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賃貸のお困りQ&A

借室の目的使用ができなかった借主の貸主・仲介事業者に対する損害賠償請求が棄却された事例

【ケース】

借主Xは、知人のAからダンススクール開業の相談を受け、X名義で建物を賃借し、スクール業務をAに委託することとしました。

Aは、物件サイトで「貸事務所 現況:防音室あり スタジオに最適!」との広告を見て、媒介事業者Y1に連絡をし、物件を内覧。芸防事務所として使用すると告げました。

Xは、貸主Y2(不動産賃貸事業者)との間で賃貸借契約を締結。この契約書の特記事項には、建物の使用目的が芸能事務所である旨が明記されていました。

また、Y1およびY2 (Y1ら)は、契約締結日に建物の自治会に入居者名簿を提出し、名簿の業種を「芸能事務所」として届けました。

その後Aは、建物の工事申請書とダンススクールスタジオへの内装工事の図面をY1に提示しましたが、Y1は、「ダンススタジオとして使用する話は聞いていない。使用するのであれば防音防振工事および自治会への変更申請が必要である」と答えました。

Aは、自治会にダンススタジオ使用の申請書を提出しましたが、自治会からAに、使用を認めない旨の通知がありました。

Xは、Y1らがダンススタジオとして自治会の承認が得られないことを知りまたは知り得るべきだったのに、虚偽の説明により、無用の賃貸借契約をさせられ損害を被ったと主張し、賃料および逸失利益等の損害賠償請求の訴訟を提起しました。

【解説】

裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を棄却しました。

  1. Xは、Y1らが、建物をダンススクールスタジオとして使用すると告げられており、自治会の承認が得られないということを知り、または知り得べきだったのに、Aに虚偽の説明をし、賃貸契約を仲介・締結したと主張し、Aもこれに沿った陳述および供述をしている。
    しかし、Aが建物をダンススクールスタジオとして使用することをY1らに事前に告げていたと認めるに足る的確な証拠はない。
  2. 建物内覧の際に、AからY1に対して建物を芸能事務所として使用する旨を告げていたこと、入居申込書、保証委託申込書等においても芸能事務所としての使用が記載されていたこと、賃貸借契約の特記事項でも建物の使用目的が芸能事務所である旨が明記されていたこと、自治会理事長宛てに提出した入居者名簿において、業種を「芸能事務所」として届け出ていること等を照らすと、Aの陳述および供述は信用することができない。

【総評】

賃貸物件の媒介・管理に際しては、借主の物件使用目的について、具体的な使用目的・方法だけでなく、将来的な変更の可能性も含め確認し、必要であれば変更手続きなどのアドバイスを行うことが望ましいでしょう。

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