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地面師とは、土地を利用した詐欺師(詐欺集団)です。その手口は、登記制度や行政手続きの盲点を利用して、
などを行う者です。
地面師による詐欺被害は買主に莫大な被害を及ぼします。仲介であれば売主の本人確認義務との関係で重大な仲介責任を負う場合があります。また、マンション建築のためにお客様が土地購入をする場合、分譲で仕入れをする場合なども同様に注意が必要です。
何事にも絶対の対策はありませんが、どんなことに気づけたらよいか、事例を通じて考えてみましょう。
祝田橋ホテルは、インバウンド旅行者が増加していることを受け、新たなホテル建設を計画していた。ある日、祝田橋ホテル事業開発部長A氏のところに、不動産ブローカーだるB氏から有料物件の話が持ちかけられた。B氏が提案した土地は、ターミナル駅ではないものの、山手線沿線駅より徒歩3分の土地(314m2)。時価6億7000万円。所有者はC氏という高齢女性1人で、抵当権も一切設定されておらず、長らく駐車場として利用されていたとのことだった。
さっそく、A氏は、ブローカーB氏、自社側の仲介会社であるX不動産立ち合いのもと、所有者C氏(女性、70代)と面談した。C氏は物腰が穏やかな富裕層という雰囲気の女性で、面談にはC氏の弁護士も同席していた。
C氏からは、先祖代々受け継いだ土地なので、どんなホテルを建てるのか、という質問があった。またブローカーB氏から「どこから話が漏れたのか、祝田橋ホテルさん以外にも何件か、すぐ買いたいという申し出が来ている。話を進めるなら急いでほしい」という話があった。売買の流れは所有者CからブローカーB氏の㈱αがいったん買い、売買予約仮登記を入れ、㈱から祝田橋ホテルが買い取ることとされた。翌日X不動産を通じて祝田橋ホテルは6億7000万で買付を入れた。後日売買契約書案とともに、本人確認書類としてパスポート、印鑑登録証明などの写しが送られてきたが、これらに疑わしいところはなく、売買契約日は7月10日)同日売買予約仮登記設定)、決済日は7月31日とされていた。
X不動産の担当であるD氏は、㈱αが本件土地をいったん買い入れるという流れに違和感があったため、顧問法律事務所であるY法律事務所に売買契約書のリーガルチェックを依頼したところ、Y弁護士から「この取引はやめた方がよい」という連絡があった。Y弁護士の話によれば、今回売買の仮登記を経由するB氏の会社である㈱αは休眠会社を乗っ取った実体のない会社である可能性が高いとのことだった。
商号 | ㈱α |
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本店 | 東京都城央区永山町6番9号優麗ビル406 |
広告をする方法 | 官報に掲載する方法により行う |
会社設立の年月日 | 平成6年10月1日 |
目的 |
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発行可能株式総数 | 2000株 |
発行済み株式の総数並びに種類及び数 | 発行済株式の総数 200株 |
資本金の額 | 金1000万円 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、これを譲渡によって取得するには、株主総会の承認を要する |
役員に関する事項 |
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登記記録に関する事項 |
平成28年12月1日
平成29年7月29日 |
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。(閉鎖登記簿その2)
※平成28年12月に城南区から城央区に本店移転したことによって、城南区の登記は閉鎖され、城央区所在の新たな法人登記記録が作成され、過去の登記の不自然さを見かけ上隠ぺいすることができます(閉鎖登記簿その2)
商号 |
ABC広告㈱
㈱α |
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本店 | 東京都城南区川原1丁目2番5号当散ビル |
広告をする方法 | 官報に掲載する方法により行う |
会社設立の年月日 | 平成6年10月1日 |
目的 |
平成28年12月1日変更 |
発行可能株式総数 | 2000株 |
発行済み株式の総数並びに種類及び数 | 発行済株式の総数 200株 |
資本金の額 | 金1000万円 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、これを譲渡によって取得するには、株主総会の承認を要する |
役員に関する事項 |
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登記記録に関する事項 |
設立
平成28年12月1日 |
※下線のあるものは抹消事項です。
※平成28年12月に旧代表者が辞任し、役員、商号、本店所在地、会社の目的が一斉に変更されておりますが、かかる登記は事業継続する会社の登記としてはきわめて不自然です。このことから犯行グループが休眠会社である「ABC広告㈱」を乗っ取り、「㈱α」という犯行のための会社をつくったと推測されます。
そこで、D氏らが物件付近の店舗や地場の不動産などに聞き込みを行ったところ、所有者のC氏は、認知症が進み、1年前グループホームに入所していること、おそらく話ができるような状態ではないことがわかり、祝田橋ホテルは詐欺未遂事件として警察に相談した。
警察は、地面師詐欺事件として捜査を進めたが、C氏、B氏の行方は知れず、パスポートも偽造されたもので、印鑑登録証明はC氏をかたる何者かに不正取得されたものであることがわかった。また、C氏の顧問弁護士として同席した人物は「自分は呼ばれただけ」「C氏もB氏も知らない」などと言うばかりで、ついに地面師グループが逮捕されることはなかった。
不動産の高額取引の際は、客観的な証明書、登記などを入念に調べるとともに、土地所有者が同一であるかなど近隣への聞き込みをするなど多角的に調査をして、地面師被害を防ぎましょう。
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