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本人から委任状をもらって裁判を起こした代理人が、代理人権限の証明がないとして門前払いの判決を受けました。どういうことですか?
訴訟の委任には、訴訟を理解した上で訴えを起こす判断能力が必要ですが、重度の認知症等でその能力があったとは考えられない場合は訴訟能力を欠くとして訴えを却下し、または代理権限が書面で証明されていないとして訴えを却下する場合(民事訴訟規則23条①)等があります(※)。
事例で説明しましょう。
被相続人Aが平成28年×月×日に死亡。相続人は原告(配偶者)とBCDE(娘)です。
5人の関係は融和を欠き、遺産分割協議が成立せず原告とBがCDEに家事調停を申し立てました。前後して、相続関連の訴訟数件の提起(①原告とCが親族の訴外Xに対し管理権なく相続不動産の賃料を収受したと不当利得返還請求②DEがB夫妻に相続建物居住による賃料請求③BCがEXに相続建物居住の損害賠償請求④原告とBが被告(原告の妹)に債務不存在確認請求[前訴訟]⑤原告が被告に前訴訟と同一の債務不存在確認請求[本件訴訟]⑥本件訴訟の控訴事件等)がありました。
本件訴訟で、原告は亡夫の死亡により承継する債務は存在しないと債務不存在確認を求め、さらに被告がEと共に前訴訟の取り下げを働きかけ、裁判を受ける権利を阻害され精神的苦痛を受けたと慰謝料10万円を請求しました。被告は原告代理人の代理権は証明されていないと訴え却下を請求。K地裁は、「前訴訟を提訴後、原告本人が介助者と共に地裁を訪れて前訴えを取り下げ、約1年後、同一の訴訟物で同一の代理人による再度の提訴であり代理人権限の慎重な検討を要する」と付言しました。
委任状の署名は前訴訟が自署、本件訴訟は原告から代署権限を授与されたとCが代署。証拠はBCの陳述書と病院で録音した代理人と原告の会話の音声データと反訳書でした。K地裁は「発生は呼吸音やうなり声としか聞こえないものも多く、反訳書記載の発生とは認められない。BC陳述書のみで代署権限授与は認められず、有効な委任を受けたことが証明されていない」と訴えを却下し、訴訟代理人に訴訟費用の負担を命令しました。
原告が控訴し、被控訴人は控訴却下を請求。控訴代理人は委任状の署名押印は控訴人から代署権限を授与されBが行い、控訴代理人自身が委任状作成時に控訴委任および代署権限授与に関する控訴人の意思を確認していると主張しました。
O高裁は「控訴人の意思を録音録画等の方法で証拠として保存したものはなく、他に代署の授権や控訴委任を受けたことを認めるに足りる証拠がない」、「同人は令和1年6月13日付診断書により自己の財産を管理・処分できない後見開始相当状態にあり理解・判断力は理解不能との診断で委任状作成当時(令和1年10月15日)訴訟委任をする能力があったとは考え難い」と控訴を却下し、控訴費用は訴訟代理人に負担を命じました(京都地裁 令和1年10月1日判決、大阪高裁 令和2年3月26日判決 判例時報2456号)。
※「訴え却下」は本案の審理前に訴訟要件の具備を審査し、これが欠けると本案の審理に入らず控訴手続きを終了する裁判です。
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