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中古マンションの売買において、買主が主張する排水不良は経年相応として、損害賠償請求が棄却された事例

【ケース】

個人である買主Xは、宅建事業者である売主Yと中古マンション一室の売買契約を締結し、引渡しを受けました。

引渡し後、Xが、流し台に水を流すと、残飯や汚水の逆流が発生したため、調査したところ、排水管に詰まりが発生していることが判明しました。
Xは以下を主張し、逆流の調査費用と補修費用等の支払いを求め、Yを提訴しました。

  1. 排水管に詰まりがある本物件は、居住用マンションとして期待される品質および性能を欠き、また、Yは「新築同様にフルリフォーム完了!」と広告表示して売り出し、新築同様の品質および性能の具備を保証したといえるから、排水管に詰まりが存在することは、瑕疵に当たるというべきである。
  2. 建物の瑕疵は、買主に期待される通常の注意を払っても発見し得ない性質のものであるから、隠れた瑕疵に該当し、Yは瑕疵担保責任により、Xが被った損害を賠償する責任を負う。
  3. 売買契約では、共用部分の持分も売買対象であり、Yの瑕疵担保責任は否定されず、また、宅建事業者であるYが売主になる場合には、宅建業法40条から、瑕疵担保責任を制限する特約によってYが免責されることもない。
  4. Yは、買主の意思決定に影響を及ぼす重要な情報や重大な不利益をもたらすおそれがあり、契約締結可否判断に影響を及ぼすことが想定される事項に関し、調査を行わず、説明をしなかったのであるから、説明義務違反による不法行為が成立する。

【解説】

裁判所は、次の通りに判示し、Xの請求を棄却しました。

  1. 流し台に一度に多量の水を流すと一時的に水が滞留し、排水口から空気が噴出する場合も認められるが、流水の状況は短時間で流れきる程度のものであり、流し台使用に特別支障になるとは認め難い。
    また、建物は昭和43年12月築で、売買契約当時、建築後44年以上が経過しており、設備等に新築物件に劣る部分があることは当然に想定され、このような流水状況で築年を経過した中古マンションとして通常有すべき品質または性能を欠くものであったとは認め難いといわざるを得ない
  2. 建築後、相当年数を経過した中古マンションであったことは売買契約の前提とされており、リフォームが行われていたとしても、新築物件と同様の品質および性能を備えることはおよそ期待できる状況にはなかったと考えられ、このような広告表示でも、瑕疵の存否に関する判断が左右されるものではない。
  3. 以上のとおり、瑕疵が存在していたと認められず、Yが、売主の瑕疵担保責任による損害賠償責任を負うことはない。また、Yがその説明義務を負う余地はなく、不法行為による損害賠償責任を負うことはないため、Xの請求は理由がない(東京地裁 平成28年4月22日判決 ウエストロー・ジャパン)

【総評】

築年数の経過した建物にリフォーム工事を行った場合には、買主とのトラブル防止の観点から、宅建事業者は、リフォーム工事の具体的な内容や、新築の建物と比較して、機能面が必ずしも十全とはいえない場合があることをよく説明しておくことが望ましいでしょう。

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