Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
平成20年10月、東京都内に所在する建物(本物件)について、建物所有者AとY1は、賃貸借契約(原契約)を締結しました。原契約では、Y1が自ら営む飲食店に使用目的が限定され、第三者に転貸もしくは営業委託等により使用させることが禁止されていました。原契約はその後、その定めに従い自動更新されました。
平成26年4月、ハンバーガー店の出店を検討していたXは、宅建事業者Bから本物件の紹介を受け、Y1側の窓口であった宅建事業者Y2とBの立ち合いでXとY1との間で、Y1を委託者、Xを受託者とする営業委託契約書(本委託契約)が締結され、その後Xは、本物件での店舗の営業を開始しました。
平成27年5月、本物件の排水管に故障が発生したことを契機として、AとXが接触を持つようになり、その後のやり取りの中でAは、Y1が原契約で禁止されているXへの転貸をしているとの認識を持つようになりました。
同年10月、AはY1に対して、Y1の無断転貸を理由に原契約の解除を通知し、その直後にXに対してもこれを通知するとともに本物件の明渡しを求めました。
同年12月、AとXは、Aを賃貸人、Xを賃借人とする本物件の賃貸借契約(新契約)を締結し、XはAに187万円の保証金を差し入れ、店舗の営業を継続しました。
平成28年8月、XはYら(Y1、Y2)に対して、原契約に転貸禁止等の定めがあることの説明義務があったとして、Y1との本委託契約の保証金(180万円余)・礼金およびAとの新契約の保証金等計455万円余の支払いを求めて提訴しました。一方、Yらは、Xに対して必要な説明を行っていた、そもそも原契約の解除が無効である等と主張して反訴しました。
裁判所は次のように判示し、Xの請求を一部認容しました。
原契約においては、本物件を転貸することおよび業務委託等の方法により使用させることが禁止されていた。このことからすると、本委託契約の法的性質について、Xが主張する転貸借契約とYらが主張する業務委託契約のいずれを採用したとしても、Yらは、Y1とXとの間の委託契約締結に当たり、前記の各禁止事項をXに説明する義務を負っていたというべきである。これについて説明がされなかったことに争いはない。従って、契約当事者であるY1のみならず、仲介・立ち合いの事業者として関与したY2にも係る説明義務違反について、共同不法行為の成立が認められる。
Xは、委託契約に基づきすでにY1に保証金(180万円余)を差し入れていたにもかかわらず、原契約上、転貸および業務委託が禁じられていたため、本物件における店舗の営業を継続すべく、Aに保証金を差し入れて改めて契約を締結せざるを得なくなったものである。従って、当初Y1に差し入れた保証金については、Yらの共同不法行為(説明義務違反)による損害と認めるのが相当である。
一方、礼金については、Xが現に本物件での店舗の営業ができていたことからすれば、Yらの共同不法行為により被った損害とは認めがたい。
また、Aに差し入れた保証金は、Aとの関係で本物件の占有権原を確保し、店舗の営業を継続するために支出されたものと考えられ、これもYらの共同不法行為による損害とは認めがたい。
よって、Xの損害額は、Y1に差し入れた保証金(180万円余)に弁護士費用を加えた198万円と認められる。
本物件での店舗営業の売上・利益を全てXが取得していたこと、受託者であるXから委託者であるY1に委託料が払われていたこと、受託者であるXから委託者であるY1に保証金が預託されていたこと等からして、本委託契約の法的性質は、転貸借契約であったと認められ、これは原契約に違反するものとなる。
Yらは、本委託契約に基づくXの店舗営業についてAの黙示の承諾があった、Aによる原契約の解除は権利の濫用に当たる等とも主張するが、いずれも認められない(東京地裁 令和元年10月25日判決)。
本件は、宅建事業者と(実質)転貸人の説明義務違反が認められた事例です。宅建事業者であるY2は、原契約で第三者への業務委託が禁止されていることは知らなかった旨の主張もしていましたが、説明義務を尽くしたとはいえないとされ、転貸人Y1とともに責任が認められました。今回のケースはもちろんですが転貸借契約の媒介を行う宅建事業者としては、原賃貸借契約の内容を確認の上、転借人に必要な情報はきちんと提供した方が良いでしょう。
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