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賃貸のお困りQ&A

借地権売買における土地の欠陥について

今回のご相談

当社は地主の承諾のもと、BさんがAさんから借地権を購入する取引を仲介しました。

仲介の際には、地中埋設物が心配だったので、Aさんが地中埋設物に関する契約不適合責任を負うことを契約書で定めました。

Bさんが購入後に調査したところ、地中から埋設物が見つかったため、Aさんにその除去費用を請求しました。しかし、Aさんは「目的物である借地権ではなく、土地の瑕疵であるから地主に修繕させるべき」と主張し、支払いを拒んでいます。

除去費用をAさんに請求できないのでしょうか。

回答

一般に、借地権の売買において敷地の欠陥に関し売主に損害賠償請求することは困難です。

ただ今回のケースでは、本件土地の不具合について売主が契約不適合責任を負う旨の合意があったものとして、Aさんに対して除去費用相当額を損害賠償請求できる可能性が高いです。

解説

1. 本件について

本件に類似の事例について、裁判例(東京地裁令和2年2月27日判決)があります。

同裁判例では、売主の契約不適合責任を定める本件条項が設定されており、かつ、本件条項が設定されるに至った経緯に関して、「買主が士地に地中障害物が含まれるリスクを懸念して売主が土地の不具合について契約不適合責任を負うことを要求し、これを売主が受け入れたことにより本件条項が売買契約書に追加された」という事情がありました。

裁判所は、本事情から、本件土地の不具合について売主が契約不適合責任を負う旨の合意があったことは明らかであるとして、買主の損害賠償請求を認めました。

本件についても、他の事情によりますが、同様にAさんに対して損害賠償請求ができる可能性が高いと言えるでしょう。

2. 借地権売買における目的物の欠陥とは?(借地権売買の場合に、敷地の欠陥は目的物の欠陥になるのか?)

では、「借地権」の売買契約において本件条項ないし本件条項と類似の条項が存在しない場合であっても、売主は「土地」の不具合に関して契約不適合責任を負うことになるのでしょうか。

この点が問題となったのが、最高裁平成3年4月2日判決です。この事案では、借地権付建物の売買において、崖の擁壁に水抜穴がなかったことが原因で擁壁に亀裂が生じ土地に一部沈下と傾斜が発生したことから、買主が借地権付建物の売主に対して敷地の欠陥を理由として担保責任に基づく損害賠償請求を行いました。

最高裁は、借地権付建物の売買契約で売主が負担する担保責任に関して特約が定められていない場合において、売主が敷地の欠陥を理由とする担保責任を負うのかという点について、売買対象が借地権であるときは、敷地に欠陥があっても、買主は売主に対して担保責任に基づく損害賠償請求を行うことはできないと判断しました。

理由としては、建物とともに売買の目的とされたのは建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるから、賃貸人が修繕義務を履行することにより解消される敷地の欠陥については賃貸人に対して修繕を請求すべきものであること、敷地の欠陥は賃貸借目的物の欠陥であり、売買の目的物である賃借権の欠陥ということはできないこと等を挙げました。

なお、同最高裁判決は、土地の賃貸人が修繕義務を履行することによっても解消することができない欠陥については、売買の目的物である賃借権の欠陥と判断される可能性があり、この場合、借地権の売主は担保責任に基づく損害賠償義務を負う余地があることにも言及しています。この点はご留意ください。

3. 惜地権の売買において気を付けておくべき事項(土地の欠陥について)

以上のように、借地権売買の場合、売買対象は土地ではなく土地を使用するための借地権であることから、一般的には、土地に欠陥があっても借地権の売買における目的物である賃借権に欠陥があることにはなりません。従って、借地権売買の買主は、売主に対して、土地の欠陥の修繕を請求することはできないと考えられています。

土地に欠陥があった場合に、借地権売買の売主に欠陥の修繕を請求できるようにしておくためには、売買契約書において、売主が土地の欠陥の不具合の修繕義務を負うことを特約で合意しておくことが必要となります。そのため、借地権売買の取引に関与する場合は、特別な合意をするかどうか、特別な合意をする場合にどのような内容とするかを慎重に検討する必要がありますので、十分に注意してください。

4. その他、借地権付建物の売買において気を付けておくべき基本的事項

借地権は「賃借権」(民法第601条)と「地上権」(民法第265条)の2つに分類されます。物権である地上権は地主の承諾がなくても譲渡することができるのに対して、債権である賃借権は地主の承諾がないと譲渡することができないという違いがあります。

借地権付建物の売買契約では、建物所有権とともに土地の利用権である借地権も買主に移転することになりますので、借地権が「賃借権」の場合に地主の承諾がない状態で借地権付建物の売買契約を締結して建物を引き渡してしまうと、賃借権の無断譲渡を理由に土地の賃貸借契約を解除されてしまうリスクがあります(民法第612条)。

そのため、借地権付建物の売買に関与する場合は、土地に設定された借地権が「賃借権」なのか「地上権」なのかを必ず事前に確認し、「賃借権」だった場合は、売買に際して必ず事前に地主の承諾を得ることを忘れないように注意することが必要です。

なお、借地権の譲渡について地主に不利となるおそれがないにもかかわらず地主が譲渡を承諾しない場合、借地権者は裁判所に申し立てることによって「承諾に代わる許可」を得ることができるという制度があります(借地借家法第19条)。

用語解説

●「惜地権」

借地権とは次の2つの権利のどちらかのことである(借地借家法第2条)。

  1. 建物を所有する目的で設定された地上権
  2. 建物を所有する目的で設定された土地賃借権

従って、資材置場にする目的で設定された土地賃借権は「借地権」ではない。
また青空駐車場とする目的で設定された土地賃借権も「借地権」ではないことになる。

参考法令

●「借地借家法第19条」

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、 裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

この場合において、当事者閻の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

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