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賃料月額の6.25倍の敷引特約は無効とした事例

賃借人が賃貸人に対し、敷引特約の無効を訴えて敷金の返還を求めた事案において、原審は敷金から未払水道料金を控除した金額の請求を認容したため、賃貸人が控訴し、賃借人も未払水道料金が控除されたことを不服とし、附帯控訴、割高な水道料金の説明が無かったとして、損害賠償の支払いを求めて請求を拡張したが、控訴、附帯控訴、拡張された請求の全てが棄却された事例(神戸地裁平成24年8月22日判決 判例集未登載)

1. 事案の概要

  1. 賃借人Yは、賃貸人Xとの間で、平成19年2月13日ころ、次の内容の賃貸借契約を締結し、Xに対し敷金80万円を交付し、本件居室の引渡を受けた。

    賃貸期間
    H19.2.20~H21.2.19
    賃料
    1箇月金8万円
    保証金
    金80万円
    敷引
    金50万円

    Yは本件賃貸借契約に関し、敷引金のほかには礼金等の一時金の支払いをしていない。

  2. Yは、Xとの間で、平成21年2月19日、賃貸借契約を従前と同一の条件で更新した。Yは、平成21年1月ころ、Xの代表者の妻Aにバスルームの使用方法に注意を受けたことを受けて、同年8月31日、解約を申入れ、同日、Xに対し本件居室を明け渡した。
  3. Yが敷引特約は無効であるとして敷金の返還を求めて控訴し、認められたことから、Xは控訴した。

2. 判決の要旨

裁判所は、次の通り判示し、Xの控訴、Yの附帯控訴及び拡張した請求を棄却した。

  1. 平成22年11月9日における本件建物の近傍同種の建物の賃料(管理費等も含む。)は、「a区、2LDK、ペット相談可」の条件では51件あり、月額最低4万5000円、最高11万8000円、平均は8万3235円(四捨五入)である。
    なお、Xが提出した資料によれば、平成22年11月から平成23年1月における本件建物の近隣地域の賃料は、本件居室と同じ2LDKの間取りのもので5件あり、月額最低8万3000円、最高15万円、平均は11万2600円であり、これを前記の平均額と平均すると、約9万7918円(四捨五入)となる。
  2. 消費者契約法10条は、消費者契約の条項が、民法等の任意規定の適用による場合に比し、消費者の権限を制限し、又は消費者の義務を加重するものであることを要件とする。
    居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、特約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。そして、賃借人は特約のない限り、通常損耗についての原状回復義務を負わず、その補修費用を負担する義務も負わない。そうすると、賃借人に通常損耗等の補修費用を負担させる趣旨を含む本件敷引特約は、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するものというべきである(最一小H23.3.24判決)。
    本件敷引特約に礼金ないし権利金の支払いという意味が含まれているとしても、そのことは本件敷引特約に通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨が含まれていることを否定するものではない。
  3. 賃借人は、通常、自らが賃借にする物件に生ずる通常損耗の補修費用の額については十分な情報を有してない上、賃貸人との交渉によって敷引特約を排除することも困難であることからすると、敷引金の額が敷引特約の趣旨から見て高額に過ぎる場合には、賃貸人と賃借人との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差を背景に、賃借人が一方的に不利益な負担を余儀なくされたものと見るべき場合が多いといえる。
    そうすると、消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段な事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である(最一小H23.3.24判決)。
    本件賃貸借契約は2年半あまりの比較的短期に終了しており、Xが現に支出した補修費用も9万8175円にとどまることからすると、本件敷引額は本件居室の通常損耗等の補修費用として通常想定される額に比し相当高額と言わざるをえない。
    また、本件居室の賃料は月額8万円であり、敷引額はその6.25倍である。
    そうすると、本件においてYは礼金等の一時金を支払う義務を負っていないことを考慮しても、本件敷引額は通常損耗等の補修費用及び賃料額に照らし、高額に過ぎると評価せざるをえない。
    そして、本件建物と近傍同種の物件の賃料相場は、高額な平均値を採用したとしても月額9万7918円であり、本件居室の賃料である8万円は、これに比して大幅に低額であるとは認められないから、前記特段の事情は認められない。
    したがって、本件敷引特約は、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効と解するのが相当である。(「未払水道料金の有無」「バスルームの用法違反及び水漏れ被害の有無」「水道料金の説明義務違反」については省略。)

3. まとめ

引用された最高裁第一小法廷判決(RETIO82-150)は、とりあげた事例の敷引特約を有効としたが、無条件で有効としたものではない。敷引金の額が高額に過ぎる場合は特段の事情がない限り無効と判示し、敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、無効であると言うことはできないとしたものである。本事例において裁判所は、敷引金の額がその趣旨に照らし高額に過ぎると評価したうえで、賃料が相場に比して大幅に低額である等の特段の事情は認められないとして特約を無効とした。

敷引特約を設ける場合は、賃借人に特約内容を説明し、明確に認識してもらった上で契約することは当然であるが、敷引額は適正な額とすることが必要である。(調査研究部調査役)

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