Nスタイルホームは創業13周年を迎えました。
平成25年12月、法人Y1は、不動産賃貸業を営む法人Y4とY4の取締役であるy5が所有する都内に所在するマンションの一室(本物件)を賃借する契約(本契約)を締結し、本物件を本店として、事業活動を行っていました。また同月、Y1の営業本部であるy2はY7名義で通信会社と契約している携帯電話回線(本件回線)をY4からレンタルする契約を締結しました。
平成29年頃、y2は「レアメタル等の先物取引を行えば、確実に多額の利益が得られる」としてxら(個人16人)を勧誘して、xらにY1との間で係る先物取引の仲介委託契約を締結させ、金員を預託させました(本件詐欺行為)。
y2は、その勧誘にあたり、本件回線を使用していました。
同年12月頃、Y1は本契約の解除をY4に申入れて退去し、xらはY1との連絡が取れなくなり、xらが預託していた金員が払い戻されない状態になりました。
平成30年5月、xら未返還の金員(計6,065万円余)の支払いを求めて、y2に対しては不法行為に、Y1に対しては使用者責任に、Y1代表取締役y3に対しては共同不法行為等にそれぞれ基づき、Y4・y5・Y7に対しても本件詐欺行為をほう助したとして、共同不法行為等に基づき、本訴を提起しました。その後平成31年2月に、Y4代表取締役y6に対しても同様に提訴しました。
令和2年1月、公示送達による呼出しを受けても出頭しなかったY1・y2・y3に対する請求をすべて認容する判決が言い渡されました。
一方Y4・y5・y6・Y7は、①y6の知人からY1の紹介を受けて本物件を賃貸することとしたものであり、②本件回線については、Y4は従前より携帯電話のレンタル事業を営んでいたところ、自社で保有できる回線数に制限があったことから、Y7が保有する本件回線の運用を受託し、これを通信会社から求められている本人確認手続きを行った上でy2にレンタルしたものであり、③本物件や本件携帯電話が、本件詐欺行為に使用されることを知っていた、または知り得たものではなく、過失はないとして争いました。
裁判所を次のように判示し、xのY4らに対する請求を棄却しました。
Xらは、Y4が本物件をY1に賃貸することとした経緯に説得的な説明がなされていないと主張するが、y6の知人の紹介で本物件をY1に賃貸したというy6の説明に、本物件が本件詐欺行為に利用されることをY4らが知っていたとの疑いを生じさせるほどの不自然さはない。
またxらは、本件携帯電話についても、Y4がY7から契約名義を借りていること等について説得的な説明がなされていないと主張するが、Y4は、平成25年以前から携帯電話回線のレンタル事業を行っていたところ、自社名義で保有することができる携帯電話回線数には上限があり、その不足分を補うためY7から本件携帯電話回線を含む複数の携帯電話回線の提供を受けていたこと、Y4はy2の本人確認手続きを行って本件回線をレンタルし、平成29年末頃までその利用料も問題なく支払われていたことから本件回線が本件詐欺行為に使用されることを知っていたといえるほどの不自然な点は見られない。
xらは、Y7は本件回線をY4に提供するにあたり、これが不正利用されないような対策を講じず、運用を委託し続けたことから、本件詐欺行為に本件回線が使用されることを知っていた、もしくは知り得たと主張する。
しかしながら、Y7がY4に本件回線の運用を委託した際に、Y4が本件回線を不正に利用するおそれがあったと窺わせる事情があったとは認められない。
よって、xらの請求はいずれも理由がないからこれを棄却する(東京地裁 令和2年3月9日判決)。
本件は詐欺行為を行った者への建物や携帯電話回線の賃貸人等に対する詐欺被害者らによる損害賠償請求が棄却された事例です。
一般的に、賃貸人は賃借人について一定の審査を行った上で物件を賃貸するのでしょうが、賃借人の業務内容や活動状況の詳細を把握することは困難であると考えられることから、係る判断になったものと思われます。
賃貸借の対象となった建物が犯罪行為に使用されたことに関する事例としては、賃借した事務所が、振込め詐欺関連の住所として警察ホームページで公開されていたことについて、賃借人による賃貸人や媒介事業者への損害賠償請求が棄却された事例もある一方で、原野商法を行った宅建事業者が事務所を賃借した際に、その宅建事業者の保証人となった個人株主に対する被害者からの損害賠償請求が認められた事例も見られます。
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