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公営住宅において、近隣に対して騒音被害 を与えていた賃借人に対し、賃貸人が建物明け渡し請求を行った事案において、賃貸人からの明渡請求を認めた事例(東京地裁 平25 年3月18日判決(控訴棄却) ウエストロー・ジャパン)
昭和49年、Y1(被告)は、X(原告/地方公共団体)が所有・管理する公営住宅(以下「本件建物という。)を期限を定めず使用許可を得た。
平成23年頃、Y1の次男Y2(被告)は、本件建物内において深夜に騒音を出したり、近隣住民をビデオ撮影したりした。なお、Y1は、平成23年7月以降本件建物に居住していなかった。同年11月7日頃、Xから公営 住宅の管理を受託している住宅供給公社(以下「公社」という。)の窓口は、Y1に対し、本件建物には使用を許可した名義人である Y1が生活していないため、このままでは、本件建物から退去になると通知した。
平成24年6月11日頃、公社の住宅管理部門は、Y1に対し、Y1の本件建物の不在状態及びY2による迷惑行為が続くならば、本件建物からの退去を求める旨の通知をした。同年8月25日ないし27日、Xの知事は、Y1とY2のそれぞれに対し、Y1が本件建物に居住していないこと、Y2が迷惑行為を行っていることから、同年9月30日をもって本件建物の使用許可を取り消すことを通知し、同日限り、本件建物からの退去を求めた。同年9月26日、Y2は、Xの住宅管理部門宛に、Y2が近隣住民から騒音等による被害を受けていること、そのため、Xに対し、損害賠償請求する用意があることなどを記載した意見書を提出した。同年11月21日、本件建物の近隣住民で構成する自治会は、Xの知事に対して、Y2の迷惑行為は平成23年頃から継続しているとして、Y2の迷惑行為を理由にY1 及びY2を本件建物から退去させるよう嘆願書を提出した。なお、Y1は、遅くとも同年 11月頃には本件建物に戻った。
同年11月24日、Xは、Y1及びY2に対し、本件建物の明渡しと、同年10月1日より建物明渡し完了に至るまで月額3万3000円の割合による金員の支払いを求めて提訴した。
裁判所は、次のように判示して、Xの請求を容認した。
次の事実が認められる。
①Y1が、平成23年7月から1か月以上本件建物を使用しなかったこと、
②Y2による迷惑行為中止の要請があったのに、Y1はこれを中止させなかったこと、
③近隣住民が、平成23年頃から使用許可の取消当時まで、Y2の行為により迷惑を被っていたこと。
認定した事実によれば、Xの公営住宅条例の次の使用許可取消事由に該当する。
①正当な事由がなく一か月以上公営住宅 を使用しないとき、
②この条例又はこれに基づく知事の指示命令に違反したとき、
③知事が公営住宅の管理上必要があると認めるとき。
公営住宅の運営に関する条例は、知事が使用者に対して「明渡請求をすることができる」条件を示しているが、請求が拒絶された場合には借地借家法に基づいて、請求の是非が争われることになる。
公営住宅法に基づく公営住宅の使用許可による賃貸借についても、借家法が一般法として適用され、同法第1条の2に規定(注1参照)する正当の事由がある場合には、同条により解約の申入れをすることができ、その場合は条例の定め(注2参照)は適用されないとされている(最高裁第二小法廷H2.6.22判決)。
注1・「建物の賃貸人は自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合に非ざれば賃貸借の更新を拒み又は解約の申入れを為すことを得ず」
注2・知事が公営住宅の公営住宅の管理上必要があると認めたときには公営住宅の使用許可を取り消し、その明渡しを求めることができる
本判決は、「知事の管理上の必要」の他に、「使用者が一か月以上使用していないこと」及び「知事の指示命令に違反したこと」を、契約を解除することの正当な事由になり得ることを示したものと解され、一般的な賃貸借においても参考となる事例だといえる。
なお、国土交通省住宅局が提示する「賃貸住宅標準契約書」でも、「本物件又は本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴な言動を行い、又は威勢を示すことにより、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせること(別表第1第7号)。」を使用上の禁止事項違反として契約の解除の理由としているので参照願いたい。
(調査研究部調査役)
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