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賃貸のお困りQ&A

管理会社への過剰な回数の問い合わせ

相談内容

相談者 当社で管理している賃貸マンションαマンション503号室の入居者X(男性40代)からのクレームについての相談です。
αマンションは、1階にレストランが入っており、2階から9階がワンルームの賃貸住宅になっています。
Xは、
① 1階のレストランは、車や原付バイクで来た客にもビールなどを提供している。これは犯罪行為だ、などと警察や当社に連絡をしてくる
② レストランに来たお客様がマンションの前の歩道にバイクや自転車を乱雑に停めているから今から管理会社の人間はすぐに来て、整理しろと毎晩管理会社に出勤依頼の電話をしてくる
レストランからの説明では、車両来店者に対する酒類提供は断っているそうです。警察も連絡が来れば店に来ないわけにはいかないそうで、Xの通報にはかなり手を焼いているそうです。
Xは、犯罪行為を助長するような賃貸テナントとの契約は即刻解除すべきだ、と主張しています。
貸主は関西の繊維会社なのですが、1階のレストランは特に問題を起こしているわけではないため、契約を解除するつもりもありません。
自転車の件ですが、レストランの来店客で、バイクや自転車で来店するという方はほとんどおらずαマンションの隣にはコンビニエンスストアもあるので、その利用者が停めているというのがほとんどのようです。
当社としては、賃借人の方から出勤依頼があれば対応せざる得ないと考えて、これまで毎日のように出勤していました。ところが現場に到着すると、自転車やバイクが全くないということも度々あるのです。
Xはブログを書いており、このブログには当社の出勤の様子が掲載されています。そして、当社が出勤しないとブログに「とんでもない会社だ」などと書き込みをして、面白がっているようです。もっとも、ブログ訪問者のカウンターを見ると、我々以外の読者はいないようです。
また、これまで何度かレストランの前の路上に大量の生ごみがばらまかれる事件がありました。犯人はわかっていませんが、レストランの経営者の方は「Xがやっているに違いない」と言って大変ご立腹です。
Xからは相変わらず毎日自転車の整理とレストランにおける酒類提供の確認の出動依頼が来ています。当社はこれ以上対応するのはやめようと考えています。ところが「最近連絡しても来てないようだが、どういうことか、訴えるぞ」とも言われています。
契約上の義務として管理業務も受託している以上、当社は出動しなければならないのでしょうか。

物件概要

  • RC造9階建て
  • X入居部屋 503号室 間取り:ワンルーム 家賃:9.6万円
  • クレーム対象店舗 1階店舗 業種:レストラン

当事者関係

賃借人
入居者X、男性40代、会社員
賃貸人
関西の繊維会社
管理会社
相談者A

経緯

入居1カ月後
この頃からXより、レストランに対して「自転車でも酒を飲めば酒気帯び運転だ。このレストランは俺が店を利用したときに自転車で来た客にもビールを出していた。自転車で来た客に酒を出すレストランは犯罪飲食店だ」「前面道路に自転車やバイクが乱雑に置かれている整理に来い」などと管理会社に電話やメールでクレームを入れるようになる(本人はしばしば食事に行くようだが店に直接文句は言わない)。
入居3ヵ月後
1階のレスト得案に行った。レストランは特に声掛けをすることもなく、自転車で来た客にビールを出している。自転車も飲酒運転。犯罪は犯罪だ。これまで自転車の飲酒運転の通報を警察に50回はしているが一向に収まらないところを見ると、警察の指導をレストランは無視しているに違いない。最近私の部屋のドアを夜中にドンドン叩くやつがいるが、きっとレストランの店長がいやがらせをしているに違いない。管理会社は即刻レストランとの賃貸借契約を解除しろ。
当社(管理会社)
ご要望の1階レストランの強制解除の件につきましては、当社からの確認・指導に対し、酒類提供の際には来店方法の確認を徹底しているとのことで、既にレストランに要請している以上の対応はできかねます。したがいまして、同店との賃貸借契約を解除することはいたしかねます。また、今後この件の同様の要求・要請につきましては対応いたしかねます。
X
役員からの納得のいく回答が、指定期日までにこなければ、このことをネットに掲載する。レストランの賃貸借契約を解除しなければレストランと管理会社を提訴する。

解説

A. 管理会社としては賃貸借契約上十分な対応をしているものと考えられます。

法的に整理するとどうなるか

結論としては、こうした行為を建造物損壊罪として立件してもらうのは困難と考えられます。まず、警察には民事不介入の原則があります。貸主と借主は賃貸借契約の当事者という私法上の関係があり、物件修繕の問題は原状回復義務の履行の問題です。そのため、こうした私法上の紛争がある場合には警察は関与を避けます。
さらに、こうした犯罪行為は、誰が、いつ犯罪行為を行ったかが立証できなければいけませんが、部屋の壁を殴った跡があってもそれを賃借人がしたかどうか、それをいつやったのかを特定するのは困難でしょう。
そのため、建造物損壊罪として警察が立件することは難しいと考えられます。もっとも、共用部を入居者が故意に破壊していてそれが監視カメラに映っていたというような、犯人・犯行時間・犯行場所が特定できる場合は、建造物損壊罪として被告申請することもできるでしょう。
貸主も管理会社も、専有区画内で賃借人がどんなことをするかを完全に管理することはできません。そのためにも、
①入居審査をきちんと行う、②敷金や連帯保証人などの担保をきちんと取っておくことが大切です。

