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平成29年7月、個人である買主Xは、宅建事業者である売主Yより、築約28年の共同住宅(本件土地・建物)を購入しました。
本件引渡から約2年1カ月経過した令和1年8月、本件建物3階居室の天井付近に漏水が発生しました。
同月、XはYに本件建物の漏水状況報告書、漏水状況の写真および見積書を送付して、瑕疵補修検討を依頼しましたが、Yはこの件に関して回答をしませんでした。
同年10月、XはYに対し、「本件建物は本件売買契約締結時において雨漏りが発生していた。また、本件売買契約締結時に雨漏りが存在しなかったとしても、本件売買契約から約2年1カ月しか経過していないにもかかわらず、雨水の侵入を招くようなシーリングやコーキングの状態は、通常の品質を契約時において有していなかったというべきであり瑕疵にあたる」として、Xがその修補等に要した費用102万円余等の損害賠償を求める本件訴訟を提起しました。
これに対してYは、「本件売買契約締結時において本件建物に雨漏りが存在していたことの立証がされていない。また、本件漏水の原因はコーキングの劣化によるひび割れであり、築年相当の経年劣化にほかならず瑕疵には該当しない」と反論しました。
裁判所は、次のように判示して、Xの請求をすべて棄却しました。
令和1年8月、台風が接近したことに伴う降雨により、本件建物内居室の北東側に位置する台所の吊り戸棚や天井付近から本件漏水が生じたこと、本件漏水時点で本件建物3階部分の北東側の外壁シーリングないしコーキングに多数のひび割れが生じていたことが認められる。しかし、ひび割れが本件売買契約の締結された時点で生じていたことを認めるに足りる適格な証拠はない。
Xは、ひび割れが本件売買契約の締結当時に存在しなかったとしても、本件売買契約の締結から約2年1カ月しか経過していない時点で本件漏水を招くようなシーリングないしコーキングの状態は、本件売買契約の締結時点で通常の品質を有しておらず、当該時点で瑕疵があったというべきである旨主張する。
しかし、本件売買契約の締結時点で築28年弱の中古建物であったこと、本件売買契約の締結に当たっては、本件建物が中古物件であり、躯体および工作物ならびに諸設備等について築年相応の事前損耗、経年変化が認められることが前提の現況有姿売買であり、Xにおいて引渡時に正常な稼働を確認し、引渡後に事前損耗、経年変化による劣化、腐食等を原因として設備の故障等があったとしても、それらは隠れた瑕疵に該当するものではない旨合意していること、外壁用のシーリング材の耐用年数は一般に5年から10年程度であることが認められる。
このように、本件建物が中古建物であることを前提に、本件売買契約において、経年劣化は瑕疵担保責任の対象外とする合意をし、本件建物の引渡時に正常に稼働していることを確認している一方、その後に顕在化したシーリングないしコーキングのひび割れの発生は、一般的なシーリング材の耐用年数を考慮すると、経年劣化によるものと言わざるを得ないことに照らすこと、このひび割れは本件売買契約において修補の対象とされる瑕疵に当たるということはできない。
以上によれば、本件建物に本件売買契約締結当時、瑕疵があったと認めることはできず、これを前提とするXの主張は、その前提を欠き、理由がない(東京地裁 令和3年11月25日判決)。
本件は、買主がコーキング不良により雨漏りが発生したと主張したが、裁判所は経年劣化によるもので瑕疵にあたらないとして棄却した事案です。
瑕疵(契約不適合)は、引き渡された目的物が、種類・品質等に関して、契約の内容に適合していないことをいうものであり、中古住宅の売買における契約の内容は、取引後、経年劣化により不具合等が発生する可能性のある築後相当年数を経過した建物の売買であることから、取引後の経年劣化による不具合発生は契約内容に適合するものであって、瑕疵(契約不適合)には該当しません。
しかし、中古住宅の引渡し後に生じた経年劣化による不具合等について、買主が瑕疵(契約不適合)により担保請求ができると勘違いをするケースがよくみられます。トラブル防止の観点から、宅建事業者においては、引渡し後、経年劣化により雨漏り等の不具合が発生する可能性があること、その補修等のメンテナンスは買主が行う必要がある(費用が発生する)ことを、売買に際して買主によく説明し、理解を得ることが重要です。
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