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賃貸のお困りQ&A

賃貸物件が契約書に記載された面積より狭いことが発覚した場合の対応

今回のご相談

当社(X)は、Aマンションの4階の一室(401号室)を所有しており、居宅として、Yさんに賃貸していました。賃貸借契約書では、対象面積を表示し、賃料を決めていましたが、1年ほど経過したところで、Yさんから突然、「実際の面積が、賃貸借契約書上の記載面積よりも狭いので賃料の一部返還と賃料の減額をしてほしい」と言われました。

Yさんによると、「Aマンションの401号室のちょうど真下の301号室が現在賃貸物件として、他の不動産会社のウェブサイトに掲載されているのを偶然発見した」ということで、Yさんから「ちょうど真下の部屋で間取りが全く同じであるのに面積が違っていた。同じ間取りであれば、面積が同じであるはずなので、賃貸借契約書の面積は間違っているのではないか」と主張されています。

当社でも調査したところ、Yさんの言う通り、実際の面積が賃貸借契約書で表示された面積よりも狭いことが判明しました。

このような場合、Yさんの言う通り、賃料の一部を返還したり、賃料の減額をしなければならないのでしょうか。

回答

実際の面積と賃貸借契約書上の面積が異なるとき、それが、いわゆる「数量指示賃貸借」と認められる場合には、契約目的物の数量不足(契約不適合)として、賃料の一部返還や賃料減額に応じなければならない可能性はあります。しかし、下級審裁判例などからすると「数量指示賃貸借」と認められる場合は、多くないと考えられます。

従って、契約書に表示された面積が、単に実際の面積と異なることが判明しただけでは、既払いの賃料の一部返還や賃料の減額に応じる必要があるわけではありません。

解説

1. 数量指示賃貸借について

マンションやオフィスなどの貸室の賃貸借契約において、壁芯、内法の面積の計算方法の違いや教共用部分の面積を加算しているかどうかなどにより、賃貸借契約書に表示された面積が実際の面積と異なる場合があります。

この場合、使用上の支障が生じなかったときは問題となりにくいですが、賃借人の立場に立つと、実際に使用できる面積が狭いという不利益を被っているように感じられるため、既払いの賃料の一部返還や将来の賃料の減額を求められることがあります。

このような賃借人による請求が認められるかどうかは、当事者間で締結された賃貸借契約が「数量指示賃貸借」、すなわち「数量を指示してなした賃貸借」といえるかどうかにより結論が異なることになります。

ここで、下級審裁判例によると、「数量を指示してなした賃貸借」というには、①当事者が目的物件が実際に有する面積を確保するため、賃貸人が契約において一定の面積のあることを表示し、かつ、②これを基礎として賃料等の定められたものであることを要すると解されています(東京地裁 昭和58年3月25日判決[判例タイムズ500号183頁]など)。

従って、当事者間の賃貸借契約が①および②の両方を満たす場合には、数量指示賃貸借に該当するということになります。

2. 数量指示賃貸借に該当する場合の効果

数量指示賃貸借に該当する場合には、「引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないもの」として、賃貸人は、契約不適合責任を負うので、面積不足部分について、賃借人による賃料の減額請求が認められることになります(民法第559条、第563条)。

2020年4月1日以前の民法(以下、「旧民法」)では、目的物の数量不足について、旧民法第565条(同563条で賃貸借契約に準用)に定めがあり、「数量指示賃貸借」という類型がありましたが、民放改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に改められたことに伴い、目的物の「種類、品質または数量」に関しての契約不適合という形で、一つにまとめられました。

ご相談のケースについては、①当事者が目的物件が実際に有する面積を確保するため、X社が401号室の賃貸借契約書において一定の面積のあることを表示し、かつ②1m2または1坪当たりの賃料を基礎に、面積を乗じて総額賃料を算出するなど面積を基礎として賃料等を定めた場合、「数量指示賃貸借」に該当することになり、Yさんからの賃料の減額請求が認められ、その結果、賃料の減額に応じなければならない可能性があります。

しかしながら、401号室の賃貸借契約書で表示された面積が賃料算出のための一応の基準として表示されたに過ぎないのであれば、「数量指示賃貸借」に該当するとはいえないのであり、Yさんからの賃料の減額請求に応じる必要はありません。

3. その他

なお、「数量指示賃貸借」に該当しない場合であったとしても、賃貸人が面積の相違を知りながら賃借人に伝えず、賃借人が面積を誤信し、それによって損害を被ったといえるような場合には、賃貸人による説明義務違反として債務不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

また、「不動産の表示に関する公正競争規約第23条(8)では、「物件の面積について、実際のものよりも広いと誤認されるおそれのある表示」が不当表示とされているので、この点も注意してください。

4. まとめ

建物の一室を賃貸する場合に、賃料単価を1m2当たりの金額や1坪あたりの金額で算出して、床面積を乗じる形で、賃料を定め、それを賃貸借契約書に示している事例も少なくないと思われますが、当事者が具体的な面積を重視しておらず、目的物特定のため記載されたに過ぎないのであれば、数量指示賃貸借には当たりません。たとえ、賃料単価が記載されていても、常に「数量指示賃貸借」に該当するというわけではありません。

反対に、賃貸借契約書に、賃料単価が明記されていなくても、当事者間で契約締結に際し、単位面積あたりの単価を定め、それに面積を乗じて賃料額を決めた事情がある場合や契約の目的に関して賃貸人が表示面積を保証するなど、賃貸対象の面積が重要な意味を持つ場合には、「数量指示賃貸借」と判断されたり、賃貸人が損害賠償責任を負うケースも考えられます。

実務上の対応としては、賃貸対処の契約面積を正確に表示することが大切であり、また、共用部分(廊下、階段、エレベーター等)の面積も含まれるかが問題となることがありますので、この点も明確にする必要があります。

ただし、面積の算出は、計算方法によって誤差が生じますし、新築時のパンフレットなどの資料に記載された面積と登記簿上の面積が違う場合も多々あり、また、ワンフロアを仕切って貸室にしている場合など登記簿上貸室の面積がはっきりしていないこともあります。

従って、賃貸借契約締結の際には、賃貸対象の面積に注意を払うとともに、「契約書に記載された面積と実際の面積(実測面積)が異なっても賃料を減額しない」旨を契約書に明記することや、契約面積に共用部分を含むかどうかを明確にすることを考慮すべきでしょう。

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