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「友人は住宅改良法の市営住宅で母親と同居し長年介護してきましたが、昨年母親が亡くなると市から立退きを求められました。使用権は相続できないのですか?」
住宅地区改良法(以下、法)は不良住宅が密集する地区環境改善を図り文化的な生活を営む住宅の集団的建設を促進する法律で、施行者は市町村または都道府県です。地区内の不良住宅を除却して改良住宅を建設し、事業の施行で住宅を失った者のうち、改良住宅に入居を希望しかつ住宅に困窮すると認められる者を入居させ、管理は(改良住宅を公営住宅の一種とみなして)公営住宅法が準用されます(同法27条1~4項)。ただし、特別法に基づくため準用のない事項もあり、入居者死亡による使用権の承継等の要件については、公営住宅よりも厳格です。最近の事例で説明しましょう。
K市は平成20年1月、Aに改良事業施行者として本件改良住宅を賃貸して引き渡しました。Aの子Bは、平成22年5月頃からAを介護するため本件建物に同居の承認を申請しませんでした。Aは平成25年9月に死亡。平成27年7月、BやAの相続人らがAの遺産分割を協議。Bが本件建物の使用権を取得する協議が成立したため、BはK市に対し、遺産分割協議により本件建物の使用権を母親Aから相続承継したと主張し、本件建物の使用権および賃貸額の確認を求めました。
K市は、条例に基づき死亡時同居者限定で引き続き居住の承認を受けることが承継の条件であるところ、Bはこれを経ていないとしてBの主張を拒否しました。
Bは、K市を提訴し、前記を請求。K市は反訴を提起し、Bに建物明渡しと賃料相当損害額の支払いを求めましたが、Bの請求は認容されず、最終的に受理上告(民事訴訟法318条1項)をしましたが、最高裁一小は上告を棄却し、「公営住宅の入居者が死亡した場合には相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではないと解されるところ(最高裁 平成2年10月18日第一小判決)、法の規定および趣旨に照らすと改良住宅の入居者が死亡した場合についても入居者の相続人が改良住宅の使用権を当然に承継すると余地はない」、「法18条は改良住宅に入居させるべき者について改良事業を失った者全てについて無条件に入居を認めるものではない」と判示しました(最高裁一小 平成29年12月21日判決 最高裁ホームページ)。
ご質問の事案も同居時承認を欠いた事例でしょう。相続承継は困難だと思われます。
ちなみに公営住宅の使用権の相談に関する前記平成2年判決は、指導的判例です。公営住宅は低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸し福祉の増進に寄与する制度で、住宅に困窮しない相続人に賃貸は想定外なのです。
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