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賃貸のお困りQ&A

賃料・敷金の差押命令が届いたら

今回のご相談

賃貸物件に関わる「差押え」について、以下の事象が発生した場合の当事者の対応はどのようにすればよいのでしょうか。

  • (1)賃料債権を対象とした債権差押命令が届いた場合
  • (2)敷金返還請求権を対象とした債権差押命令が届いた場合

回答

(1)賃料債権を対象とした債権差押命令が届いた場合
賃料差押命令は、第三債権者である賃借人に最も大きな影響を及ぼします。債権者から賃料取立ての連絡がきたら、「賃貸人に賃料を支払ってはいけないこと」および「通常は賃貸人に差押命令が送達されてから1週間経過後以降に債権者から賃料取立ての連絡があるので、この要請に応じて債権者に賃料を支払えばよいこと」を賃借人に伝えてください。
(2)敷金返還請求権を対象とした債権差押命令が届いた場合
敷金返還請求権の差押命令は第三債務者である賃貸人に最も大きな影響を及ぼします。「敷金の返還義務は建物明渡後に発生するので、建物明渡が完了するまでは債権者へ敷金を支払う必要はないこと」および「債権者に支払う金額は、預託を受けている敷金額から、建物明渡時点までに発生した賃借人が負担する債務(未払賃料、原状回復費用、賃料相当損害金など)を全て控除した残額であること」を賃貸人に伝えてください。

解説

1. はじめに

債権差押命令とは、債務者が債権者に金銭を支払わないケースにおいて、「債務者」が「第三債務者」に対して有している債権を差押対象として「債権者」が強制執行の申立てを行った場合に裁判所が発令する命令のことです。

債権差押命令が発令されると、「債務者」は「第三債務者」から差押えの対象となっている債権の取り立てができなくなり、「第三債務者」は「債務者」に対して差押えの対象となっている債権の支払いを行うことができなくなります(民事執行法145条1項)。

債権差押命令が発令されると、「第三債務者」が最も大きな影響を受けることになりますので、管理会社としては、まず債権差押命令において誰が「第三債務者」となっているのかを正確に把握する必要があります。

この点、資料債権を対象とした債権差押命令が届いたケースでは、『賃借人』が「第三債務者」となり、敷金返還請求権を対象とした債権差押命令が届いたケースでは、『賃貸人』が「第三債務者」となります。

なお、第三債務者は、債権者と債務者との間のお金の支払をめぐる紛争には直接関係があるわけではありませんので、差押命令の効力に違反する行為をしない限り、差押命令が言い渡されたことによる不利益を受けることはありません。そのため、管理会社は、第三債務者に対して、まず特に心配する必要はないことを伝えた上で、差押命令によって何が禁止され、またどのような対応をとることが必要なのかを正確に伝えていくことが必要になります。

2. 賃料債権を対象した債権差押命令が届いたケース

(1)1通の差押命令が届いた場合
第三債務者である賃借人は、差押命令を受領した後は債務者である賃貸人に賃料を支払うことができません。では、賃借人はいつ誰にどのようにして賃料を支払えばよいのでしょうか。
この点、債権者は債務者に差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、第三債務者から賃料を直接取り立てることができるとされています(民事執行法155条1項)。
従って、通常は、賃貸人に差押命令が送達された日から1週間を経過した時点で、債権者から賃借人に対して賃料の取立ての件の連絡が行われますので、賃借人は当該要請に応じて債権者に賃料を支払えば足ります。
もっとも、債権者によっては、取立て可能な状況になったにもかかわらず、賃借人に対して適切な時期に債権の取立てを行わないケースも考えられます。債権者から連絡がないことを理由に賃料の支払いを怠っていると、賃借人は遅延損害金の支払義務を負うという不利益を被ってしまいます。賃借人は法務局に賃料を供託することで不利益を免れることができますので(権利供託。民事執行法156条1項)、債権者からの連絡がないケースでは、賃借人は賃料を供託することを検討することになります。
なお、差し押さえされた金額を債権者に支払った後に残額がある場合、当該賃料の残額は賃貸人に支払わなければなりませんので、この点には注意してください。
(2)複数の差押命令が届いた場合
では、複数の債権者から同一の賃料債権を対象とした差押命令が届いた場合、賃借人はどのように対応すればよいのでしょうか。
この場合、複数の差押命令の合計金額が賃料債権の金額を超えているケースでは、賃借人は差し押さえられた賃料債権の全額を法務局に供託しなければなりません(義務供託。民事執行法156条2項)。供託された金銭は、後日裁判所が複数の債権者の請求金額に応じて平等に分配することが予定されています。
他方、複数の差押命令の合計金額が賃料債権の金額を超えていない場合は、各債権者はそれぞれ全額の取立てを行うことができますので、賃借人が供託義務を負うことはありません。この場合、賃借人は債権者に任意に支払うか、権利供託をすることになります。

3. 敷金返還請求権を対象した債権差押命令が届いたケース

第三債務者である賃貸人は、差押命令を受領した後は債務者である賃借人に対して敷金を返還することができません。この点の取り扱いは、賃料債権を対象とした賃料差押命令が届いたケースと同様です。

もっとも、敷金は、賃借人が賃貸人に対して負担する賃貸借契約上の債務を担保する目的で交付されている金銭(民法622条の2)という性質があることから、「債権者」に対する支払時期や支払金額について賃料債権とは異なる取り扱いとなりますので、この点に特に注意しなければなりません。

具体的には、敷金返還請求権は賃借人が建物を明け渡した後に発生するものであることから、差押命令を受領したとしても、賃貸人は賃借人が建物を明け渡すまでは債権者に敷金を支払う必要はありません。もし、債権者が建物明渡前に敷金の支払いを求めてきた場合は、賃貸人は当然に支払いを拒絶することができるのです。

また、賃貸人が返還義務を負う敷金の金額は、預託を受けている敷金額から明渡完了時までに発生した賃借人の債務を控除した残額となりますので、未払賃料、原状回復費用、賃料相当損害金などが存在する場合は、賃貸人は当該金額を預託を受けている敷金額から全て差し引くことができます。

差し引いた後の敷金に残額がある場合、賃貸人は債権者にその残額を支払うことになります。他方、差し引いた結果、返還すべき敷金が存在しなくなってしまった場合は、賃貸人は債権者に敷金を支払う必要がなくなりますので、債権者にその旨を通知するようにしてください。

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