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平成24年3月26日、教育事業会社である借主Xは、借主Y1と事務所ビルの一室を試験会場として使用することを目的に賃貸借契約を締結しました。
Xは契約前の内見時、同ビルにライブハウスの存在を認識しましたが、騒音の確認作業は行いませんでした。4月6日、Xは同貸室内で機器の設定作業を行った際、演奏の音や歌声が、うるさいと感じる程度の音量で聞こえると認識。4月10日、本件契約は無効であり解約する意思を表示。5月1日、Y1に同貸室を引渡し、敷金全額の返還を受けました。
Xは契約締結に際し、「Y1はXに対し、知りまたは知り得た本騒音問題を説明する義務がある。仲介会社のY2とY3は、本件契約を仲介した宅地建物取引業者として、同貸室について騒音問題があるか否かについて情報収集・調査を行い、Xに対し提供する義務があるところ、重要事項説明において昼間にも演奏があり、騒音問題があることを説明しなかった説明義務違反がある」として、203万円余の損害賠償請求訴訟を提起しました。
裁判所は次のとおり判示し、Xの請求を棄却しました。
(1)本騒音問題によりXが解約を余儀なくされたと認めるに足りる的確な証拠はない。
(2)Yらが、試験会場として使用するのに支障を生じる程度の騒音問題があることを知り、または特別な調査を行わなくとも知り得たことをうかがわせる的確な証拠もない。
(3)一方Xは、内見において同ライブハウスがあることを認識しており、契約前に、演奏の音が支障とならないかを検討する機会があったと認められるが、未確認のまま、契約を締結したというのであり、またYらに対し、単に同貸室を試験会場として使用する目的だけでなく、試験を主催する会社として有しまたは少なくとも有すべき知見を告げた形跡はない。
(4)以上によれば、契約前に、同貸室および建物を見分して同ライブハウスの存在を認識し、試験会場としての使用に耐え得るかを判断する知見を生かす機会があったXから、同貸室内において演奏が聞こえるか否かの確認・調査を求められてもいないのに、Yらにおいて、進んで確認・調査を行いその結果を説明すべき注意義務をXに対して負っているとは認められない。よって、Xの請求には理由がない(東京地裁 平成25年7月22日判決)。
不動産会社は、賃貸借の仲介に当たり、契約が支障なく履行され借主がその契約の目的を達し得るよう配慮して、仲介業務を処理すべき注意義務があるが、借主の使用方法が本件のように特殊な場合、借主が貸借目的を達するかどうかについて、借主の特別な意向を、把握し確認することは困難な場合が多い。
本件のようなトラブルを避ける観点から、契約前の内覧においては、借主により専有部分だけではなく、共用部分や他テナントの状況についても、十分な確認を行ってもらうことが必要と思われる。
※(一財)不動産適正取引推進機構 実際にあった判例からを参照しています。
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