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賃貸のお困りQ&A

建物の一区画および自動販売機・公衆電話の設置部分の区画の賃貸借は一体として借地借家法26条1項適用の契約である

【ご相談】

市民病院が地下の売店に立退きを求めた裁判の結果を教えてください。

◎地方自治法の使用許可と賃貸借契約による法律関係は当然異なる

まずは状況から説明します。

  • A株式会社は平成10年頃、K市から市民病院地下一階の区間(3面が壁。床面積8.07m2)につき地方自治法の行政財産の使用許可を得て売店等の営業を開始しました。行政財産の許可使用は借地借家法の適用がなく(地方自治法238条の4第8項)、公共用に供する必要が生じたときは使用許可を取り消すことができます。
  • 平成21年4月1日、病院の建物所有権と運営がK市から地方独立行政法人Bに移管された結果、BとAは建物区画(売店)、自動販売機8台分6.4m2(5台は売店の至近、3台は1階)と公衆電話10台分6.4m2の各設置部分(院内通路)の区画の賃貸借契約を締結。「公用、公共用その他必要とするときは契約を解除することができる」との条項があります。
  • 平成29年3月31日、BAは契約を更新し、期間を同年4月1日から平成30年3月31日と約定しました。
  • 平成29年9月22日頃、BはAに書面で本件各契約の更新を拒絶すると通知。病院の赤字改善策として北館地下一階フロアを全面改修し、食堂をリニューアルしてコンビニエンスストアを設置するとの理由でした。
  • BはAに対し平成30年4月、「本件各賃貸借契約が平成30年3月31日期間満了により終了した。仮に借地借家法の適用があるとしても更新拒絶により同日終了した」と明渡しを提訴しました。

訴訟は、各契約が借地借家法26条1項適用の契約に該当するかが争点で、該当すれば更新拒絶に正当事由の具備を要し、事由の不備は法定更新をもたらします。

神戸地裁は、「建物を一部であっても障壁等で他の部分と区画され独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは同法26条1項の建物と解すべきである(最高2小 昭和42年6月2日判決)。売店部分はこの建物に当たる」と判示しました。

自動販売機の契約は、売店の契約書中に記載され、機器の管理は売店が担当。また、公衆電話の契約書は売店の書面と同一日付で作成され契約条件もほとんど同一でした。テレホンカードが売店で販売され、機器の管理は売店が担当しており、「3区画の賃貸借は一体の契約として借地借家法26条1項適用の契約に当たるというべきである」、「原告は公共目的の使用の必要性の優先を主張するが地方自治法の使用許可に基づく法律関係と本件賃貸借契約による法律関係は当然異なるもので借地借家法上の正当事由の判断に当たり原告の必要性が常に優先するということはできない」「被告は平成10年から20年間、本件各区画で売店等を営んでおり営業を継続する必要性が高いほか、本件各区画が改修を必要とするほど、老朽化していたと認めることはできず、原告が被告に立退料の支払提示をしていないこと等からすると正当事由があると認めることはできないから更新拒絶は効力を生じない」と原告の請求を棄却しました。
(神戸地裁 令和元年7月12日判決)(最高裁ホームページ最近の裁判例 下級裁判所判例速報)

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