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近隣のマンションで、ある階のごみについて、警察官が数カ月間、毎日内容物を確認していたという話を聞きました。プライバシーの侵害になりませんか?
判決は一・二審とも適法の判断です。
経緯を説明します。平成25年10月頃からX警察署管内で事務所の侵入窃盗が多発したため、平成27年1月に捜査本部が設置されました。その手口から容疑者としてAが浮上し、Aが単身居住中の本件マンション(地下2階地上20階建ての18階の1室)の正面出入口と車両出口に向けて周辺建物に(各管理者の承諾を得て)監視カメラを設置しました。
同年7月頃、被害現場付近で警察官がAを失尾(※調査対象を見失うこと)する不手際があり捜査方針が再検討され、監視カメラの増設とAの出すごみ確認捜査が追加されました。
本件マンション管理規約では、清掃およびごみの処理は管理組合の業務とされ、管理組合が管理会社に業務を委託し、清掃は管理会社が清掃会社に委託して行う構成です。
平成28年4月、ごみ捜査の採用に際し警察が管理会社に連絡して協力と指示を受け、警察が管理会社と清掃会社の担当者らと方法を協議し、居住者が居住階のゴミステーションに捨てたごみを清掃員が地下1階のごみ置場に下ろし、そこで分別して専用の容器であるバッカンに収めて搬出する現行方式を、捜査の期間中は18階のごみに限り、同階内で専用バッカンに回収してゴミ置場に下ろし、そこで警察官が清掃員立会でバッカンの内容を確認する方式に変更し、同月8日頃からごみ捜査を開始しました(A逮捕前日の8月1日まで続行)。
同年5月16日正午頃、警察官がごみ置場で担当者立会のもと18階から回収したごみ袋のうち未分別状態の4袋を開封したところ、1袋から受取人Aの宅配便伝票、クリーニング納品票、長方形・太目の付箋大の紙片(1000円×287枚=28万7000円と記入)、タクシーのレシート等が発見され、警察は管理担当者から紙片とレシートの任意提出を受けて領置。15日未明、S市のB短大に侵入窃盗が発生し金庫から392万円余が窃取されたが、本件紙片は短大職員が13日に校内の券売機から集金した金員を金庫に収納した際に添えたメモの一枚と判明しました。
後日、逮捕起訴されたAは犯行を否認し、証拠として提出された本件紙片を違法収集証拠物であると排除を主張。東京高裁は、「居住者が不要物としてごみを各階のゴミステーションに捨て清掃会社が回収した時点で、ごみの占有は捨てた者から移転し、管理組合・管理会社・清掃会社が重畳的に占有する」「捨てた者は捨てた時点でごみに対する所有権を放棄し、以後の占有・管理は清掃会社に委ねられた」「保持者から任意提出を受けた警察は刑訴法221条により領置し、その物の占有継続の要否を判断する為に内容物を確認できる」と適法の判断でした(東京地裁 平成30年2月23日判決、東京高裁 平成30年9月5日判決、判例時報2424号)。Aは上告。
なお、最高裁2小 平成20年4月15日決定「捜査機関は不要物として公道上のごみ集積所に排出されたごみを遺留品として、同法221条により領置できる」との先例があります。
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