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賃貸のお困りQ&A

購入中古住宅に傾斜があったとした買主の損害賠償請求につき、売主の瑕疵担保責任は否定されたが、建築会社への補修費用等への支払いは認められた事例

【ケース】

建築会社であるY1は平成15年10月頃までに、分譲会社Aから4棟の住宅(以下、うち1戸を「本件建物」という。)の建築を請け負いました。

平成16年2月から、Y1は、本件建物の建築に先立って、隣接建物の地下室および基礎の工事を行うこととし、隣地を掘削したが、その際、作業スペースを確保するため、境界線を越えて、本件建物の基礎の設置が予定されている土地(以下「本件土地」という。)の一部まで余掘りを行いました。

同年4月12日にY1は、隣地建物の地下室および基礎の工事を完成させ、同日に余掘り部分を埋め戻し、翌日に余掘り部分の転圧を行い、同年6月17日に本件建物を完成させました。

同月29日、Aは売主であるY2に本件土地建物を売却したが、Y2は、平成23年1月31日、買主であるXとの間で、引渡し後2ヵ月間の瑕疵担保責任を負う特約を付した売買契約を締結し、Xに本件土地建物を売り渡しました。

Xは本件建物に入居した直後、本件建物が傾斜していることに気づき、Y1に対し不法行為に基づき、Y2に対し瑕疵担保責任および不法行為に基づき、1770万円余の支払いを求めて提訴しました。

【解説】

裁判所は、次のとおり判示し、XのY2への請求は棄却し、Y1への請求は減額のうえ認容しました。

  1. 本件建物の傾斜は、余掘り部分の埋め戻しの際の締固めが不十分であったため、降雨の浸透による土粒子の移動等によって地盤の沈下が生じ、基礎が不同沈下したことで生じたものである認めるのが相当であり、余掘り部分の適切な埋戻しおよび転圧を行わなかったY1の過失について基づくものであるということができる。
  2. 本件建物の傾斜は、完成後、徐々に生じていったことがうかがわれ、傾斜の有無を感じる程度には個人差があり、建物で生活をする者が徐々に程度を増していく傾斜を感じづらいことも容易に想定できることからすれば、Y2が本件建物の傾斜に気づいていたとまで認めることはできない。以上によれば、Y2への瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めるXの請求は理由がない。
  3. 本件土地の修復は耐久盤を設置する工法によっても可能であることから、修復費用は700万円であると認めるのが相当であり、調査費用・弁護士費用とあわせ、Xの損害は793万円余であると認められる(東京地裁 平成27年4月10日判決)。

【総評】

建物の瑕疵につき、売主の瑕疵担保責任、告知義務違反は否定されたが、建物建築会社に対する損害賠償請求が認められた事案である。

不動産取引の専門家としての仲介会社においては、建物傾斜に関する紛争回避として、物件状況等報告書・設備表等に、売主が気付いた現象を詳しく記載するよう促すともに、建物内覧において、自ら傾斜により発生する現象に注意を払い、万一、懸念点が見受けられれば、建物インスペクションの実施を勧めるなど、紛争の未然防止を図る責務があることに留意いただきたい。

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