1.管理会社としての対応義務の検討
管理の問題を検討するうえでは、まず、関係当事者の法律関係を整理することが必要です。
賃貸人は、賃借人に対し、居住用として賃貸物件を貸し渡し、これに対して賃借人が賃料を支払うというものが賃貸借契約です。つまり、単純に考えれば、賃貸人は、基本的には居住用という用途が全うできる程度の賃貸住宅を提供すれば足りると考えられます。これに防犯カメラ付き、オートロック付き、といった設備がついてくると、こうした防犯設備の維持管理業務を負うという範囲で「防犯」的な義務を負うことになるでしょう。また、賃貸マンション・アパートは集合住宅である以上、居住者に異常な問題を発生させるものがいれば平穏な住居としての使用に支障をきたすことになるわけですから、解除等によりこうした居住者を退去させ、一定程度の良好な住環境を提供するという義務を負うと考えられます。
とはいえ、基本的な考え方としては、(契約上、物件貸与以外のサービスを負わない限り)賃貸人は賃借人がその用途を全うできる程度の賃貸物件(及びその限りにおいての環境)を提供すれば足りると考えられます。
本件において、テナントが自転車で来店する客に酒類を提供しているかどうかということは、賃貸借契約上の禁止行為等の義務違反を構成するとは考えられませんので、貸主が解除をしなかったからといって貸主のXへの債務不履行を構成するものではありません。
次に、マンション敷地及びその周辺において自転車が多数停められていて、賃借人において物件の使用、居住に支障をきたしているという連絡がきた場合ですが、これを貸主が放置することは賃貸借契約上の貸主の債務不履行になりそうな気もします。
ただ、賃借人Xの要求は感覚的には不当な請求だと感じるのではないでしょうか。これは法的には「権利濫用」の問題に位置づけられます。
2.権利の濫用の問題
賃借人Xの要求は感覚的には不当な請求だと感じることでしょう。なぜでしょうか。「自転車を整理しろ」というXの要求は「表面的には」正当な主張のようにも感じられます。ただ、毎日のように連絡してくるというのは連絡の方法としてはやりすぎで、不当な要求のように感じられるのではないでしょうか。これが権利濫用の問題です。
人の行為が正当かどうかは「内容」と「行為態様」の側面から分析することができます。賃貸借契約上の権利行使も例外ではありません。分析的に記述すると以下のようになるでしょう。
① 内容として正当か(道徳・契約・法律などに照らして理由があるか、など)
② 態様として正当か(脅迫的な態度か否か・異常な回数の要求ではないか、など)
③ ①②を通じて行為者に害悪が認められるか(主観的要素)
Xの要求はまさに②態様としての正当性を欠いているため、正当な権利行使ではないと評価されます。 権利の濫用(民法1条3項)とは「形式的には権利の行使とみられるが、具体的な事情を考慮すると権利の社会性に反し、正当な権利行使と認められないこと」を言います。
貸主は、借主の対応要求が権利の濫用となるような場合には権利行使として認められません(民法1条3項「権利の濫用はこれを許さない」)。この場合には貸主の義務履行の委託を受けた管理会社としても対応義務は生じないということになります。
もっとも、②態様として正当かどうか、という点については、ここまでやればアウト、という境界がはっきりあるものではありません。
また、権利の濫用の法理は契約上の義務を免除するいわば「伝家の宝刀」的な法理論ですので、簡単には認められるものではないことに注意が必要です。客観的に誰がどう見ても見地の濫用と認められるだけの事実と、それに対応する証拠を残しておく必要があります。安易に権利の濫用として管理業務を停止すると債務不履行と評価されかねないので十分注意してください。
3.営業妨害
威力や偽計により他人の事業を妨害した者は業務妨害罪(刑法233条・234条)となります。どんな場合にこれに該当するか、具体例としては以下のようなものがあります。
① 蕎麦屋に無言電話を3ヶ月間に970回した。
② 校舎内に爆弾を仕掛けたと学校あてに電話をした。
③ 繁華街で無差別殺人を行うとインターネットの掲示板に書き込んだ。
① は、内容は大したことはありませんが態様において悪質さが強い行為(回数が常軌を逸している)です。一方、②③は内容としての悪質さが際立ち、態様としてはたった一回の行為で犯罪と認定されています。
このように物事や相手の主張などが正当かどうかを自分で考える際の一つのモノサシとして、内容として正当かどうか、態様として正当かどうか、に着目して検討することは有用です(ただし、当然のことですが、正当不当の判断がすべてこれで解決できるわけではないことには注意してください)。

その後

貸主と管理会社は弁護士からの回答を前提に打ち合わせを行い、今後Xからのレストランに関する連絡には対応しないこと、Xから債務不履行に基づく損害賠償請求をされた場合は、権利濫用を主張して応訴すること、その際弁護士費用はかかるだろうが、断固として対応をすることを決めました。
管理会社は、Xからの1階レストランについてのクレームにはこの対応以後対応しないことを連絡し、その後対応はやめました。
Xからは「訴訟直前の最後通牒」という題名のメールが3度ほど来ましたが、管理会社が無視したところ、何の連絡も来なくなりました。
ブログにはしばらく、当社の対応への不満が書き連ねられていたが、そのうち飽きたのか、今は市役所の窓口対応が個人情報漏えいだ、との記事を掲載するようになりました。
ただ、レストランの前の路上には今でもたびたび夜中に生ごみがばらまかれており、犯人はわかっていません。レストランから監視カメラを設置するよう苦情が来ていますが、誰がやっているかはわからないので(賃貸借契約の問題かどうかも不明であり貸主の義務の問題とも今のところいえない)、レストランには、監視カメラは設置しない、という説明をしています。

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