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賃貸のお困りQ&A

豪雨による駐車場内での浸水被害について貸主より浸水履歴の説明がなかったとした借主の損害賠償請求が棄却された事例

ケース

平成30年7月、法人である借主Xは、貸主Yとの間で、Y所有の地下駐車場の1区画および附属倉庫について月額賃料3万7800円、契約期間1年の賃貸借契約を締結しました。

翌月、本件駐車場の所在するA地区において、過去44年間の中で最大量である豪雨が発生し、本件駐車場内に雨水が侵入して、本件車両等が水没する事故が発生しました。

XはYに対し、賃貸借契約の締結時において、過去に2度の浸水事故があったことの説明を怠るという信義則上の説明(情報提供)義務違反があり、浸水被害に遭わないような予防策を講じるべき義務を負っていたなどと主張し、駐車していた車両および倉庫に保管していた商品の時価相当額等、1982万円余の損害賠償を請求しました。

解説

裁判所は次のように判示し、Xの請求を棄却しました。

  1. Xは、本件駐車場の過去2度の浸水事故について、本件契約締結時に説明(情報提供)すべき信義則上の義務を怠ったと主張するが、浸水事故の回数につき、2回あったことを示す証拠は本件駐車場の他の利用者からの供述の他にはなく、Yは、過去の浸水事故に、排水ポンプの増強や止水版の制作、備え付けをしたことが認められ、同程度の降雨には、十分に対応できる設備上の措置が講じられていたことから、本件駐車場の利用を申し込む者にあらかじめ提供しておくべき重要な情報であるとまではいえない。
    また、Xが本件駐車場を借りるにあたり、特に浸水事故の有無を重視することが表明されていないことから、過去の浸水事故の事実を説明しなかったことを説明義務違反の不法行為とする請求には理由がない。
  2. Xは本件事項当日、Yは賃貸人として、本件事項の発生を予見することができ、止水版を設置する事故防止措置をとることができたのに、これを行わなかった最医務不履行がある旨主張するが、本件豪雨は、A地区内の過去44年間における最大雨量を記録しており、極めて短時間に過去に例のない降雨であったことから、Yが具体的に予見することができたとは認められない。
    また、各注意報が発表された段階で止水版を設置することは、豪雨に至ることが確実とはいえないにもかかわらず、本件駐車場の利用車両の入出庫を必要以上に妨げるものになるというべきことからすれば、そのような回避措置をとるべきであったともいえない。
    以上によれば、Yが本件豪雨の発生を予見し、止水版を設置しなかったことが、この事故防止措置義務違反の債務不履行となるものではない。
    よって、Xの請求はいずれも理由がないのでこれらを棄却する(東京地裁 令和2年3月26日判決)。

総評

近年、「過去に例のない」、「観測史上初」といったさまざまな災害または水害の被害が発生しています。宅建事業者は、契約する物件が水害ハザードマップ上どこに所在しているのか情報提供する義務があり、仮に、浸水想定区域の外にある場合でも、水害のリスクがないと取引の相手方が誤認することがないよう配慮することが必要でしょう。

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