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原野商法二次被害事件で、従業員の勧誘行為が詐欺に当たるとして、その会社の使用者責任を認め、さらに社長個人の責任も認めたケースがあると聞きました。どのような内容ですか?
本件はY社の代表取締役Zが同社グループB社の営業にも直接関わった実態があり、個人責任を問われた事案です。
Xは不動産販売のB社から度重なる勧誘を受け、平成22年2月から平成24年9月にかけて3回にわたり不便な山中の戸建別荘の持分権(100分の1~3)2口と、山林1筆(併せて本件不動産)を購入。管理費等がかさみ利益が上がらず処分先も見当たらない状況の中、B社は平成26年8月16日、民事再生手続開始で倒産しました。
平成26年7月ないし8月頃、XはB社グループ会社Y社の従業員から本件不動産を買い取る代わりに同社のリゾート会員権を購入するよう勧誘を受け、この時は断りました。同年11月8日、Y社の従業員Aが改めてX宅を訪れ、本件不動産を50万円で下取りするから同社のリゾート会員権129万6000円(支払額79万6000円)を購入しないかと勧誘し、「会員権は基本的には5年間転売できないが、今なら1年間保有すれば転売可能であり90万程度で買い手が見つかる。転売の仲介は当社以外の仲介会社もある」と虚偽の説明をしました。Xはそれを受けて誤信し、同日会員権の売買契約を締結し内金を支払い、同月11日に残金を完済しました。
同日、本件不動産は売買を登記原因としてY社に移転登記。本件会員権は入会金129万6000円・年会費2万4600円、宿泊する場合は消耗備品交換費を支払い、10年間Y社管理費の別荘型宿泊施設に年間20泊(うち休日は最大10泊)できるという内容です。転売は会員権登録日から5年経過後、YおよびQ理事会の承認を得て名義変更料30万を支払うことで可能ですが、売買成約数899件中の転売例は0件でY社の仲介もありません。
Xは平成28年11月8日、Y社に対し本件会員権契約を詐欺を理由に取り消し、代金の返還を求める内容証明郵便を送付。同書は翌日到達しました。平成30年2月、XはK地裁にY社と個人Zを提訴し、109万5600円(支払額+慰謝料20万+弁護士費用)と遅延損害金の支払いを請求。「転売条件の説明はY社の組織的な詐欺行為であり、否とすれば従業員Aが同社の事業の執行として行った行為であるから同社に使用者責任(民法715条)がある。また、ZはY社の代表取締役である傍らB社にも勤務し同社から価値の乏しい別荘持分権を購入し苦慮する顧客に対しY社の下取り付会員権の販売を勧誘させたが、その際に販売担当者らに虚偽の説明をしないよう指導監督を徹底すべきところ、これを怠った過失がありXの蒙った損害の賠償義務がある」と主張しました。
地裁はY社の組織的不法行為は認めず、使用者責任を認容し、Zには活動実態からZ個人の過失による不法行為責任を認容。Xの支払額から会員権の価値相当額(10万円と算定)を損益相殺し、Y社とZに連帯して、支払額(79万6000円)―価値相当額(10万円)+弁護士使費用(7万円)=76万6000円と遅延損害金の支払いを命じました(京都地裁 令和2年2月20日判決 判例時報 2468-2469合併号)。
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