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過去の雨漏りを秘匿しビルを購入させたとした買主による売主および媒介事業者に対する損害賠償請求が棄却された事例

【ケース】

買主Xは平成23年12月、売主Y1との間で、宅地建物取引事業者Y2の媒介により、代金4774万円で本件ビルの売買契約を締結しました。
平成23年3月、Xは本件ビルのテナントから、雨漏りがひどいので速やかに補修するようにとの強い要請を受け、平成26年から平成27年、数回にわたって防水工事を行いました。
Xは「本件ビルはY1の所有で、Y2が管理していた平成10年4月から平成23年12月までの間に、雨漏りがたびたび発生していたことをY1・Y2は十分認識していたにもかかわらず、共謀の上、その事実を秘匿して本件ビルを購入させた不法行為により損害を被った」として、雨漏り工事の施工費等、471万円余の賠償請求をする本件訴訟を提起しました。

【解説】

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を棄却しました。

  1. 本件ビルのテナントAは、平成16年7月頃の大雨の際、店舗内の窓枠から雨漏りが生じ、厨房の壁からも水のしずくが垂れることが確認され、本件ビルの管理をしていたY2に何度も対処を求めたと主張しており、また、テナントBは、平成15年か平成16年の夏の終わり頃、天井の端の隙間から水が滴り落ちはじめ、瞬く間にずぶぬれで営業ができない状態となり、電話機が3台壊れる被害にあったと陳述している。
  2. ところで、本件ビルを管理していたY2の担当Cは、日々の管理業務について、手帳に詳細を記録しており、また、Cが不在の間にY2が受けた電話については、平成16年5月22日から同年8月18日までの期間の電話連絡帳が存在し、同連絡帳には入退去や物件全般の故障、不具合全般についての記載がある。Cの手帳は管理業務のために使用され、人名、連絡先、物件、対応内容等が記載されていた。電話番号帳は会社の管理業務のために作成され、信用性が高いものと認められるが、AおよびBの陳述を裏付ける記載はない。
  3. また、Aが主張する被害は、窓枠から雨が入り、水がたまったり厨房の壁からしずくが垂れたりしたことによるものであり、Cはコーキングの経年劣化が原因であることとして、これに対処しているが、それらはただちに「雨漏り」とは評価しがたいものである。
  4. その他、本件全証拠によるも、本件ビルの売却時点において、本件ビルに「雨漏り」が発生しており、これをY1およびY2が認識していたと認めるに足りる証拠はないから、Y1およびY2の共同不法行為は成立しない(東京地裁 平成28年8月23日)

【総評】

本件は、売主およびビルを管理していた宅建事業者に対して、過去の雨漏りを知りながら雨漏りはなかった旨の説明をし、購入させたとして、買主が売主らによる共同不法行為を追求したが、テナントの陳述が管理会社の担当者の手帳や電話連絡帳の記載内容により、証拠として採用されなかった事例です。

近年、台風や集中豪雨などにより、雨漏りに関する相談も増える傾向にありますが、例えば、中古住宅の取引について、建物状況調査(インスペクション)の活用は紛争予防に有効であると思われます。

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