの従業員から解体費用225万円を示され、Yが建物を取り壊す前提であれば、売買代金の残額が75万円となることを示され、これに納得した上で、契約書に署名・捺印している。

そうすると、物件Aについては、法律行為の基礎とした事情について錯誤は存在しないといわざるを得ないし、Yが価格や解体工事費用等について事実と異なることを告げ、Xがこれを誤認したということもできないから、錯誤、誤認のいずれの理由によっても、契約を取り消すことはできない。

X宅契約の錯誤・誤認による取消し

Yの従業員は、Xに対し、X宅に居住しながらも月額10万円の支払いが受けられ、管理質はYが支払うなどという現実にはあり得ない説明をした上で、時価相場から著しく乖離した500万円の代金での売買契約書を示すほか、XがX宅から1年以内に退去しなくてはならない内容の定期賃貸借契約の契約書に署名・捺印させている。これに対して、Xは月額10万円と代金500万円がもらえるものと認識し、不安を抱きつつも、定期賃貸借契約の内容や意味を全く理解していなかった。

Yは契約の極めて重要な事項について、事実と異なることをXに告げ、Xはその内容が事実であると誤認して契約に応じたということができるし、Yの従業員の説明が現実にはあり得ないものであったとしても、Xの属性や生活状況やYの勧誘方法の悪質性に照らすと、Xに重過失があるということもできない。したがって、XはYとの契約を消費者契約法4条2項の誤認により取り消すことができる。

本件各物件の価格賠償の額

XはYに対しX宅の契約解除の意思表示をしたから同契約は遡及的に無効となり、YはXに対し所有権移転登記の抹消手続義務を負うが、Yが物件をB社に売却し、B社が所有権移転登記を完了したことから、YのXに対する移転登記義務は履行不能となった。

そこで、YがB社に現状有姿で売却した物件代金が1600万円であることから、X宅の価格賠償の額は、同額からXが交付を受けた390万円を控除した1210万円となる。

まとめ

本件では、事業者の時価相場から著しく乖離した価格等による高齢者への悪質な勧誘について、消費者契約法による誤認があったとして、契約の取り消し、さらに事業者の転売価格と高齢者の受領金額との差額が損害賠償として認められた。しかし、物件は第三者に転売されており取り戻すことはできなくなった。Yは無資力又は倒産した場合、被害者救済が事実上なされない可能性もある。

サースバック関連の相談は当機構でも最近増えているが、国民生活センターからは令和7年5月に「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」との注意喚起の報道発表があり、相談事例では契約当事者の約7割が70歳以上で、悪質・執拗な勧誘事例が目立つとされているところである。

また、事業者の責任が認められた事例としては「リースバック取引に係る一連の行為が詐欺行為にあたるとして転売利益相当額が損害賠償額として認められた事例」(東京地判令4・2・28 RETI0130-130)があるので参考にされたい。

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